サッカーの全国高校総体で過去2回全国優勝し、W杯日本代表もいる“古豪”が復活を目指している。静岡県浜松市の浜名高校だ。サッカー王国・静岡県では、長らく静岡市や藤枝市などの中部勢が優勢だったが、最近は浜松市など西部勢の躍進が目立つ。“古豪”から“強豪”への進化を目指す地元出身者中心の雑草軍団に注目だ。

静岡サッカーの勢力図が変わる?

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高校生憧れの舞台と言えば冬の全国選手権だ。これまで102回の歴史を誇る伝統ある大会で、静岡県代表は優勝11回、準優勝10回と、まさに「王国」の名にふさわしい活躍を見せてきた。

ただ、そのほとんどが静岡・清水・藤枝といった中部勢だった。

しかし、ここ数年でその勢力図が変わるかもしれない。西部の古豪が中部の牙城を狙っているからだ。

浜名高サッカー部
浜名高サッカー部

2022年度の静岡県のタイトルは、総体を磐田東、選手権を浜松開誠館、新人戦を浜名といずれも西部勢が獲得した。

選手権は2022年と2023年のベスト4が2年連続で静岡学園・藤枝東・浜松開誠館・浜名となり、中部勢に西部勢が食い込んでいる様子がうかがえる。

全国制覇2回 プロ選手も10人

浜名高サッカー部
浜名高サッカー部

2024年春、古豪の新たな門出を満開の桜も祝福してくれた。

県立浜名高校が県リーグから昇格し、プリンスリーグ東海へ15年ぶりに戻ってきた。県の高校サッカー界では上から2番目のカテゴリーだ。

浜名は2010年の南アフリカワールドカップ代表の矢野貴章 選手など、過去10人ものプロを輩出してきた県西部の古豪だ。全国高校総体では1970年と1974年と、これまで2回全国制覇を成し遂げている。

内藤監督
内藤監督

内藤康貴 監督は「昔は全国大会で優勝しているし、ワールドカップに出ている先輩もいるわけで、“浜名といえばサッカー”と言われたいし、言われなければいけないという思いはあった」と話す。

就任11年目の内藤監督が言うように、輝かしい実績も今では昔話。ここ10年以上はなかなか結果が出ず“古豪”と呼ばれてきた。

同地区ライバルの躍進が刺激

2006年 県総体で優勝
2006年 県総体で優勝

公立高校とあって設備も充実しているとは言い切れず、静岡・清水・藤枝などかつてしのぎを削り合った県中部勢への人材流出に拍車がかかり、全国はおろか2006年を最後に長らく県のタイトルから遠ざかっていた。

磐田東が県総体優勝(2022年)
磐田東が県総体優勝(2022年)

ただ2022年、同じ西部のライバルの躍進が彼らの心に火をつける。

内藤監督は「浜松開誠館の選手権全国大会出場や磐田東の県総体優勝で勇気をもらい、自分たちもやってやるんだという気持ちにつながった」と話す。

浜名は同じカテゴリーだったライバル・磐田東の快挙が大きな刺激になり、その磐田東と互角に渡り合えた基本に忠実なサッカーでさらに自信を深めた。

タレント軍団破り17年ぶりタイトル

2023年の新人戦でも全国屈指のタレント軍団・静岡学園を相手に“ボールを大事にハードワーク”する姿勢を貫き、得点を許さず1対0で競り勝った。県タイトル獲得は17年ぶりだ。

浜名サッカー部の練習
浜名サッカー部の練習

当時1年生だった野澤康佑 主将(3年)は「自分が入った年あたりから強くなったのは、すごくうれしい。自分たちの代だけではなくて、これから浜名が10年・20年ずっと強豪校と言われるためのサッカーを全国でみせたい。浜名ってこんな強いんだって、(浜名を)全国レベルの名前にする1年にしたい」と意気込む。

高校時代の内藤監督
高校時代の内藤監督

「古豪復活」への手応えを誰よりも感じ取っていたのが内藤監督だ。

浜松西高の高校時代は県の決勝で小野伸二 氏を擁する清水商業に敗れるなど中部勢の高い壁に阻まれてきた。だからこそ「西部勢の力を示したい」と堅く誓い、指導者として浜名を高みへと押し上げてきた。

エスパルスユースにも勝利

そして、15年ぶりのプリンスリーグ東海でさっそく試される舞台が巡ってきた。

初陣の相手は同じ静岡の清水エスパルスユース。

トップチームデビューも果たしている相手のエースに対して厳しいディフェンスで動きを封じると、後半、3年生の津田が少ないチャンスをモノにして2得点。

その後も鍛え上げられたハードワークで逆転を許さず、エリート軍団相手に価値ある勝利を手にした。

津田廉大 選手(3年)は「得点王になることを個人の目標として掲げていて、初戦で2点獲れたのはすごく大きい。最高の1日になった」と喜ぶ。

反撃の狼煙を上げて、次々と中部の強豪を撃破している浜名は県高校サッカー界の勢力図を塗り替えようとしている。

“古豪”から“強豪”へ

浜名高サッカー部
浜名高サッカー部

“古豪”から“強豪”へ…地元出身者が多数を占める100人の雑草軍団は虎視眈々と牙を磨き、大輪の花を咲かせようとしている。

内藤康貴 監督:
古豪と言われているうちはまだダメだと思っている。昔、全国大会優勝した偉大な先輩たちがサッカーで浜名を盛り上げようと頑張っていた時代に少しでも追いつくために、まずは静岡県でしっかり勝って全国大会で浜名が躍動している姿を、いろんな人たちに見てもらいたい思いが強い

5月に始まった県総体では、浜名は18日にベスト8入りをかけた戦いに臨む。

全国大会に進めば2006年以来18年ぶりだ。浜名がどんな戦いをみせるのか目が離せない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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