ラーメンでも、うどんでも、そばでもない麺が福岡に誕生した。「日本の伝統食“練り物”を残したい」との思いから老舗の練り物店が開発した新たな麺とは。
日本文化“練り物”を残したい!
福岡市にある創業120年の練り物店「博水」。
この記事の画像(12枚)店先には、おいしそうな練り物がずらりと並んでいる。店を切り盛りしているのは、5代目となる江越雄大さん(35)だ。「エソという魚を使っているんですけど、福岡の長浜市場から仕入れて、自社で加工して製造しています」と話す。
30種類にも及ぶ練り物を扱うこの店で一番人気は「ギョロッケ」。外はサクサク、中はプリプリの食感で地元の人に愛されている。
もともと印刷関係の会社員として働いていた江越さん。数年前から休みを利用して実家の店を手伝っていたが、そこで店がおかれている状況を知ったという。
「練り物って、日本の伝統食の1つだと思うんですけど、年々需要も減っているんですが、『残していかないといけないな』って」と3年前に5代目を受け継ぐ決意をしたという。
練り物離れが進む若者に魅力伝えたい
実際、練り物を取り巻く環境は年々厳しくなっている。
50年ほど前は100万トン以上生産されていたが、2023年は、その半分の約50万トン。
食文化の変化とともに練り物離れが進行し、「博水」もピーク時と比べると3割以上、売り上げが落ちているという。博水に練り物を買いに来る客も40~50代の方がメインで、客足も少ない。
若者の練り物離れが進む中、多くの人に愛されてきた日本の味を自分の代で絶やすことはできないと一念発起。若い世代にも練り物の魅力を伝える必要があるとの強い思いで斬新な練り物を開発した。それが、BOKOMEN(ボコメン)なのだ。
ボコメンいったいどんな練り物なのか?
「こちら豚骨です」と5代目が出してくれた一杯の丼。
一見、豚骨ラーメンのようだが、5代目の仕掛けが隠されている。実は、麺には魚のすり身が使われているのだ。
細麺が多い博多のラーメンと比べると少し太めの麺。「これまでのどの麺とも違う新食感です。プルンとしていてフワフワ。すり身を使っているから魚の旨味が出ていて、この麺と一緒に食べると“魚介豚骨”みたいに感じます」と試食した赤木希アナウンサーも舌鼓を打つ。
のどごしがよく、柔らかいのが特徴のボコメン。小麦も卵白も使っておらずタンパク質も豊富だ。5代目はこの麺を約1年かけて開発した。
ボコメンの名前の由来を尋ねると「ボコはカマボコのボコ。ボコがカマボコと分かったときに『なるほど』ってなるので印象に残るかなって」と笑う5代目。
福岡を代表する食文化を参考に
ボコメンが完成するまでは、つみれを作ってみたり、ご飯をすり身で包んだ「ギョムスビ」というものを作ってみたり、試行錯誤したというが、いずれも商品化までには至らなかった。
「『福岡っぽいか』というと『弱いな』って思っていたんですよね。女性にも子どもにも手に取りやすい、目につきやすい商品が欲しいなと思っていた」と苦悩した結果、「麺なら福岡だろ!って」と行きついたのが、福岡を代表する食文化だったという。
豚骨ラーメンを筆頭に、うどんや焼きラーメン、焼きうどんなど麺文化が根付いている福岡。そこにヒントを得て麺を練り物で開発。
これまでの試作品とは違いボコメンに手応えを感じた5代目は、試食会を開催し、反応を確かめた、結果、「小麦とは違うね」や「練り物だけど魚臭さがないね」など好評だった。
現在は、マーケティングのため、そして麺を改良する開発資金を確保するためにクラウドファンディングのみで予約販売中だが、2024年中に店舗販売とホームページからのネット販売ができるように動いているという。
「練り物は、あまり食卓のメインにならない商品なので、なんとかメインになれるように、まだまだチャレンジしていきたいなと思っています」と伝統を受け継ぐ若き5代目は前を向いた。
(テレビ西日本)