能登半島地震から4カ月あまりたち、各自治体は復旧・復興に向けた取り組みを進めている。こうした中、教育を通して地域おこしに取り組んでいる男性は「あまりに『大人』が優先されているのではないか?」と疑問を呈す。被災地の子どもの環境について取材した。

新学期が始まってもボロボロの校舎で学ぶ子ども…学校はまだ避難所に

地震で多くの校舎にも被害
地震で多くの校舎にも被害
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2024年1月1日に発生した能登半島地震。石川県内では学校の建物にヒビが入るなど各地で被害があった。地震の発生から4カ月たったが、修復はされておらず児童・生徒はボロボロの校舎で学んでいる。

いまも避難所となっている学校も
いまも避難所となっている学校も

石川県によると新学期が再開した中で、いまだに避難所として使われている学校は21校あるという。(5月10日時点)

被災地と知りながら留学決めた3人の高校生 仮設寮の完成は先延ばしに

能登高校に日本各地から来た3人の高校生
能登高校に日本各地から来た3人の高校生

石川県能登町にある能登高校は、内閣府の制度を活用し日本各地から高校2年生を1年間、留学生として受け入れている。2024年度は東京と山口から被災地と知った上で「能登高校で学びたい」と3人の生徒が来た。

仮設寮の完成は先延ばしになっていた
仮設寮の完成は先延ばしになっていた

しかし、能登高校の寮がある校舎は壊れたまま。3人は同じ町にある県立能登少年自然の家を借りて暮らしているが大部屋で過ごす状況が続いている。当初、石川県は新学期が始まる前の2024年3月末までに仮設寮を完成させるとしていたが、それは先延ばしに。新学期が始まり約1カ月がすぎた5月13日からようやく入居できるようになった。

教育を通して地域活性化へ取り組んできた男性が感じる”違和感”

教育を通して地域活性化に取り組む木村さん(左)
教育を通して地域活性化に取り組む木村さん(左)

首都圏から2018年に能登町に移住した木村聡(きむらさとし)さん。町内唯一の高校である能登高校の存続と発展のため、生徒たちの学びとそれを創る先生たちのサポートを行う「能登高校魅力化プロジェクト」のコーディネーターとして、地域活性化にも奮闘してきた。
そんな木村さんは「高校生の日々の生活場所の整備が後回しにされている」と感じている。

スクールカウンセラーは倍増
スクールカウンセラーは倍増

石川県は新年度、奥能登地域で子どもたちの心のケアなどに努めるスクールカウンセラーの配置数を9人から20人に倍増させた。学校によっては児童・生徒1人1人に面談を実施したところもあるという。しかし、木村さんは「子どもは大人の顔色を伺って黙って我慢をしている部分があるのではないか?」と指摘する。

子どもの居場所作りが重要
子どもの居場所作りが重要

実は阪神・淡路大震災でも東日本大震災でも、地震発生から3年前後で子どもたちのストレス蓄積が爆発して、子どもの心が荒れたり落ち着かなくなったりする傾向がみられたのだという。
能登町ではNPOのカタリバを中心に、子どもの「居場所」作りに努めている。木村さんはこのような「子ども同士、子どもと大人が自然と話ができて、気兼ねなく遊べ、ストレスを軽減するような場所を作ることが大切だ」と話す。過去の教訓をいかし、大人の側から子どもにもっと近づいていくことが重要だという。

県が策定した復興プラン その骨子に書かれた文言は

石川県が策定した復興プランの文言は
石川県が策定した復興プランの文言は

石川県が策定した創造的復興プランの骨子には、学びの環境の再建、地域を担う人材の育成の場として「学校施設等の早期復旧」「学びの継続支援等・オンライン授業の実施」「教員の生活環境の充実」「被災した児童生徒の心のケア」「魅力ある学校づくりの推進」など、今心配している内容がきれいにまとめて書かれている。
木村さんは「これを本気でスピード感と危機感をもって実現できるか、子どもが今よりもっと通いたくなる学校を作れるかどうかに着目すべきだ」と話す。
奥能登では教師も被災者であるにもかかわらず、震災当日から今まで通常以上の業務をこなし、心身ともに疲れがみえているという。さらに、ストレスを抱えた保護者がそのはけ口として教員に苦情をぶつけることが実際に起きている。国としても被災地域の学校に積極的に加配するなど何とかしなければ教育の質に影響が出ることは明らかだ。

未来を担うのは子どもたち
未来を担うのは子どもたち

能登の復興は30年先ともいわれている。その30年先の奥能登を担うのは今の子どもたちであることは疑いようがない。その子どもたちが「奥能登に住み続けてよかった」と思えるよう、社会に出るための準備がしっかりできる環境づくりが早急に求められている。

石川テレビ
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