九州ではミズイカとも呼ばれるアオリイカ。肉厚で濃厚な甘みがあり、イカの中でも高級品として扱われている。大物が釣れると愛好家の人気が高いのが、鹿児島・種子島。「エギング」と呼ばれる専用のルアーを使った釣り大会が4年ぶりに開催された。
イカの釣りの魅力は「駆け引き」
九州本土最南端の佐多岬から約40km南に位置する種子島。鉄砲伝来の地として知られ、ロケット打ち上げ基地、種子島宇宙センターがある。
午後8時過ぎ、種子島・西之表市の漁港を訪れると、岸壁で釣りにいそしむ窪田大樹さんの姿があった。

窪田さんが狙っていた獲物はイカだ。イカ釣り歴8年の窪田さんは、これまで最高で5.4kgのイカを釣り上げたこともあるという。窪田さんの傍らにいた友人が、アオリイカの釣りの魅力は「駆け引き」だと教えてくれた。アオリイカが餌を引っ張り、それを釣り上げるまでが面白いそうだ。

窪田さんが使う「エギ」という疑似餌を見せてもらった。道具箱にはサイズや色の異なるエギがずらりと並んでいて、水の色やイカの活性に合わせて、エギを使い分けるのだという。
いま全国的に流行しているのが、このエギを使った「エギング」という釣りの手法。釣り竿(ざお)を上下に動かすことで、水中に沈んだエギを本物の餌のように動かし、イカを捕らえる。

釣りを始めて約1時間。窪田さんの竿にあたりがあったようだ。
「やっぱりエギの色を代えた途端に釣れた」と、竿を引き上げる窪田さんの声が弾んでいた。
81人で競う「エギング」釣り大会
この種子島で、2024年5月25日から26日にかけて、島全体を舞台にしたイカ釣り大会が開かれた。

新型コロナの影響で4年ぶりとなる今回は、島内外から81人が参加した。釣り方はエギングのみで、餌釣りや渡し船、船釣りはNG。1杯500グラム以上のアオリイカ計3杯の総重量で、勝負を競う。鹿児島県本土はもとより、大阪からの参加者も。もちろん、窪田さんの姿もあった。
釣りの勝敗は、午後1時から翌日の正午までの23時間で競う。窪田さんがポイントに選んだのは、種子島の北部だ。

釣り仲間にあいさつを済ませた窪田さんが竿を投げ入れると、なんと最初の1投目でいきなりヒット!だが釣れたのは約200グラムのイカだったため、窪田さんはすぐリリースした。
その後、日が出ている間は誰の竿にもあたりはなく、日が暮れてからの勝負となった。
最高記録3.44kg!夜通し勝負
参加者は皆、本腰を入れて、釣り竿の上下動を繰り返していた。
そして、大会開始から約7時間が経過した午後8時ごろ。ようやく窪田さんにあたりがきた。

釣れたのは、1.2kgほどのアオリイカで、1杯目が釣れて安心した様子の窪田さんは「大きいのが欲しい」とさらなる大物を求めて釣竿を投げ入れた。
午後11時ごろ。同じポイントで釣っていた仲間にもあたりがきて、続々とヒットするようになった。島外から来たという男性が釣り上げたアオリイカは2kg近くあった。

イカとの駆け引きは夜通し続けられ、窪田さんはポイントを変えながらほとんど眠ることなく釣りを続けたが、新たなヒットは来なかった。
そしていよいよ検量。参加者の4分の1にあたる21人が持ち込んだ。

今大会の最高記録は3.44kgのアオリイカ。優勝したのは、3杯で5.2kgを釣り上げた地元の男性だった。

窪田さんは「思ったより厳しかったけど、何より楽しかった」と晴れ晴れとした表情で語り、「来年は優勝を狙いたい」と気持ちはすでに次回へと向かっていた。
来年もまた種子島では、大物のイカを追い求め、「我こそは」と腕自慢の多くの釣り人が結集することだろう。
(鹿児島テレビ)