寝室を快適な温度にしているつもりでも、寝苦しいと感じたことはないだろうか。

「心当たりがある場合、布団と体の間にある空間の温度や湿度を指す『寝床内気象(しんしょうないきしょう)』が適切な状態ではない可能性があるので、寝具を見直してみるのもおすすめです」と話すのは、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さんだ。

寝床内気象の理想(提供:加賀さん)
寝床内気象の理想(提供:加賀さん)
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「布団と体の間の空間は、温度33℃前後、湿度50%前後に保たれているのが理想的です」(以下、加賀さん)

スウェットはNG!?パジャマは「汗」と「着心地」で選ぶ

暑さを乗り切りたいなら、まずは体に触れる「パジャマ」から替えてみよう。選び方のポイントは素材が適切かどうか、快適な着心地があるかどうか。加賀さんによると、暑い時期のパジャマの素材選びでは、「汗」と「熱」が大きく関係してくるという。
 
「睡眠中にかいた汗、放出した熱がこもると寝苦しくなってしまうんですね。吸湿性や通気性が良いものを使うと、布団と体の間の温度・湿度は自然と整いやすくなります」

寝汗のかきやすさがポイント(画像はイメージ)
寝汗のかきやすさがポイント(画像はイメージ)

寝汗をかきやすい、暑がりなら「綿(コットン)」のガーゼ素材や「麻(リネン)」がお勧め。軽い着心地や伸縮性の面では多少劣るものの、湿気の吸収や発散に優れるので、汗をかいてもベトつかず、さらっと着られる。

逆に、寝汗はあまりかかない、空調を効かせるなら「絹(シルク)」や「レーヨン」素材を選ぶとよい。多少の汗は吸収しつつ、滑らかな肌触りに包まれて眠れる。共通してお勧めできないのは「ポリエステル」。夏場は汗や熱がこもり、蒸れやすいそうだ。

パジャマの代表的な素材とその特徴(提供:加賀さん)
パジャマの代表的な素材とその特徴(提供:加賀さん)

代表的な素材の特徴をまとめるとこうなる。それぞれのメリット・デメリットを参考にしてほしい。

・綿(コットン)
湿気を吸収しやすいが、発散はやや苦手。肌触りは良い
・麻(リネン)
湿気の吸収や発散に優れる。肌触りはやや硬め
・絹(シルク)
湿気を吸収しやすく、柔らかで肌触りも良いが、価格が高め
・羊毛(ウール)
湿気の吸収や発散に優れる。肌触りも良いが、縮みやすい
・レーヨン
湿気の吸収や発散に優れる。肌触りも良い
・ポリエステル
湿気をあまり吸収せず、発散も苦手。肌触りはそこそこ 

商品によっては「綿:80% 麻:20%」など、複数の素材が配合されていることもあるが、素材ごとの特徴や配合の割合を見て、総合的に選んでほしい。

パジャマはゆったりしたものを選ぼう(画像はイメージ)
パジャマはゆったりしたものを選ぼう(画像はイメージ)

そして、着心地の良さも大切。拘束感や圧迫感があると睡眠の妨げになるので、首元にフードなどが付いておらず、手首や足首、腰回りがゆったりしたものを選ぼう。また、手軽さからパジャマ代わりにスウェットやジャージーを取り入れている人もいるかもしれないが、通気性が悪くなりがちなため、できれば避けたほうがよいと、加賀さんは指摘する。

掛け布団やケット類は夏場も活躍

加賀さんが併せて見直しを勧めるのが、体を覆う「掛け布団・ケット類」。暑い時は「必要ないのでは?」と思うかもしれないが、夏場も明け方は気温が下がりがち。適切なものを使えば布団と体の間の温湿度を整えつつ、寝冷えの防止にもなる。

掛け布団の代表的な素材と特徴(提供:加賀さん)
掛け布団の代表的な素材と特徴(提供:加賀さん)

加賀さんのお勧めは、掛け布団では「羽毛」や「羊毛」を使ったもの。蒸れにくく、適度なフィット感があるという。夏場は厚みが薄い「肌掛け」タイプを選ぶと、重苦しさも感じないという。

ケット類も吸湿性、通気性に優れたものを(画像はイメージ)
ケット類も吸湿性、通気性に優れたものを(画像はイメージ)

一方、ケット類は寝汗を吸い取る綿や麻を素材としたもので、フワフワした肌触りが気持ち良い「タオルケット」、通気性に優れた「ガーゼケット」がお勧めとのことだ。

・タオルケット
生地の表面に丸いループ状の繊維が織り込まれているもの
・ガーゼケット
生地をミルフィーユのように何層も重ねて作られたもの

空調を効かせて眠るなら掛け布団、サーキュレーターの風で十分ならケット類などと、使い分けもできるので、気温や好みで選んでも良いだろう。

枕も通気性が大事 「高さ」のチェックポイントは2つ

種類や形状がいろいろある「枕」については、選ぶ上でのポイントが2つある。「通気性の良さ」と「高さ調整のしやすさ」だ。

一つ目の通気性については、寝ている時は頭や首にも汗をかくので、通気性が良いと体温や湿気の調整がスムーズになり、睡眠の質を高めることが期待できるという。

「TPE(熱可塑性エラストマー)」(提供:加賀さん)
「TPE(熱可塑性エラストマー)」(提供:加賀さん)

枕の素材はウレタン、マイクロビーズなど挙げるとキリがないが、加賀さんのお勧めは「高反発ファイバー」または「TPE(熱可塑性エラストマー)」を使ったものだ。 

高反発ファイバーはポリエチレンなどの繊維を編み込んだ素材、TPEはプラスチックとゴムの間のような素材で、どちらも通気性が良く水洗いできるという。

「高反発ファイバーはやや硬め、TPEはやや柔らかめなので好みで選ぶと良いです」

加賀さんによる、理想的な「枕の高さ」(提供:加賀さん)
加賀さんによる、理想的な「枕の高さ」(提供:加賀さん)

もうひとつのポイントの「枕の高さ」についてだが、加賀さんによると、人間は仰向けで次のような状態がベストだという。
・肩口から頭にかけて10~15度の傾斜がある
・顔面が若干うつむくように5度ほど傾いている

加賀さんによると、ベストな状態かどうかは
・肩と首の筋肉がこわばらずにリラックスできるか
・呼吸を楽に維持できるか

この2点をチェックしてみてほしいと話す。

「枕はマットレスとの相性もありますが、中身の入れ替えなどで高さが調整できると、自分の感覚にうまく合わせやすいです。通気性の良さと合わせて考えてほしいですね」

寝具は使ってみないと感覚が分からないこともあるので、専門店で試してみても良い。気温がぐんと上がってくるこの時期、夏に向け、自分にぴったりな寝具を選んでみてはいかがだろうか。
 

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快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん
快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん

加賀照虎
睡眠健康指導士。3,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を伝える。朝の情報番組にてストレートネックを治す方法を紹介。現在、雑誌、テレビ、ウェブなどの幅広いメディアで快眠の啓発活動に取り組んでいる。

プライムオンライン特集班
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