観光バスの路上駐車が深刻な問題となっている京都市で、警察が一斉指導に乗り出した。
路上駐車の実態を取材。バスの運転手、そしてバス会社の言い分は…
【動画】「ホテル造るならバス寄せも造れ」逆ギレする運転手 観光バス“路駐”に悩む京都 警察が一斉指導
この記事の画像(7枚)京都府警の警察官たちが、一斉に京都の街へ。道端に止まった観光バス一台一台に声をかけて回る。
警察官:長時間止められると…
バス運転手:分かっております。(客が)あと1人。
初夏の陽気の中、観光客で大混雑の京都。いま京都では観光バスの路上駐車が深刻な問題になっている。
■運転手は「路上駐車ではない」というが…
街に出て取材すると、
記者リポート(5月18日):横断歩道のすぐそばにバスを駐車しています。
ホテルなどが立ち並ぶ大通りでは、何台もの大型観光バスが止まっていた。中心部では、路上駐車が原因となり、たびたび大渋滞が発生していた。
記者リポート(5月27日):こちらの五条通。大変車通りが多いんですが、ちょうど観光バスが1台、10分以上駐車しているのが見えます。
駐車禁止の標識がある道路では、5分以内の客の乗り降りなどは認められているが、長時間の駐車は禁止されている。渋滞の原因になるだけではなく、二輪専用レーンをふさぎ、自転車が車道に飛び出して走らなければならない危険もある。
20分ほど止めていたバスの運転手は、かたくなに「路上駐車ではない」と否定した。
バス運転手:
(Q.ここは駐車禁止だが?)駐車じゃない。お客さん乗せる。
(Q.何分くらいここにいる?)いま来たところ。
(Q.20分前から見ているが?)は?
昼時の烏丸通では、さらに長時間の路上駐車が目立つ。
バス運転手:
(Q.ここで止まっている理由は)え、みんなここ止まっているんじゃないの。レストランがその辺にあると思うんだよ、私、指示を受けてやっているんで。
客が近くのレストランで昼食を取る間、待っているとのこと。別のバスの運転手は記者が話しかけようとすると急にバスを出発させた。その後も続々とバスが集まってきていた。
■駐車場が離れたところにしかないため止めに行く時間がないという
なぜ駐車場に止めないのだろうか。
バス運転手:(Q.駐車場に止めるよう市と警察が推奨しているが?) 駐車場まで離れているんで。すぐ1時間ぐらいで観光は終わってしまうので、行っている間に時間がたってしまう。
大型車の駐車場は、東山や二条城などの観光地周辺にあるため、止めに行く時間がないと言う。
烏丸通で長時間駐車していたツアーも企画しているバス会社に聞いてみると…
バス会社:うちは1時間以上かかる用事のときは駐車場に置くよう教育している。住民から会社に苦情の電話がくるので。
バス会社: (Q.かなり長時間止まっていましたよ?)ドライバーの判断で、止めたままになることもある。渋滞が多いから駐車場に入れて戻る時間がないこともある。四条通は大型バスが通行禁止だから、烏丸通を通って止めるしかない。
京都市は四条通と河原町通の一部で大型バスの通行を禁止しているため、周辺の御池通、烏丸通、五条通に路上駐車が集中するようだ。
さらにこんな話も…
バス会社:インバウンド客が、約束の時間に来ないことがある。こっちは、遅刻すると怒られるので、時間に余裕をもって行って待つしかない。この問題は難儀なんです。
■「ここに許可しちゃだめよホテル。ホテル造る場合はバス寄せ造れ」
警察は、5月28日から3日間取り締まりを行い、46台のバスを指導した。
指導を受けた運転手からは、こんな本音も…
警察官:長時間止められると、どうしても交通の妨げになるんで。
バズ運転手:京都市もさ、こういうところに許可しちゃだめよ、ホテル。烏丸とか。ほんでいつも怒られるんだよ、こっちが。(ホテル)造る場合はさ、バス寄せ造れって。
京都府警察本部 交通指導課 高田紘嗣課長補佐:バスの事業者ももちろんですけど、ツアーを企画する旅行会社など、関連する業界の方全体で、この問題を考えていただいて、違法な駐停車がなくなるようにしていただけたらと考えております。
京都市によると、ことし3月、路上駐車を繰り返すなどしたバス会社76社に警告文を送付し、さらにバス会社にツアーを委託している旅行会社に対しては、組合を通して周知を図っているということだ。しかし、組合に加盟していない事業者もあり、路上駐車と取り締まりのいたちごっこはまだ続きそうだ。
■法律よりお客さん優先の実態 観光業界全体での対策が必要
京都市や警察が対策に乗り出しているが、十分とは言えないようだ。
関西テレビ 神崎報道デスク:いま警察は口頭指導に止めてますけど、これ以上ひどかったら、取り締まらないといけない状況になると思います。あと大型バスを通行禁止しているエリアは限られているんですが、ひどくなるともっと拡大しないといけなくなるので、一つの考え方として例えばツアー会社でもバスを主に使うところであれば、街中のホテルではなく、郊外で車寄せがあるような大きなホテルにお客さんを泊めるとか、ツアープランの変更も必要なのかと思います。
バスの運行管理をするバス会社の責任はどうなのだろうか?
菊地幸夫弁護士:当然、バスの運行会社というのは道路運送事業の許可を受けてやっています。目に余る駐車違反などがあれば、行政処分を受けることもあると思います。バス会社が『1時間以上のときは駐車場』と言っていましたが、1時間までならいいという認識が、そもそも法律よりお客さん優先なんですよ。
ツアーを企画する旅行会社の責任はどうなのか?
菊地幸夫弁護士:バス会社より旅行会社の方が責任はちょっと遠いと思いますけど、でも旅行会社も法律上の登録が必要ということで、行政の監視を受けますので、あまりにもひどい旅行プログラムを立てるということになると、行政指導などがあるかもしれません。
これは観光業界全体の問題なのかもしれない。ハード面、ソフト面での対策強化が求められるだろう。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年5月30日放送)