有明海沖合のアカエイが近年、浅場に現れアサリなど二枚貝を食い荒らしている。アサリ漁獲量は激減。このためアカエイを食材に活用し、水産資源を守るとともに漁業の新たな収入源にしようという試みが始まった。

アカエイ「食害」でアサリ激減

アカエイは日本全国に生息し、有明海では体長80センチほどのものが多くみられるという。このアカエイによる「食害」が近年、有明海で問題となっているのだ。

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アカエイはもともと沖合に生息する魚だが、5年ほど前から浅瀬に多く現れるようになった。アサリなどの二枚貝を食べるためだ。アカエイに詳しい関係者によると、一日に体重の3割ほどの大量の貝を食べるという。

2022年の有明海のアサリ漁獲量は年間約270トン。40年前の0.3%以下に激減していて、アカエイの食害が原因の一つと言われている。

養殖ノリ”色落ち”の原因にも

アサリなどの二枚貝の激減は養殖ノリの不作と無関係ではない。
昨シーズン、有明海の養殖ノリは黒くならない“色落ち”で品質が低下。2年連続の不作となった。

”色落ち”した有明海の養殖ノリ
”色落ち”した有明海の養殖ノリ

その要因の一つがプランクトンの増殖。ノリの成長には海の栄養塩が欠かせない。プランクトンはその栄養塩を食べるため栄養が不足したノリは黒くならず“色落ち”し、増殖すると赤潮が発生する。

厄介者のアカエイを食材に

この厄介者のアカエイ。実は、東南アジアでは一般的な食材として使われている。また、エイの仲間にはフランス料理のムニエルの食材として使われるものもある。

アカエイを駆除するだけでなく、食材として活用できないだろうか…。新たな収入源にし、アサリなどの二枚貝を保全するという一石二鳥を狙った試みが始まった。

アカエイ料理の試食会(佐賀・鹿島市 2024年5月26日)
アカエイ料理の試食会(佐賀・鹿島市 2024年5月26日)

それは、アカエイのおいしさを知ってもらおうと佐賀県有明海漁協が開いた試食会(2024年5月26日)。試食会は関西の水産業者など6社が協力して開かれた。

独特のアンモニア臭がするため漁業者から捨てられるエイだが、実はビタミンやコラーゲンが豊富。すぐに血抜きをして氷を混ぜた海水でしめることで、身や内臓、軟骨まで1匹丸々食べられるという。

試食会用にアカエイを捕獲した漁業者の森田政則さんは、「90本の針に50匹近くかかっていた。大きいものは20キロ近くあった。すごい量で我々もびっくりした」とその魚影の濃さに驚いていた。

試食会用に提供されたアカエイ。その大きさは、まさに「座布団」クラスだ。

メニューは「唐揚げ」「ムニエル」「煮つけ」など9種類。

アカエイの「肝のなめろう軍艦」
アカエイの「肝のなめろう軍艦」

アカエイの「肝のなめろう軍艦」など珍しいメニューも。取材した記者は「あっさりしている。全然臭みがない」と試食した感想をリポート。

アカエイ料理「意外に美味」

試食会に訪れた人の反応は…。

Q.どれが一番おいしかった?
参加した漁業者:
なめろうと唐揚げはピカイチ

Q.スーパーに並んでいたら買う?
参加した女性:
この味だったら買いますね。おいしいので何で食卓にあがってこなかったかが疑問

普段エイが獲れると網を破るため捨てるという漁業者は、「エイの見方が変わる。食材の目になる」と試食会の感想を話した。

「漁業の新たな収入源になれば」

アカエイの意外なおいしさに、山盛りにのせられたエイ料理が次々と消えていった。

佐賀県有明海漁協鹿島市支所・中島龍 運営委員長:
食べ方次第でこれだけおいしいとみなさんにわかってもらい、たくさんエイを食べてもらい、漁業者の収入源になったらいいと思います

アカエイを食材として活用することで水産資源を守るとともに漁業者の新たな収入源にする。

アサリなどの二枚貝の復活。
不作が続く養殖ノリの品質改善。
そして漁業者の収入増。

有明海の厄介者「アカエイ」の今後の活用が期待される。

(サガテレビ)

サガテレビ
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