■ヤマト運輸などで「置き配」での受け取りが可能に

宅配大手「ヤマト運輸」の宅急便などで、10日から「置き配」での受け取りが可能になる。
その背景には一体何が?配送ドライバーへの密着取材で、課題が見えてきた。

https://youtu.be/1JTtdw2LhTk

6月10日から、ヤマト運輸が、本格的に解禁した「置き配」。
さっそくスタッフが頼んでみると…

記者リポート:事前に置き配の指定をしていたのですが…あ、ありました!家の前に荷物が届いています。

無料会員サービスに登録し、事前に指定すれば、家にいない時間でも、玄関前などに荷物を置いてもらうことができる。

ヤマト運輸では、これまでにも一部商品では「置き配」が可能だったが、今回、「宅急便」や「宅急便コンパクト」などの主力商品で、「置き配」を選ぶことができるようになった。

配送の大手企業が「置き配」を導入する理由とは?

■配送ドライバーの一日に密着

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背景にある課題を探るべく、京都市内の、配送ドライバーの1日に密着した。

配送ドライバー四方冬千さん:朝の荷物がこんな感じです。だいたい150から160くらいある。朝の時間指定が結構ある。日曜日ということで、配送も急がなあかん。頑張って配りたいなと思います。

ドライバーの四方冬千さんは、3年ほど前、この仕事を始めた。

配送ドライバー四方冬千さん:委託のドライバー個人事業主の形になっている。

配送の時間指定を行う人も多く、四方さんは、時間通りに荷物を届けるため、街中を走り回る。

受け取り時間を指定した人:お茶会に行って帰ってきたところなんです。確実にいる時間だからという理由で(時間指定を)お願いしています。

(Q.体力いりますね)
配送ドライバー四方冬千さん:そうですね。特にこれからの季節暑くなってくるので。

■荷物の受け取り主の不在が続く…

しかし、配送を続けていると、ある問題が・・。

配送ドライバー四方冬千さん:いなかったですね。このお客さん、午前指定かけている。でもいなかった。寝ているということもあるかもしれません。

その後も、荷物の受け取り主が不在というケースが、相次いだ。

配送ドライバー四方冬千さん:まぁまぁしょうがないですね。この方やと、一昨日からずっと不在。一昨日、昨日、今日で。3日連続で不在になりますね。

■一年間の再配達数は、5億個にも

実は、厚生労働省によると、1年間で再配達される宅配便の数は、実におよそ5億個。
荷物全体の1割ほどが、受け取り主の不在などにより、再配達されている。

ドライバーの時間外労働が制限される、いわゆる「2024年問題」の中で、この5億個の荷物が大きな障壁となっている。

■問題解決のために「置き配」に注目

四方さんに業務を委託する企業は・・。

万事屋うっちゃん・内田巧代表:不在があれば、再度、行かなければならない。労働時間が伸びてしまう。本来なら運びきれる荷物が、運びきれなくなる。そうなると、消費者に荷物が届かない。

こうした問題の解決のために、いま「置き配」に注目が集まっているのだ。

万事屋うっちゃん・内田巧代表:時間を選ばない、場所も選ばない、再配達する手間もかからない。各社様が、置き配サービスを普及されることには、とても期待感があります。

■1日の不在荷物、40個

また、四方さんのようなドライバーには、受け取り主の「不在」問題の影響が、さらに大きくなっている。

8時間ほどかけて、全ての荷物を運び終えた四方さん。
しかし、午後6時ごろ、車の中を見てみると、再びたくさんの荷物が。

配送ドライバー四方冬千さん:きょう出た不在預かった分があるので。あわせて40くらいは。

■個人事業主のドライバーは残業規制の対象外

実は、個人事業主のドライバーは、2024年問題の残業規制の対象外。
そのため、社員のドライバーが、受け取り主の不在によって、日中に運びきれなかった荷物を、四方さんたちがまとめて受け取り、夜遅くまで、配送を続けるという。

配送ドライバー四方冬千さん:夜もう1回ふんばって頑張る。時間に追われている感じは、去年よりは増しているかなと思います。

■社員ドライバーの残業規制が厳しくなり、個人事業主ドライバーへの負担が増える…

2024年問題をきっかけに、こうしたドライバーへの負担は、さらに増えているという。

万事屋うっちゃん・内田巧代表:夜間にどかんとくるとんでもない(量の)荷物が。僕らが(事業を)始めたころは約20個、いまは多いときで80個。約4倍。委託のドライバーで配達するために、社員さんのドライバーは時間が足りないので、あがってもらって、その分委託のドライバーで配達すると。規制の時間内どころではない、ドライバーもたくさんいる。その方たちが(配送を)支えていると言ってもいいんではないですかね。

■「置き配の広がり」に期待

結局、四方さんたちが荷物を配り終えたのは、午後9時ごろ。
さらにこのあと、事務作業などをこなす。

そんな四方さんも、置き配の広がりに、こう期待を寄せた。

配送ドライバー四方冬千さん:(置き配が広まると)トータルの時間でいうと、結構変わってくる。置き配っていう制度は、そこにおいては、配達員としては助かるかな。こういう形で配っている人もいるんだなと知ってもらうことで、状況が変わってくれるのであれば嬉しいかなと思います。

■一方、専門家からは課題の指摘も…

一方で、専門家は、「置き配」が広まるためには課題もあると指摘する。

東京経済大学経営学部・宮武宏輔准教授:置き配が当たり前になると、置き配を狙う(盗む)っていうのは、アメリカでも問題になっている。また、日本の場合は再配達が無料での標準的なサービスになっちゃってるので、どこもやめる選択肢を取りづらい。受け取り側が(置き配を)選択してくれないと、かなり限定的にはなってしまう。

「置き配」という、新たな荷物の受け取り方の選択肢。
配送業界の未来を守るためにも、一人ひとりがドライバーの負担にならない選択肢を選ぶことが求められる。

関西テレビ
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