この春、多くの若者たちが上京した。都内には長野県出身の学生たちが生活を共にする寮が5つある。そのうちの一つ、杉並区にある男子寮で、この春、入寮した1年生たちの様子を取材した。
学生約100人が暮らす男子寮
東京都杉並区の高円寺。JRの駅から徒歩15分の住宅街にある「信濃学寮」。
県出身の学生およそ100人が暮らす男子寮だ。
3月30日、「新入寮生」の引っ越しが盛んに行われていた。部屋は6畳ほどで全て個室。寮費は朝夕の食事がついて月4万円。（※別途電気料金）
長野市出身の山崎皓介さん（18）。母親と弟が引っ越しを手伝った。
ベッドの設置が完了、山崎さんは横たわり「寝心地いいですね」と笑みを浮かべる。
東京はすでに桜が咲く季節。布団は少し厚手だった。
母の到子さんは、「普通に冬用の布団を買っちゃいましたね、夏がけでよかったかもしれない」と苦笑い。
母親は寮生活に期待
山崎さんは日本大学の文理学部に入学。高校時代は硬式テニスに打ち込んできたが、大学では「団体スポーツを」と、軟式野球をやってみたいそう。
山崎皓介さん：
「勉強からクラブからバイトから全てにおいて全力で楽しみながらやりたいです」
母親の到子さんは寮生活に期待を寄せている。
母・到子さん（44）：
「食事が出る、男の子だし、ほっといたら何食べてるのって、心配がないことと、同じ県から自分の行く大学以外の友達ができたり、寮のイベントがあったりするので、それも期待。わが家のムードメーカーだから、普通に寂しいですけど。本人のやりたいことをしっかりやって将来につなげてもらえたら」
新入寮生（長野市出身）・山崎皓介さん：
「（将来は）具体的なことは思い浮かばないけれど（両親に）恩返しは絶対にしたい。長野県に帰って地元に貢献したい気持ちが今のところは強いです。何となく先生や市役所に勤めてみたいとは考えてます」
朝食と夕食は食堂で 門限は夜10時
新生活の舞台となる信濃学寮。
運営する「信濃育英会」によると、明治時代、陸軍将校の宿舎として始まり、戦後、長野県出身の学生を受け入れる寮となった。前身を含めれば116年の歴史がある。
朝食と夕食は食堂で。洗濯機や炊事場、それに風呂は共用。
門限は夜10時。
交流深まる寮生活
寮生による「自治会」があり、ゴミ出しや掃除は当番制で実施、交流を深めるイベントも開催している。
信濃学寮 事務長兼寮長・江崎好光さん：
「出身は一緒ですけど、高校も違うし、通ってる大学も違う。大学には大学で友達がいて寮に戻ってくれば違う大学の方とお付き合いができるというところが一番いいところ」
寮生は―。
上田市出身・2年生：
「友達といる時間が多くて寂しさを感じる時間がないし、ご飯を食べるときもお風呂入るときも一緒にいられるので、ずっと学校が続いてるって感じで僕はすごく好き」
下條村出身・2年生：
「最初は落ち着かなかったけど一年たってのんびりできる場所かな。共通の話題がたくさんあったりして同じ高校の人もいるので楽しい」
共同生活で助け合い 夢実現へ
この春、入寮したのは32人。
パソコンなど運びこんだ村木裕太さん（18）は松本市出身。
東京大学の文科1類に現役で合格した。
新入寮生・村木裕太さん（18）：
「（東大は）昔から憧れた大学でありますし、目標にしてたところで入れてよかったなと。東京生活が初めてで不安なところも多かったので同じ長野出身の方と共同生活をして助けあえる環境にすごく魅力を感じました」
将来は得意な英語を生かし、海外で活躍したいと考えている。
村木裕太さん：
「文科1類のあとに法学部に進学できたらと思ってるので、国際法や国際関係を勉強して、はっきりと決まってるわけではないけど、外交官など専門的な職業につきたい」
炊事場で、昼食のカレーうどんを作るのは小諸市出身の高橋龍之介さん（18）。東京経済大学に入学する。
引っ越しを済ませ寮生活は3日目。
新入寮生（小諸市出身）・高橋龍之介さん（18）：
「自炊、そんな得意な方ではないので、そうなってくると食費というのもあるし、食事付きはすごくありがたい」
高橋龍之介さん：
「（家を出て寂しさはありますか？）ちょっとありますね（笑）」
高校時代はバスケットボールに励み審判の資格も取得。大学でも続ける考えだが、将来の夢もしっかり持っている。
新入寮生（小諸市出身）・高橋龍之介さん（18）：
「小さな商店の人たちを支えていけるような税理士になりたい。目標である税理士になるのは一番優先したいけど、せっかくの東京なので、いろいろ楽しみながら勉強も頑張りたい」
4日後、入学式の写真を送ってくれた。
ご飯が最高！
4月4日―。
引っ越しも一段落。帰省していた先輩たちも戻り始めた4月4日、再び寮へ。
春休み中、休止していた食事の提供も始まっていた。
食事は委託先の調理師が月曜から土曜の朝と夕、栄養のバランスを考えて作ってくれる。この日の夕食はイカやマグロのフライに、カボチャの煮つけ、冷奴など。
食堂責任者・寺尾武さん：
「口から入るものですから健康に注意してます。やっぱり寮生さん毎朝顔を見て、一人一人体調とかも気になるし、そういうところは見てますね。毎日健康で頑張って勉強してほしいですね」
諏訪市出身・4年生：
「おいしいです。実家で暮らしてきて、東京に出てきて新生活大変なんですけど、ご飯の用意しなくてもおいしいの出てくるのはうれしいです」
新入寮生も―。
新入寮生（長野市出身）・山崎皓介さん：
「お腹いっぱいになれるし、おいしいのでとてもいいなと思います」
新入寮生（小諸市出身）高橋龍之介さん：
「栄養バランス考えられてる食事があるのは、すごくありがたいなと思います」
一方、共同浴場では―。
長野市出身・3年生：
「最高です。毎日つかれるのが魅力かなと思います」
利用時間は毎日午後5時～深夜12時。
親に恩返しできるよう頑張る
1年生の寮生活は始まったばかり。少し緊張する毎日だが、春は仲間づくりのために歓迎会の他「はとバスツアー」も予定されている。
新入寮生（長野市出身）・山崎皓介さん：
「新しい場所で寝られるようになったりとか、学校への行き方もだいぶ慣れてきました。結構大変ですけど、勉強もクラブも寮生活も頑張っていきたい」
新入寮生（小諸市出身）高橋龍之介さん：
「自分の生活リズムもできてきて、これから大学の授業も始まってくると思うので、それにどう合わせるか考えとかないとな。高いお金を親に払ってもらって来てるので、恩返しできるように真面目に通って卒業できれば」
（長野放送）
