5月24日に日本での現役引退会見を行ったサッカー元日本代表主将・長谷部誠、40歳。
フジテレビの佐久間みなみキャスターが単独インタビューを行い、引退会見では明かさなかった「長谷部誠の真実」を語ってくれた。

会見時では、「引退をした実感がまだ湧いていない」と語っていたが、まずその事を聞くと。
「日本に帰ってきて、引退会見やインタビューをして頂く中で、みなさんに『お疲れ様でした』と言ってもらって、少しずつ実感が出てきた感じがありますね」と徐々にプレイヤー長谷部誠からの脱却を感じているという。

それでも「まだボールがあったら蹴りたくなる」とサッカー選手としての「職業病」が抜けない長谷部だが、ドイツで行われた引退前最後の試合では子供が駆け寄ってきて、涙を流した。
「あの時の感情を言葉で表すのが難しくて、自分でも説明ができないですけど、家族には本当に支えてもらったので、そういう意味で自然と、恥ずかしながら涙が出てしまいました」
"完璧なリーダー"のもうひとつの顔
長谷部誠のサッカー人生はまさに輝きに満ちたものだった。
2002年、高校卒業とともに浦和レッズに入団すると、2年目にレギュラーに定着。トップ下や攻撃的ボランチとして活躍し、2006年Jリーグ優勝、2007年にAFCチャンピオンズリーグ優勝に大きく貢献した。
2008年に戦いの舞台をドイツに移すと、ブンデスリーガやUEFAヨーロッパリーグ優勝と幾多の栄光をつかんだ。
日本代表としてもW杯に3大会連続で出場し、2度のベスト16。キャプテンとして81試合出場は歴代最多の記録だ。

端から見れば「長谷部だから当然」と思われる完璧なリーダーとしての姿。しかし実際は、自分自身が作り上げた「第二の長谷部誠」だった。
「パブリックイメージとして日本代表のキャプテンは、しっかりしなければっていうイメージがあって、そういうところに寄せていった部分もあります」
家族から『真面目なタイプじゃないよね』「周りはこんな感じなの知らないよね』と言われるほど、周囲が理想とするイメージとはかけ離れた本来の自分の性格。そんなタイプの長谷部は、周りが理想とする日本代表キャプテンのイメージに自ら寄せていった。
そうする中で「パーソナリティーの部分ですごく磨かれたところがあった」と、寄せた結果良かった部分もあったと語る。
引退会見では明かされなかった後悔
佐久間:
あの試合に戻れたらと思う試合はありますか?
長谷部:
2014年のW杯の時は、選手の質とかチーム全体のことを考えれば、もっといい戦いができたと思うし、もっと大きな結果を出せたと思います。
本田圭佑や香川真司、長友佑都など多くのタレントを擁し、優勝を目標に掲げ挑んだ2014年のブラジルW杯。しかし結果は1分2敗で勝利なくグループステージで敗退。それは理想を追い求めすぎたが故に起きてしまった事だと長谷部は語る。
「サッカーというのは時代ごとで合う戦術があって、すごく進化する。そういった意味で、変わっていくのがすごく速い世界なんですよね。そこに自分たちが対応しきれなかったです」

連動したパスサッカーに強いこだわりを持っていた当時の日本代表。そのこだわりに大きな落とし穴が潜んでいたのだ。
当時の日本代表監督・ザッケローニ氏は、現代主流になっている「縦に速いサッカー(前線からプレスをかけボールを奪い、ゴールまで素早く運んでいくスタイル)」を求めたが、選手の中で『自分たちがボールを保持してプレーしよう』というイメージが強かった。
「縦に速いサッカーとボールを保持するサッカーの2つのプレースタイルを織り交ぜて、バランスよくやるサッカーができたら、もう少し良かったのかなと思いますね」
後悔を学びに。長谷部誠の原動力
その後悔から得た学びが、次なる原動力につながった。
「サッカーのトレンドをしっかり読むようになりましたね。よりサッカーの本質を考えるようになって、そういうことを考えてやることを積み重ねていったので、特に自分は長くプレーができたのかなと思います」

「40歳までブンデスリーガでプレーができたのは、いかに頭を使って、いかに周りを見て、いかに自分を客観視して、頭の方で生き残ってきたのかなと思いますね」
日本を背負ったリーダーの今後の展望とは
佐久間:
将来、日本代表監督としての可能性は?
長谷部:
自分のやり方として、大きな目標というよりはコツコツタイプだったので、みなさんからの指導者としての期待というのも感じて、自分の夢とか目標も大事だけど、期待してくれる人の夢とか期待にのってみるのも悪くないと思っています。そういう期待をしてくれているというのは、自分の頑張る原動力になります」

今後はドイツ・フランクフルトU-21コーチに就任し、指導者としての新たな道を歩み始める。
「ドイツで指導者として歩み始めるということは、語学の部分でも相当大変なものだと思うんですけど、簡単にできることにチャレンジしても面白くない。プロ生活もそうでしたし、自分は困難な道を選ぶと得るものが大きい。自分はそういうタイプなので、これからもそうして行こうと思います」
プレイヤーとしての長谷部誠には、ピリオドが打たれた。
今後は指導者として、長谷部誠の魅力を存分に発揮し、目の前の目標を1つ1つ達成してくれるはずだ。
近い将来、再び日本を湧かす彼の姿を我々は見ることに違いない。
『すぽると!』
6月1日(土)24時35分
6月2日(日)23時45分
フジテレビ系列で放送中