ホテルや旅館などの宿泊税は東京都や京都市など、全国で9つの自治体が導入しているが、広島県が新たに導入を目指し、動きを本格化させている。その内容と課題をまとめた。

都道府県、市町村が独自に課税

宿泊税は、ホテルや旅館の宿泊者に対して自治体が課税し、観光振興などに使われるもので、税額、税率は自治体が独自の条例で決めることができる「法定外目的税」。

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広島県は1人1泊一律200円とする方向で、県内の自治体に説明を始めている。
都道府県単位ですでに導入しているのは東京・大阪・福岡、市町村単位では、京都市・金沢市・福岡市・北九州市・長崎市・北海道の倶知安町の9つの自治体だ。福岡市・北九州市では福岡県との二重課税になっている。

若木憲子記者
若木憲子記者

広島では、2023年のサミット開催を機に訪れる観光客が増加しており、県は、オーバーツーリズム対策を含め、受け入れ態勢の充実を図るため、「宿泊税」導入に向けた動きを本格化させている。1人1泊200円の根拠だが、必要な観光事業費を年間30億円と想定し、年間宿泊者数の目標、1500万人から算出したということだ。

事業者が客から徴収、県に納付

税を支払うのは広島県内のホテルや旅館、民泊などに宿泊する全ての人で、ビジネスや通院など、宿泊目的にかかわらず、全て課税する方針。一方で、修学旅行などで泊まる児童や生徒を免除するかどうかは検討が必要としている。

実際に税を納める方法は、ほかの自治体の例などをふまえ、ホテルなどの宿泊事業者が泊まった人から徴収し、県に納付する方式が考えられているが、事業者の事務負担を考慮し、県は「報償金」を出すほか、税収の一部を市や町に配分する交付金の創設も盛り込んでいる。

「税収の使い道」の例にはいろいろな項目が上げられているが、年間30億円では、これらすべてを実現するには、長期的な計画が必要になりそうだ。

・案内表示整備
・オーバーツーリズム対策
・外国人向け観光列車の導入
・ナイトマーケットの常設
・マウンテンバイク専用コースの整備
・新たな宿泊施設の誘致促進
・宿泊事業者の人材獲得支援 など

ゲストハウスなど小規模事業者は徴収、納付の負担増を懸念

一方、宿泊事業者には、宿泊客から税の徴収と県への納付の負担が増えることになる。中でも、小規模で低料金を売りにしている事業者ほど負担感が増すと、心配する声が上がっている。

広島市中区のゲストハウス「マングタック」では、ドミトリー形式で各フロアには2段ベッドが並ぶ。トイレやシャワーは共用で、価格は1人1泊3500円~4500円。客の8割は外国人で、事前にオンラインで決済をする人がほとんどだという。

マングタック・長谷川直哉さん:
宿泊税は現地で現金で追加で徴収する形になるので、お客様自身も2度支払いの手間がかかる。200円さらに上乗せとなると、お客様も高くなったと感じると思うので、その点も不安

一方、広島市南区の「ホテル石本」では、和室と洋室合わせて25部屋で最大50人ほどの収容が可能。客層は日本人がほとんどでビジネス客が半数、合宿や部活など学生の団体客が35%を占め、観光客の宿泊は15%ほどだという。

ホテル石本・石本修二マネージャー:
徴収自体は賛成。ただやはり若年層、特に弊館は学生がターゲットで、200円という金額をどのように解釈されるのかを懸念している

事業者の規模、そしてターゲット層をどこにしているかで、負担感が変わってくるようだ。

コメンテーター 叡啓大学・早田吉伸教授:
他府県では宿泊料金に応じて負担額を変えている自治体もある。一方で、料金に応じて税率を変えるとその分、事務作業は増える。そのあたりのバランスを見ていくことが必要

ほかの自治体の例をみると、京都市は宿泊料2万円未満は200円、2万円~5万円未満は500円、5万円以上は1000円と差をつけている。北海道で外国人スキーヤーに人気のリゾート、ニセコがある倶知安町は一律宿泊料の2%。県と市が二重課税する福岡市・北九州市では宿泊料2万円未満なら県税50円、市税150円の合計200円などとなっている。

広島県は5月に、県内すべての自治体の担当者向け説明会を開き、意見を交わした。市や町からは期待する声が上がる一方で、
・修学旅行だけでなく、学校のクラブ活動やスポーツ行事の宿泊も検討対象としてほしい
・税の使い道や導入スケジュールを具体的に示してほしい
といった声も出たということだ。広島県はこうした意見もふまえて、素案をより具体化させる方針。

(テレビ新広島)

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