32年前、福岡・飯塚市で小学生の女の子2人が殺害されたいわゆる「飯塚事件」をめぐり、死刑が執行された元死刑囚の2度目の再審請求について、福岡地裁は請求を棄却した。

逮捕の柱は「DNA鑑定」「目撃証言」

2024年6月5日、飯塚事件の第2次再審、裁判のやり直し請求への福岡地裁の判断を前に、裁判所前には支援者などが集まり、決定を待っていた。

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事件が起きたのは1992年2月。飯塚市に住む当時、小学1年生の女の子2人が登校中に行方不明になり、現場から約20km離れた山中で遺体となって発見された。

事件から2年後の1994年、福岡県警は当初から捜査線上に浮かんでいた久間三千年(みちとし)元死刑囚(事件当時54)の逮捕に踏み切る。

逮捕の柱となったのは、DNA鑑定の結果と、犯人が使用していた車や少女たちの目撃証言などだった。

久間元死刑囚は、逮捕される前のインタビューで、「私は見ず知らずの人間」「私は2人と会ったこともない」と話していた。逮捕されて以降も、一貫して無罪を主張。しかし、1審、2審ともに死刑判決を言い渡され、2006年、最高裁で死刑が確定。わずか2年後の2008年に執行された。

久間元死刑囚の妻は、2度目となる再審「裁判のやり直し」を求め、審理が続けられていたのだ。

目撃女性「調書は誘導された」と主張も

これまでの審理で弁護側は、女の子2人を最後に目撃したとされる女性が「見たのは別の日だった」「調書は誘導された」などと証言をひるがえしたことや、新たな目撃証言を提出していた。

しかし、この日の裁判所前で掲げられたのは「不当決定」の旗。請求は棄却されたのだ。

決定文によると、福岡地裁の鈴嶋晋一裁判長は「Oさん(=証言者)の供述は変遷しており、一貫した記憶に基づいて証言しているとは考えられない」と指摘。

「調書は誘導された」という主張に対しては「調書が作成されたのは捜査初期の捜査が流動的な状況下で、捜査機関が無理に記憶に反する動機、必要性が見い出せない」などとし、証拠とは認められないとした。

「きょうの決定というのは、我々にとって最悪のパターン」と、記者会見に臨んだ弁護団の表情には、やるせなさと憤りが漂っていた。

「この証言の価値を認めて再審開始することが、我が国における死刑制度の根幹を揺るがしかねないという、そういう思惑に縛られて2人の人間としての良心に基づく貴重な証言の価値を認めようとしなかった」と述べた。

なぜ?福岡地裁は再審請求を“棄却”

2度目の再審請求でも「裁判のやり直しを認めない」という結論になったが、そのポイントは2つ。

まず、女の子2人を最後に見たとされる女性が証言をひるがえした点。今回「見たのは別の日だった」「警察に調書を誘導された」と新たに証言したが、福岡地裁は「女性の記憶は一貫性のない不確かなものである可能性が高く、信用できない」などと指摘し、証拠として認めなかった。

そして、弁護団が新証拠と主張していた別の目撃証言。「元死刑囚とは年齢や体格の異なる男性が、女の子2人を乗せた車を運転していた」と今回、証言していたが、裁判所は「不自然な感が否めず、到底、信用し難い」として、こちらも退けた。

決定について検察は「裁判所が適切な判断をされたものと考えている」とコメントしていて、弁護団は即時抗告するとしている。

(テレビ西日本)

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