イギリスの総選挙で労働党が410議席を獲得し、14年ぶりの政権交代が実現した。スナク前首相は経済混乱や国民生活の立て直しに失敗し、物価上昇や家賃高騰、医療体制の混乱が市民生活を直撃。歴史的惨敗に繋がった。
「有能だが退屈」スターマー新首相の今後に注目集まる
イギリスの総選挙で、最大野党だった労働党が単独過半数を大きく上回り、 政権交代が実現した。

14年ぶりの政権交代が決まったイギリス・ロンドンでは、まだ一部の地域で開票は続いているが、下院議席の全650議席のうち、労働党が410議席を獲得し圧勝を確実とした。一方、与党・保守党にとっては歴史的大敗となった。
この結果を受けて、スナク首相はまもなくチャールズ国王に会いに行き辞任を申し出て、その後に新たに首相となる労働党党首のキア・スターマー氏が、国王からの首相任命を受けることになる(その後、現地時間5日、スターマー氏はバッキンガム宮殿でチャールズ国王と面会し、イギリスの新首相に就任)。

新しい首相となるスターマー氏は、「有能だが退屈」と、イギリスでは評価されている。
スターマー氏は、人権派弁護士として名を馳せ、2015年に政界入り。わずか4年で党首になると、左寄りだった党を中道に戻し、選挙に勝てる政党に改革した。一方で、カリスマ性がないとの指摘もあり、今回の選挙結果は労働党へのかなりの期待を示すものとなったが、果たしてスターマー新首相が、その期待に応えることができるのかが注目される。
ロンドン市でホームレス“14.5%増加”
ここからは、フジテレビ・立石修解説委員室長が解説する。
青井 キャスター:
ビジネスマン出身で経済に明るかったスナク首相ですが、それでも経済混乱や国民生活の立て直しができなかったということが、歴史的惨敗に繋がったということでしょうか。
フジテレビ・立石修 取材センター室長:
イギリスというと、暮らしも優雅というイメージを持ちますが、市民生活は大変でした。具体的には「高すぎる物価」「払えない家賃」「混乱する医療体制」の3つです。

遠藤 玲子 キャスター:
まずは「高すぎる物価」についてです。例えば、卵は12個入りで約670円、きゅうり1本約170円など日本とは比較にならないほど高くなっています。
立石 取材センター室長:
食品全体としては、2022年と比べて25%も上昇し、特に低中所得の人々の暮らしを直撃してきています。

遠藤 キャスター:
次が「払えない家賃」についてです。ロンドン市内の家賃の上昇率を表したグラフを見ると、3年前から急激に上昇し、今年1月は前の年に比べて6.9%も高くなっています。
青井 キャスター:
食品も上がり、家賃まで高騰となれば家を借りることすら、出来ない人も出てくるのでは?

立石 取材センター室長:
2023年9月までの1年で、ロンドン市のホームレスは14.5%増加しました。ロンドン郊外のクロイドンという町では、住む場所を失った人たちが廃校を不法占拠し、自分たちでリフォームして暮らしています。
彼らは「路上の生活では死んでしまう」と、使われていない建物などをホームレスや低所得者を助けるために活用すべきだと、政府に求めています。
治療に100日以上待たされる事例も
遠藤 キャスター:
そして3つ目が「混乱する医療体制」についてです。イギリスではNHS(国民医療サービス)があり、イギリスに暮らす人は基本的に誰でも無料で診療を受けられます。

立石 取材センター室長:
しかし、医療費の高騰や戦争やコロナなどによる財源への影響もあり、問題が目立つようになってきました。
遠藤 キャスター:
トロンボーン奏者でがん患者のナサニエルさんは、NHSに最初に体調不良を相談してから化学治療を受けるまで、100日以上待たされた、そして、待たされている間に症状が悪化したと訴えています。
立石 取材センター室長:
こういう市民の声が、スナク首相の大敗に繋がったと言えます。

青井 キャスター:
次の政権で解決できるのでしょうか?
スペシャルキャスター 柳澤秀夫さん:
問題が根が深いだけに、特効薬はないと思います。でも、イギリス国民はとにかく変化を求めていたというのが、今回の結果だと思います。でも変化を期待するだけでは、問題の解決に繋がりません。
立石 取材センター室長:
残されたままの課題に対し、どのように対応するかが、スターマー新首相にとって大きな課題となります。
(「イット!」 7月5日放送より)※一部情報を更新しています