「同じ所で複数回出ると、ほぼ災害が起きる」と、専門家が警戒している防災気象情報がある。1時間に100mm前後の雨量があった場合に出される「記録的短時間大雨情報」だ。9月の台風15号の接近で、静岡市に8回出された。指摘の通り大きな被害が出た静岡の豪雨から、教訓を考える。

“ここまで記録的な雨になるとは…” 浸水4000棟超「警戒難しい降り方」

9月、静岡市上空。街を見下ろすと、あたり一面の道路が冠水していた。車は徐行運転を続けている。

静岡市の山間部で発生した土砂崩れ
静岡市の山間部で発生した土砂崩れ
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台風15号は、県内に記録的な雨をもたらした。道路の冠水や住宅の浸水が相次ぎ、建物の被害は確認されただけで4000棟を超えている(9月27日時点)。

日本の近くで発生した台風15号に暴風域はなく、大きくも強くもない台風だった。予想されていた24時間雨量は、県内の多いところで200mmだ。

静岡大学防災総合センター・牛山素行 教授
「こういう降り方になる、ある程度まとまった雨になる」という予報は出ていた。ただ、ここまで記録的な大変なことになるという予想は出ていない。私自身も23日深夜まで、そこまでの緊張感は持っていなかった。事前の警戒が難しい降り方だったと思います

半日で平年9月分の1.5倍の雨

9月23日午前6時からの24時間に、静岡で観測された雨量は416.5mm。平年の9月の1カ月分は280.6mmで、その1.5倍近い雨が降ったことになる。
しかし24時間雨量とはいえ、実際には午前から夕方までの日中はほとんど雨は降っていない。午前7時からの12時間に降った雨は、わずか12.5mm。一方で、その後の夜から未明までの12時間には404mmの雨が降った。

静岡市の9月23~24日の雨量
静岡市の9月23~24日の雨量

つまり、半日で、平年1カ月分の約1.5倍の雨が一気に降った形だ。

JR静岡駅前で中継する小松アナ
JR静岡駅前で中継する小松アナ

23日午後7時すぎ、取材班が訪れていたJR静岡駅前では、雨が強くなり始め、大きな雨粒が叩きつけるように降っていた。この午前7時、静岡市南部に「大雨警報」が発表された。雨は激しさを増し、土砂災害警戒情報や洪水警報が発表されていった。

記録的短時間大雨情報 静岡市「だけ」で8回…“同じ所に複数回、は危険”

そして午後10時29分に発表されたのが 「記録的短時間大雨情報」。「静岡市南部山間部」「静岡市平野部」で「約110mmの猛烈な雨が降ったと解析される」という情報だった。その後も静岡市には、次々と記録的短時間大雨情報が出された。

9月23~24日に出た、防災気象情報
9月23~24日に出た、防災気象情報

静岡大学防災総合センター・牛山素行 教授
「まずいな」と思ったのは、記録的短時間大雨情報。同じ所に1回ではなく、複数回出始めた時。22時台・23時台頃、「おそらく、これは残念ながら何事も起きないことはないだろう」と感じました

記録的短時間大雨情報は、1983年に運用が始まった。1時間100mm前後の雨が観測・解析された時に発表される情報だ。

福岡・朝倉市の豪雨(2017年)
福岡・朝倉市の豪雨(2017年)

2017年、福岡県に甚大な被害が出た九州北部豪雨。この時にも記録的短時間大雨情報が繰り返し出された。福岡県朝倉市の12時間の雨量は、約512mm。
牛山教授は「急激に雨が強まったのが、今回とよく似ている」と話す。

静岡大学防災総合センター・牛山素行 教授
九州北部豪雨では朝倉市で…、福岡県全部ではなく朝倉市だけで、7回出た。記録的短時間大雨情報は、私の研究室の調査によると、「複数回 同じ所で出るとほぼ確実に何かの災害が起きる」という非常に確度の高い実況。予測ではない。災害と関連性の深い情報。同じところで複数回 出るとまずい

道路が冠水した静岡市(9月23日)
道路が冠水した静岡市(9月23日)

記録的短時間大雨情報は、静岡市南部山間部で4回、静岡市平野部でも4回出された。つまり、同じ所で猛烈な雨が降り続いたことを意味している。

「今回の雨は特別ではない」日頃から気の引き締めを

静岡市中心部を流れる安倍川も増水
静岡市中心部を流れる安倍川も増水

この台風の影響で、24日、静岡市中心部を流れる安倍川では、水面と橋のすき間がなくなるほどまで水位が上昇。静岡県西部と中部の少なくとも8カ所の川で、氾濫が警戒される水位に達した。

JR静岡駅(9月24日)
JR静岡駅(9月24日)

列車が運行できなくなり、多くの駅に帰宅困難者があふれた。土砂崩れも発生するなど、県内は大きな被害を受けた。
しかし牛山教授は、短時間の雨量は多かったものの、「これまでにも同じような事態はあり、特別な雨ではない」と話す。

土砂崩れで送電鉄塔が倒壊(静岡市)
土砂崩れで送電鉄塔が倒壊(静岡市)

静岡大学防災総合センター・牛山素行 教授
今回の降り方が静岡市付近において、こんなの降ったことがないという程の大変な降り方かというと、そうではない。もっと大変なことは、気候が変動しているから起こるのではなくて、今までも十分あり得たこと。気を引き締めなければいけないということです

激しい雨で、大きな被害と混乱をもたらした台風15号。同じような降り方や、もっと多く降るケースが、今後ありうることを認識しておくことが必要だ。

(テレビ静岡)