“火山災害による被害をなくしたい”2024年3月、43年にわたり鹿児島の火山防災に尽力してきた京都大学防災研究所の井口正人教授(66)が定年を迎え退職した。名誉教授となった井口氏、退職記念の祝賀会で新設の鹿児島市の火山防災専門官への就任が発表された。

「支えてくれたのは桜島」

井口氏は1981年、桜島に観測所を構える京都大学の火山活動研究センターに採用され、2024年3月の定年退職まで43年間にわたり、桜島の観測や噴火予知などの研究を行ってきた。

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准教授時代の2008年には、桜島のマグマだまりの動きや位置を把握するための調査が初めて行われた。当時井口氏は報道陣の取材に「マグマの動き出しをいち早くつかまえるということが次の火山噴火予知に役立つ。今回の調査はまずその移動経路をおさえる」と意気込みを語っていた。

花束を受け取る井口正人元教授
花束を受け取る井口正人元教授

桜島にとどまらず諏訪之瀬島や口永良部島など鹿児島県内の火山防災に貢献してきた井口氏。鹿児島市のホテルで退職記念祝賀会が開かれた4月28日はくしくも誕生日。140人を超える出席者から、退職と誕生日が盛大に祝福され、井口氏も笑顔をみせた。

祝賀会には鹿児島市の下鶴隆央市長も出席。席上、市長から、井口氏の火山防災専門官就任が発表された。6月1日付で鹿児島市が新設するこのポスト。桜島の大規模噴火発生時には避難指示を発令するための助言を行うほか、2025年度から鹿児島市が運用を始める桜島火山防災研究所の研究計画の策定にも取り組むことになる。

祝賀会後の会見で井口氏は「大正噴火級の大規模噴火への危機感は、43年前から相当上がっていて昔と全然違う」と語る一方、「避難の認知度は別」と警鐘を鳴らした。そして「大規模噴火において本格的な避難が必要になる。あるいは本格的な復旧、復興が必要になる。そのためには計画が問題になってくるが、災害が起きてからつくるのではなく、災害を予測しながら計画を立案するのが大事だと思っている」と力説した。

43年間の研究者人生について問われた井口氏は「京都大学、地元、研究者仲間からの力添えや支えがあって非常に助かった」と振り返り、笑顔で言葉を付け足した。

井口正人元教授:
支えてくれたのは決して人だけではない。支えてくれたのは桜島そのものだと思っている

これまでも、そしてこれからも、井口氏は桜島と共に歩み続ける。

(鹿児島テレビ)

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