食の雑誌「dancyu」の編集部長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「しょうが焼き」。

雑色にある「まるやま食堂」を訪れ、生姜とニンニクがピリッと効いた、ご飯が進むパンチのあるしょうが焼きを紹介する。 

大田区の下町、路地に佇む店

「まるやま食堂」があるのは、京急蒲田駅の隣にある「雑色駅」から出てすぐ。

「実は大田区にもこういう下町があり、生活に密着した美味しそうなお店が並んでいます」と植野さん。

目的の店は商店街のすぐそばにある細い路地を入ったところ。看板がなければ通り過ぎてしまいそうな奥まった場所に佇む。

本店は“とんかつ御三家”の一つ

「まるやま食堂」では、2代目店主・丸山陽平さんと数人のスタッフが店を切り盛りしている。

この記事の画像(8枚)

雑色にある店は、去年8月に開店したばかりの2号店。

蒲田駅近くにある本店は、蒲田のとんかつ御三家「丸一」や「檍」と並ぶ有名店で、「まるやま食堂」は千葉県産のブランド豚・林SPFを使っているのが特徴だ。

雑色にある2号店でも同じブランド豚を使いとんかつは大人気。

とんかつ以外にも日替わりで、特大のアジフライや北海道産のホタテを使った揚げ物などを提供している。

しかも定食の場合、全品に自家製のとん汁が付く。おいしいブランド豚肉をつかったメニューととん汁のサービスで、開店からわずか1年で地元の繁盛店になっている。

好評だった豚肉中心の店へと変化

「まるやま食堂」の初代は、陽平さんの父・正一さん。

鹿児島県出身の正一さんは、高校卒業と同時に上京し、1日2000食も出る多忙な食堂で腕を磨いた。

その後、1971年に独立し、蒲田に「まるやま食堂」を開店。長男の陽平さんも子供の頃からお小遣い目当てにお店を手伝っていたそう。

植野さんが「店を継ぐつもりはあったんですか?」と聞くと、「いえ、なかったです。24歳くらいの時に父親が『別に店を持つ』と言って、『食堂が空くのでそこに入ってくれ』みたいな感じで入りました」と陽平さん。

店を引き継いだ当初、蒲田の食堂では、焼き魚や刺身などの定食も出していた。

しかし、とんかつ激戦区で勝負できるようにとブランド豚肉を使い出したところ「とんかつ」の人気が急上昇する。

そこで陽平さんは「この際、豚肉に絞ったメニューにしてみるか!?」と決意した。

するとこれが大当たりする。

蒲田の“とんかつ御三家”の1つとして知られる店になった。そして、その勢いを活かして、去年8月、雑色に2号店を開店。

本店と差別化を図るために行なった自家製とん汁付きのサービスも好評で、地元の人気店に。

さらに陽平さんは「違う味の店舗を出したいと思って、今はいろいろ地方に行って勉強しています」と話す。

そして植野さんの本日のお目当てが、まるやま食堂の「しょうが焼き」だ。

一口食べた植野さんは「白飯と合わせた時に美味いな、と感じるのがしょうが焼きの醍醐味ですね」と感嘆。

ちなみに時間がある場合は、1日寝かせておくと味が落ち着き、深みが出るという。

まるやま食堂「しょうが焼き」のレシピを紹介する。