大谷選手の銀行口座から約24億5000万円を不正に電子送金したとして、銀行詐欺の疑いで訴追されていた水原一平容疑者。13日、司法当局に出頭。身柄を一時拘束され、即日保釈されました。

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水原容疑者の弁護士は同日、以下の声明を発表。

「水原容疑者は大谷選手、ドジャース、メジャーリーグ、そして家族に対して謝罪したいと願っている。ギャンブル依存症の治療も希望している」

大谷選手のエンゼルス時代に得た給料の約43%を盗み取り、違法賭博につぎ込んでしまった水原容疑者。
大谷選手からの信頼を一身に受けながら、事件を起こしてしまった「ギャンブル依存症」の恐ろしさを、専門家に詳しく聞きました。

2年間で約1万9000回の違法賭博

2021年12月から2024年1月までの約2年間で、計約1万9000回の違法賭博に関与していたという水原容疑者。1回の掛け金の平均は約197万円で、多いときは2450万円に上るときもあったといいます。

ギャンブル依存症に詳しい、国立病院機構さいがた医療センターの佐久間寛之院長は、回数を重ねてしまった理由についてこう推察します。

国立病院機構さいがた医療センター 佐久間寛之院長
国立病院機構さいがた医療センター 佐久間寛之院長

――賭博の回数から見て、依存度はどのくらいと考えていいでしょうか?
さいがた医療センター 佐久間寛之院長:

あくまでも“一般的なギャンブル依存症”の症状になりますが、回数や掛け金は最初は少額から始まって、どんどんエスカレートしていくんです。
同じ快感を得るためには、より回数や掛け金をつり上がると。(感覚が)まひすると言うより、心の痛み、依存症の本質は苦痛の回避ですので、彼が「これはやらかしてしまった、これを穴埋めするためにはもっと高い金額で、リスクのある賭けにしなければいけない」という心理に追い込まれていく可能性があります。

――信頼関係があったのに、それを裏切って賭けに手を染めてしまうのは、依存症が関係しているのですか?
さいがた医療センター 佐久間寛之院長:

彼を診断していないので、依存症かどうかというのは分かりませんが、多くのギャンブル依存症の方は、なんとか周りの期待に応えようとして、つじつまを合わせようとして、結果的に借金を重ねていく。ある意味、病気に振り回されてしまっているというところがあります。ですので、次の賭けで逆転するしかないので、またうそを重ねて借金をして次のギャンブルに賭ける。それもまた失敗して追い詰められていくというのが、典型的なギャンブル依存症の症状です。

――今回は2021年からですが、それ以前から依存症だった可能性も?
ひょっとしたら、ギャンブルに対して、ハードルの低い。以前にもやったことがあるとか、成功体験があったというのはあるかもしれません。

「いずれ精神的にも経済的にも破綻」

ギャンブルの胴元とのやりとりの中で、2022年12月には「最後に約3000万円バンプしてくれないか。母親に誓って最後のお願いだ」と送っていた水原容疑者。

しかし、翌年の2023年6月22日には、「またやられた(笑)…最後にもう1回だけバンプしてもらえる?…これで負けたら、しばらくはこれで最後だ…」、翌23日に「最悪だ(笑)最後にもう1回だけ、バンプできる?コレが最後だと誓うよ」、24日には「困った(笑)最後の最後の最後のバンプをできない?これで本当に最後」と何度も“バンプ”と呼ばれる、掛け金の上限引き上げを願い出ていたことが分かりました。

――何度も「これが最後」と言っていますが、これは依存症の特徴なのでしょうか?
さいがた医療センター 佐久間寛之院長:

ギャンブルに限らず、いろんな依存症の方が「これが最後だ」「今回限りだ」ということはよくおっしゃいます。実際に誓約書を書かれる方もたくさんいます。ただ、そのときの気持ちに、その瞬間はうそはないと思うです。
ただやはり依存症という病気は結局繰り返してしまうので、どれだけ周りが話したり、誓約書を書かせても適切な治療や支援につながっていなければ、また再発するということが起きます。

――語尾に(笑)とよく付けていますがこれは?
私の見ている患者さんでも、本当に最後の最後はあまりに自分のやったことの大きさに、自分でも凍り付いて笑うしかないとおっしゃる方もいらっしゃいます。

――依存症だった場合、法的な責任について
法的には「原因において自由な行為」というものがありますので、彼がとった行動は法にのっとって裁かれなければいけない。しかしその一方でサポートも必要です。依存症というのは、私やあなたもなるかもしれない、誰でもなり得る病気なんです。罰は法的に必要ですけども、罰で病気が治るわけではない。そこには適切な支援、相談窓口へのつながりが必要だと思います。

――身近な人が“依存症”だと気づけない理由は?
さいがた医療センター 佐久間寛之院長:

逆に言うと、身の回りの人が一番気づきやすいと当事者も分かっていますので、なんとか発覚しないようにする。発覚しないようにするためには、とにかく次の賭けで一発逆転をするしかない、ですので、ギャンブル依存症の方はみんな二重生活をしています。表では何も問題はない社会人、裏では必死につじつまを合わせようとしている破れかぶれのギャンブラー。その二つがとても強い強度で進んでいきますので、本人は隠すことに相当の労力を使っている。そして、いずれ精神的にも経済的にも破綻していくというのがギャンブル依存症の悲劇的なかたちです。

――依存症の兆候があった場合、周囲の人間はどのような対応をすればいいのか?
まず、気がついたら相談機関に相談する。本人は自分で受診や相談というハードルが高いですので、気がついた方は、ご家族が一番わかりやすいと思うのですが、ご家族の方あるいは周囲の方が保健センターや保健所、あるいは家族会などの相談窓口につながるというのが大事かと思います。
(めざまし8 4月15日放送)