ほっとしたい時や集中したい時、あるいは食事の後の飲み物に「コーヒー」を選ぶ人は少なくない。
ただ、飲んだ後、口に残るにおいが気になったことはないだろうか。自分が話したタイミングで周囲が顔をしかめたりすると「もしかして、臭い?」と心配になってしまうものだ。
コーヒーそのものは良い香りなのに、口に入った後はなぜ不快なにおいとなって出てきてしまうのか。口臭治療を専門とする、中城歯科医院の中城基雄院長に聞くと「3つの要因が関わってくる」という。
口内の細菌が「アミノ酸」を食べる
中城院長は「口臭は口内の細菌が原因で起きることが多いです」と指摘する。私たちの口にはもともと、においの原因となる細菌がいる。この細菌は舌や歯間に残った食べカスなどを“餌”として、活動や増殖をしているという。
そこに関わってくるのが、コーヒーに入っている「含硫アミノ酸」という成分。含硫アミノ酸はタンパク質を構成するアミノ酸の一種で、独特のにおいを持つ「硫黄」が含まれる。口内細菌はこの含硫アミノ酸が入ってくると「アミノ酸」部分を食べてしまうのだ。すると化学反応が起き、口内で次のガスが発生するという。
・硫化水素(硫黄のようなにおい)
・メチルメルカプタン(魚の臓物のようなにおい)
・ジメチルサルファイド(ドブのようなにおい)
まさかの、きついにおいのオンパレード。これらが混ざるので、コーヒーとは違った“嫌なにおい”が出てしまうのだ。
「含硫アミノ酸は肉類や魚介類、ナッツ類などにも入っています。 いわば“おいしい成分”なので口内に残ると、細菌が引っこ抜いて食べてしまうんですね」(以下、中城院長)
カフェインで口が乾きやすくなる
つまり、肉や魚、ナッツ類などを食べたときも同様のガスは発生しているわけだが、なぜコーヒーの時だけ口臭が気になるのか。「カフェイン」も良くないと中城院長は指摘する。
カフェインには利尿作用があるのでトイレに行きたくなる。これが続くと体内の水分がどんどん失われ、体は「唾液の分泌量を減らして」バランスを取ろうとするという。
唾液には殺菌作用があって「口内を洗い流し、細菌の増殖を抑える」働きもしている。分泌量が減るとにおいも目立ってしまうのだ。
「唾液には『ムチン』という、口腔内の粘膜を守るバリア成分も含まれています。このムチンがコーヒーの渋み(タンニン)ではがれることでも、口が乾きやすくなります」
酸っぱい“吞酸”が上がってくる
さらに「クロロゲン酸」も影響してくる。クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、コーヒーの苦味のもとになるほか、胃腸の消化活動を助けたりもしてくれる。
ただし、胃液の分泌を促すため、空腹時にコーヒーを飲むと胃腸を傷めてしまうことも。すると喉や口内に酸っぱい吞酸(どんさん)が上がってくることもあるという。
コーヒーはこうした要因が重なりやすいので、口臭が出やすくなってしまうのだ。口が酸っぱく感じたり、舌が“コーヒー色”になっていたりしたら要注意。口がにおっている可能性がある。
においが心配ならブラックがお勧め
ここまで読むと「飲むのをやめるべき?」と悩むかもしれないが、待ってほしい。いくつかのポイントを意識すれば“においリスク”は下げられるのだ。
まずは、砂糖やクリームなど減らすこと。これらは舌の表面に残りやすく、含硫アミノ酸も入っているので、嫌なにおいが増幅されやすいという。
「できるならブラックがお勧めです。甘味がほしいなら、蜂蜜などの果糖やブドウ糖が望ましいです。ショ糖は『不溶性グルカン』というネバネバした物質を作り、口内環境を悪化させますのでお勧めできません。こちらは精製された白い砂糖などが該当します」
カフェインの過剰摂取にならない、胃腸を傷めそうな飲み方をしないことも大切だ。家事や仕事で忙しいと「お昼は砂糖やクリームたっぷりのコーヒーで済ませよう!」と思うこともあるかもしれないが、口臭と胃腸どちらにもよくないので注意してほしい。
カフェインの摂取許容量は、日本は明確な基準を出していないが、アメリカやヨーロッパでは成人で1日400mgまでを目安としている。厚生労働省によると、コーヒーの浸出液には100mLあたり60mgのカフェインが含まれているので、コーヒーカップ1杯を140mLとしても約5杯で上限を超える。飲みすぎは避けたほうが良いだろう。
次回はそんな“コーヒー口臭”を防ぐためにできる、舌の位置や体操のポイントをお伝えする。
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中城基雄
歯学博士。1984年に東京歯科大学を卒業し、88年に日本大学大学院歯科放射線科で学位を取得。同年、中城歯科医院の院長に就任する。口臭治療専門の歯科医として、5000人以上の口臭を診察。東洋医学への知識も深く、2003年には鍼灸師の国家資格も取得。著書に『病気の9割を寄せつけない たった一つの習慣』(サンマーク出版)、『スマホがあなたをブスにする』(大和出版)がある。