4日、中国・北京での天安門事件から35年を迎え、台湾で追悼式典が行われている。
中国本土では、天安門事件に関して触れることはタブーとされている中、「天安門の母」という遺族グループは、YouTubeに亡くなった83人の写真を公開した。

香港でも天安門事件はタブー

中国の北京で、民主化を求める学生らを軍が武力で鎮圧した天安門事件から、4日で35年となる。

台湾の歴史的な施設の敷地内に設けられた追悼式典会場
台湾の歴史的な施設の敷地内に設けられた追悼式典会場
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追悼式典が行われている台湾から、沖本有二記者が中継でお伝えする。

台湾では誰もが知る歴史的な施設の敷地のど真ん中に、追悼の場が設けられた。
オープンしたばかりの会場には、少しずつ人が訪れ始めていた。

1989年6月4日、民主化を求める学生らを軍が鎮圧した天安門事件は、中国本土はもとより、2020年に国家安全維持法が制定された香港でも、公の場で語ることはタブー視されている。

天安門事件の犠牲者をモチーフにした慰霊碑のレプリカ
天安門事件の犠牲者をモチーフにした慰霊碑のレプリカ

そんな中、台湾は時間の記憶を語り継ぐことができる貴重な場となっている。

追悼会場に足を運ぶのは、台湾の人だけでなく、世界各地の人が訪れていて、中でも香港ゆかりの人が多いのが印象的だった。
会場には、天安門事件の犠牲者をモチーフにした慰霊碑のレプリカが設置してある。

オリジナルは香港にあったが、当局に押収されていて、「香港の声」を台湾が代弁している形となっている。

追悼会場に飾られた戦車と子どものイラスト
追悼会場に飾られた戦車と子どものイラスト

香港では、2024年3月に施行された「国家安全条例」によって、天安門事件に関連する内容をSNSに投稿したなどとして、これまで8人が逮捕されている。

追悼会場では4日の夜、6月4日にちなんで64秒間の黙とうが行われる。

当局の発表は死者319人だが…さらに上回るとの指摘も

ここからは、フジテレビ・立石修取材センター室長が解説する。

319人が亡くなったとされる天安門事件
319人が亡くなったとされる天安門事件

青井 実 キャスター:
35年がたって、さらに言論の自由が後退している印象です。

フジテレビ・立石修 取材センター室長:
天安門事件は、民主化を求める学生らを中国軍が武力鎮圧した事件で、若者がたった1人で戦車の前に立ちはだかる映像が有名だ。

1989年6月3日の夜から4日にかけて武力鎮圧が始まり、多くの死傷者が出た。
当時、世界中に衝撃を走らせた事件だった。

宮司 愛海 キャスター:
中国の共産党政権は死者319人と発表していますが、実際にはそれをはるかに上回るとの指摘もあります。

遺族グループ「天安門の母」がYouTubeに公開した映像
遺族グループ「天安門の母」がYouTubeに公開した映像

青井 キャスター:
ーー共産党政権は弾圧を正当化していて、問題は解決済みという立場だが、犠牲者の家族の方々は、どうしているのでしょうか?

立石 取材センター室長:
中国本土で公に事件に触れるのはタブー。そのため犠牲者の家族は、今も怒りや悲しみとともに暮らしている状況だ。

宮司 キャスター:
「天安門の母」という遺族グループがYouTubeに公開した動画では、亡くなった83人の写真を公開。声明文では「この35年、愛する人を失った痛みに耐えてきた」としたうえで、「中国政府は事実を隠蔽してきた」と非難し、真相究明と責任の追求を今も求め続けています。

立石 取材センター室長:
中国では、こうした遺族らの声は徹底的に抑え込まれ続けているため、遺族は中国当局の統制が及ばないとされているYouTubeで声明を投稿した。

しかし、中国国内では閲覧できないとみられるため、英語の字幕が常に入っているという状況で、海外に向けて自分たちの立場を主張しているという性格も帯びている。

「政府は香港をぶっ壊し続ける」

青井 キャスター:
ーー中国当局による締めつけも厳しくなっているが、今後どうなるのでしょうか?

2019年に香港で行われた追悼集会の様子
2019年に香港で行われた追悼集会の様子

立石 取材センター室長:
かつては香港でも天安門事件の追悼集会が自由に行われてきたが、習近平政権のもとで香港国家安全維持法が施行され、2019年以後は追悼集会が開かれていない。

香港から台湾に移り住んだアンディーさん
香港から台湾に移り住んだアンディーさん

立石 取材センター室長:
そうした状況を受けて、香港から台湾へ移り住む人々も少なくない。台湾で香港式カフェを経営するアンディーさんもその1人で、「政府は香港をぶっ壊し続けている。昔の人が築いた香港はもうない。台湾にいると自分の本音が言える」と話している。

宮司 キャスター:
香港では、「常に相手がスパイかもしれない…とおびえる日々だった」とも話しています。

アンディーさんの店に飾られた自由や民主主義を訴えるカード
アンディーさんの店に飾られた自由や民主主義を訴えるカード

立石 取材センター室長:
アンディーさんのお店の店内には、香港ではタブーとされている自由や民主主義を訴えるカードが壁一面に貼られ、中国の体制を批判する書籍も並んでいた。

店内には、子ども向けの本もあった。アンディーさんは「台湾の子どもたちが自由に学び、自由に将来を選べるように」と話していた。

これは、台湾市民にとっても香港で今起きていること、中国に取り込まれればどうなってしまうのかという意味から、人ごとではないというふうに受けとめている状況だ。

スペシャルキャスター 山口真由さん:

自国の若者に戦車を向ける、中国政府の本質を明らかにする象徴的な事件です。しかし、中国はこれをなかったことにしようとしている。私より若い40歳より下の人は、この事件をまったく習ってないわけです。だからこそ、私たちは決して風化させてはいけない。報じ続けていかなきゃいけないんじゃないかなという気がします。

立石 取材センター室長:
中国ではこの35年間、事実上、歴史からこの事件を抹消してきたということになる。4日も、月の裏側に探査船がついたというようなニュースを報じていて、天安門事件については触れていないという状況だ。
(「イット!」 6月4日放送より)

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