福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」でカマイルカの赤ちゃんが生まれ、報道陣に公開された。赤ちゃんと母親の「サンゴ」が、水槽で仲良く寄り添って泳ぐ。
大喜びする職員たち、その理由は2022年の苦い経験にあった。

初めての出産 “呼吸していない”

2022年5月、カマイルカの「サンゴ」が初めての出産を迎えた。水槽の周りで見守る職員からは「頑張れ!頑張れ!めっちゃ、いきんでる!」「出る出る、出るよ!」という声が飛び交う。

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最初は順調だったが、出産が始まって2時間後、赤ちゃんが母親から出てくることができず、危険な状態に陥ってしまった。

思わずスタッフがプールに入り、赤ちゃんを取り上げた。
しかし、「泳ぎよる?呼吸しよる?」「してないですね」と職員たちに沈痛な表情が広がった。
職員の腕の中で、サンゴの赤ちゃんが息を吹き返すことはなかった。

マリンワールド海の中道 イルカ担当・木下克利さん:
あれから、もうかなり反省会をしてですね。「2年前は何が悪かったのか」「何が足りていなかったのか」「次こそは成功させるぞ」という感じで

そして2023年7月、サンゴの2度目の妊娠が判明した。

苦い経験を経た職員たちは、サンゴの子育ての訓練のほか、万一の際にも備えて人工保育の準備などを進めてきた。

「息した!」3時間以上かけ無事に

そして2024年5月3日、いよいよ出産を迎えた。
しかし、なかなかスンナリとはいかない。

「背びれの後ろ半分は見えてました。頑張れ~」と職員も気が気ではない。

赤ちゃんの姿が見えて、その後2時間以上たっても生まれないと、生存率が格段に下がるといわれる。

このとき、すでに3時間が経過。過去の苦い経験が職員たちの頭をよぎる中、サンゴは、必死に泳ぐ。

「背びれ出てる!」「背びれ出てます!」「いけいけいけ!」
「出た出た出た!何分?いま」「息した!息した!呼吸OK!」

無事、サンゴの出産は成功した。

マリンワールド海の中道 イルカ担当・木下克利さん:
みんなちょうど疲れ切った頃に産んだので「よかった」って、みんな本当、安堵(あんど)の表情を浮かべたところです

心配された授乳もサンゴは積極的に行っていて、ぴったりと寄り添いながら子育てに奮闘中だ。

5月3日の誕生から10日がたった赤ちゃんの体長は約95cmになり、胴回りはひとまわり大きくなった。

マリンワールド海の中道 イルカ担当・木下克利さん:
今のところ、かなり元気ですね。お母さんから離れて泳いだりすることも多くなってきていますので、ちょっとヤンチャなところも出始めているなというところです

一般公開は、秋以降を予定していて、名前の公募も行われる予定だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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