多くの離島を抱える鹿児島県。中でも、十島村は大小12の島々が南北に連なっている。村唯一の公共交通機関「フェリーとしま2」が火災で運航を停止してから3カ月半、2024年4月12日に運航が再開された。

“エンジンのカバー”外れ火災か

屋久島と奄美大島の間に点在する12の島からなる十島村。その距離は実に南北160kmにおよぶが、7つの有人島に暮らす人々は計609人(2024年3月31日時点)。フェリーとしま2は鹿児島市とこれら7つの島、そして奄美大島の間を週2往復している。

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そのフェリーとしま2で暮れも押し詰まった2023年12月29日、十島村の悪石島沖を航行中、機関室で火災が発生した。村役場は「エンジンから燃料が噴き出しているのを乗組員が発見し、その後出火した」と説明していた。

乗客乗員合わせて29人にけがはなかったが、鹿児島港にえい航されたフェリーは実況見分のあと修理に入り、長期の運航停止を余儀なくされた。

修理が完了したフェリーとしま2は、2024年4月12日、約3カ月半ぶりに運航が再開されることになった。これを前に鹿児島テレビの取材に応じた十島村の肥後正司村長は、エンジンの点検カバーが外されていたことが、火災につながったとの認識を示した。

十島村・肥後正司村長:
エンジンの主機関のカバーが外れたために火災につながったと聞いている。カバーがあることで火災の延焼を防ぐ機能があるらしく、(出火前に)乗組員は点検のために外していたと聞いている。検証された報告は国からは出ていないが、船からの報告だとそこにあたると言われている

そのうえで、肥後村長は「二度と繰り返さないよう乗組員、船長、機関長を呼んで安全対策を徹底した運航に臨むよう指示を出した」と述べた。

運航再開に住民から喜びの声

4月12日、運航再開を前に鹿児島港では岸壁にコンテナが並び、着々と出港準備が進められていた。役場によると、フェリーとしま2の修理期間中は車の運搬ができず、12日夜の再開第1便ではほぼ満載となる22台の車が運ばれる予定だ。

再開第1便では22台の車が運ばれる予定
再開第1便では22台の車が運ばれる予定

村には定期航空路線がない。この間、代船の運航はあったが、島の生活を支える生命線ともいえるフェリーの運航再開に、住民からも喜びの声が聞かれた。

十島村の住民:
(代替船は)貨物船なので海が荒れると走ることができない、そこまで来ているのに予定通り物が届かないこともあった。運航再開で船の便が決まるので予定を立てやすい。人の動きとかスムーズにいくと思う

肥後村長は、フェリーとしま2の運航停止で車両を運ぶ手段がなく、「村民もかなり厳しい生活を送ったのでは」と語った。そのうえで、陸運局が車検期間を延長するなどの配慮をしてくれたとして、感謝の意を示した。

「十島村の7つの島々は海上交通しかない。それが100日間止まったというのは村民生活のマヒとなった」と語る肥後村長は、「村民におわびしたい」と述べるとともに、「安全対策に取り組みながら事故のない運航を進めるべきと感じている」と語気を強めた。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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