京都市のある小学校が、17日から水泳授業を近くのスイミングスクールに委託する取り組みを始めた。なぜ民間委託をすることになったのか、「newsランナー」の谷元星奈キャスターが取材をした。

https://youtu.be/V4-tsxAhwhY

■学校からプールがなくなる? 教員にとって負担の多い水泳授業

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京都市立正親小学校の3、4年生が水泳の授業を受けているのは、学校のプールではなく、民間のスイミングスクール。教えるのは、プロの指導者だ。

実は、京都市立の小・中学校4校が、今シーズンから体育の水泳の授業を、民間のスイミングスクールに委託する取り組みを試験的に始めたのだ。

なぜ、始まったのか、それには各学校が頭を悩ませる、ある理由があった。

実際に正親小学校のプールを見せてもらった。

谷元星奈キャスター:このあたりとか雑草が生えている状態…ところどころ、ひび割れが入っている…。

60年前に作られたプールは老朽化が進んでいた。

教員たちにとっても、毎年、点検・整備・修理などが必要で、負担が大きかったという。

京都市立正親小学校 長谷川英司校長:朝出勤してから、すぐ水の管理、水位の管理をしなければいけない。水泳学習のための業務が減るので、とても助かっています。

さらに、屋外にプールがあるため、ここ数年はこんな問題も…
京都市立正親小学校 長谷川英司校長:熱中症の指数が31を超えたら、運動は基本的に中止をしています。指数が上がった時には、水泳学習はストップ。

これらの理由に加えて、プールを新たに造り直して維持管理するよりも、民間委託することで、年間約170万円が削減できることがわかったため、京都市教育委員会は今回の取り組みを決めたという。(※正親小学校の場合)

この学校では、近くの民間プールまで歩いて移動する。
児童たちはいつもと違う授業環境に、わくわくしている様子。

民間プールは、屋内で天候や気温に左右されることがなく、水温も一定のため熱中症のリスクも減らせる。

指導員のほかに専属の監視員が1人いて、安全面への配慮も。

谷元星奈キャスター:1人1人マンツーマンでレッスンが行われています。

インストラクター:ほとんどの人は頭のてっぺん、上半分が出てるんだよ。

プロの指導者から適切な水泳指導を受けられ、泳ぐ力の向上が期待できるというメリットもある。

一方で、評価は学校の教員が行うため、より丁寧な情報共有が必要になる。

教員からは、こんな感想も…。
4年生の担任:お話の仕方とか見させてもらって、思わず僕も習ってみようかなと思うぐらい、上手に教えていただいて。

4年生:夏じゃなくても、寒い日でも温かい水にしたら泳げるしいいと思います。

この学校は委託先の民間プールが隣にあったが、離れた場所にある2校はプールの送迎バスを使って移動するという。

京都市教育委員会 小泉昇一担当課長:バスなどを使って移動するときのリスクや、移動時間を踏まえたときに、どういった範囲で取り組みを広げていくかは、引き続き検証・検討していく。

京都市教育委員会は、課題がクリアできたら実施校を増やすことを検討したいとしている。

■水泳の授業を民間委託 肯定的な声が多い一方で問題、課題は?

取材した谷元キャスターはこのように話した。
谷元星奈キャスター:きょうは4つのレベルに合わせて、4人のインストラクターが、丁寧な指導をしていました。私が強く感じたのは、大人の目が多いということです。今回の小学校ではこれまで、水の中に先生が2人、陸上に1人、合わせて3人で見ていたそうですが、きょう取材したところでは、水の中にインストラクターが4人、陸上に教員を含めて大人が4人、合わせて8人でした。3人から8人に大人の目が増えて、これは安心につながると感じました。

水泳授業の民間委託、どんな課題があるのか?去年、すでに先行して行った徳島県の阿南市の保護者アンケートの結果だ。

全体としては、良い・どちらかと言えば良いが、77%と全体的には肯定的な意見が多く、どちらと言えば良くないと答えた人は8%だった。

どのような声があったかというと…、
・移動時間がかかるので、体育以外の授業時間に影響しないか心配。
・年に5回の実施で泳げるようになるのか?
・夏休みに学校プールで泳げなくなるので残念。

プールの監視員の経験もある神崎博報道デスクは「子供の泳ぎに注目すると、実は学校の先生になるのに、水泳の単位をとらなくても、いまは必修でなくても先生になれます。各自治体の採用試験でも、昔はピアノと水泳を必ずやらないといけなかったですけど、いまは水泳を外している所もあるので、必ずしも泳げる人が先生になっている訳ではありません。そういう意味でプロのインストラクターの指導によって、泳げるようになるのだったら、泳げない学校の先生に習うよりいいのではないかと思います」と話した。

プールに限らず、部活など、民間委託が進んでいるが、番組コメンテーターの京都大学大学院の藤井聡教授はこのように考えている。

京都大学大学院 藤井聡教授:大学あるいは学校で提供しているものと同じ、あるいは同じ以上のものが、外部の組織でも提供できるのであれば、これは全く問題ないと思います。したがって、そこの評価さえしっかりすれば、外に頼むとこういう問題があるなということであれば頼めないし、むしろいい所があればやればいいし、それで是々非々で考えればいいのではないかと思います。

課題があるかもしれませんが、それぞれの学校の状況に応じた運用が期待される。

(関西テレビ「newsランナー」)2024年5月17日放送)

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