万博開催まであと1年となり、肝心の万博会場の建設ははたしてどこまで準備が進んでいるのか。「newsランナー」の吉原功兼キャスターが取材した。

■半年前と比べて、“国内パビリオン”は着々と工事が進んでいる

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吉原功兼キャスター:工事車両も増えていて、(開幕まで)1年に迫り、どんどん建設が進んでいるなと実感しますね。

開幕まであと1年となる、大阪・関西万博。

「島」に会場を作るのは、170年を超える万博の歴史上、初めてだ。

(Q.工事がだいぶ進んでいますね)
博覧会協会 高科淳副事務総長:おかげさまで、だいぶ進んできた。リングも8割くらいできていて、9月にはつながる。それ以外のパビリオンも出来てきている。

半年前は、パビリオンの姿もほとんどなかったが…。

いまは、建物が出来あがりつつあるものもある。
主にこれらは、リングの“外側”にある「国内パビリオン」で、予定されている17館のうち、既に16で工事が進んでいる。

吉原功兼キャスター:様々なパビリオンで着々と準備が進んでいますが、今回注目したパビリオンは“心臓”と“食”です。

■「パソナ」のパビリオンでは iPS細胞から生まれた「心臓」…実際に動く「人工心臓」の展示を予定

来年に迫った大阪・関西万博。どこまで準備が進んでいるのだろうか…?

まず注目したのは会場の北西に位置する、「パソナ」の企業パビリオンだ。
アンモナイトをイメージした形が、ほぼ出来上がっている。

「いのち、ありがとう。」をテーマに、展示では鉄腕アトムとブラックジャックが、未来の医療や最新技術を紹介するという。

パソナグループ 伊藤真人常務執行役員:人が生かされたり、生き生きと活躍するというのが、未来にどう変わっていくのか、ということをパビリオンの中で見せたい。

ここで、展示されることになっているのが、小さなシャーレに入った3センチほどの、iPS細胞から生まれた「心臓」だ。

大阪大学 澤芳樹名誉教授:(万博のテーマが)“いのち輝く未来社会のデザイン”ということで、命を感じてもらう。命を感じるのに、見た目で感じるとしたら、心臓だと。

手がけるのは、心臓血管外科医の大阪大学・澤芳樹名誉教授だ。

iPS細胞を使った再生医療の第一人者で、重い心臓病の患者にiPS細胞から作った心臓の筋肉の細胞=「心筋シート」を移植し、機能の回復をはかる治験を行っている。

万博では、この技術をさらに進化させ、iPS細胞から作り上げた心臓そのものだ。
しかも、来年にはもっと大きく、実際に“動く”心臓を展示できるそうだ。

大阪大学 澤芳樹名誉教授:心臓病で死なない世界が50年後、“いのち輝く未来社会のデザイン”に含まれるのが、私の一番の夢、やるべきこと。

■関西万博発の大阪名物の誕生となるか 大阪外食産業協会パビリオン『宴~UTAGE~』

そして…パソナのパビリオンのさらに北で工事が進められるのは、地元・大阪の飲食店などのパビリオンだ。

パビリオンに出店する飲食店が、新たな「大阪名物」をそれぞれ考案し、フードコートで提供するというプロジェクト。

試作品作り2023年12月:皆様お疲れ様です。今回は試作会ということで。きょうはいったん作ってみて、イメージを持たそうという趣旨でやる。

どんなものができるのか、試作品作りをのぞいてみると…さまざまなジャンルの飲食店から、腕利きの料理人たちが集まった。

「サイコロステーキをのせて、このまま包んで食べる」
「落ちてしまう可能性があるよね。下に何か…」
「これでくるんで食べるから…」
「例えばマーボーやったら落ちてしまう」
「水分あったらダメだと思うけど…」

試行錯誤が続くなか、この日決まったのは「手のひらサイズ」であること。

片手で持てて、歩きながらでも食べられる…そんな大阪名物がいくつ誕生するのか、楽しみだ。

■海外パビリオン「開幕に間に合わせる」と意気込む国と、いまだ建設会社の決まらない国も

着々と準備が進む国内パビリオンだが…、「万博」はその名の通り、「万国博覧会」。

「万博の華」といわれる海外パビリオンを抜きに成立しない。

なかでも、目玉は参加国が独自に建築する「タイプA」と呼ばれるパビリオン。

今週、夢洲を取材した際にも、海外パビリオンの骨組みが出来ていて、鉄骨が組み立てられていた。

独創性豊かな建物がリングの“内側”に立ち並ぶ予定だ。

スイス政府代表 マヌエル・サルチリさん:イベントスペースのキーワードは“コラボレーション”だろうね。

展示内容について、連日会議を重ねるのは…去年、一番乗りでパビリオンのコンセプトを発表したスイス。

これまでに制作したもので、最も軽いパビリオンを作る予定で、屋上には“ハイジと会えるバー”も計画している。

順調に準備が進んでいるように見えるスイスだが、資材価格の高騰などといった課題に直面。

スイス政府代表 マヌエル・サルチリさん(去年11月):私たちはパビリオンのバックヤードなど、いくつか規模縮小するなどして、予算に収めた。来場者から見える部分は、全く変わりません。

こうした工夫の甲斐もあって建設が始まっているスイスパビリオンだが、開幕に何とか間に合わせるための模索はいまも続いている。

スイス政府代表 マヌエル・サルチリさん:私たちは建設業者から共有される最新のスケジュールを常に確認していて、必ず開幕に間に合う。開幕の日は最高の日になるだろう。

しかし…
吉原功兼キャスター:奥は建設が進んでいますが、手前は各国が建てる『タイプA』パビリオンの土地は、空き地が目立っています。

まだまだ着工していないところも多く、海外パビリオンが開幕までに全て完成するのかは、依然不透明。

「タイプA」パビリオンで現在参加を予定している52カ国のうち、36カ国は建設業者が決まっているが、残る16カ国は建設業者すら決まっていない状況だ。

その最大の課題について、“複数の海外パビリオンの依頼を断った”大阪の建設業者が、赤裸々に語った。

三和建設 森本尚孝社長:(参加国から)こういうものをつくりたいというイメージ図があって、見積もりは出来ないが『イメージ的にこんなものですか?』みたいな話は出来るが、実際にいつ契約締結して、いつから着工、材料手配するのかといった、煮詰める話をするまでの情報が、それ以上出てこない。タイミングを過ぎたら、やるとしても、間に合わせる自信がないので、お断りというか、時間切れになった。

森本社長は、参加国と建設業界、そして間を取り持つはずの博覧会協会が、まとまれなかったことに、原因があったと指摘する。

三和建設 森本尚孝社長:(三者が)膝を突き合わせて、『どうすればできるのか?』ということに対し、建設業界も具体的な提案をして、博覧会協会も、どこまでできるのか・できないかのすり合わせが去年・おととしできていれば景色は変わった。

(Q.各国が自力で探す現状だと、手を挙げる建設会社はいない?)
三和建設 森本尚孝社長:かなり厳しいと思う。

「万博の華」は、開幕に間に合うのだろうか。
現場からの厳しい指摘について、実務を取り仕切る万博のキーマンは…

(Q.いまから『建設お願いします』と言われても、間に合わないと断る建設業者もいるが?)
博覧会協会 高科淳副事務総長:短い工期でもできる施工環境の改善は、引き続きやっていきたい。色んな形でサポートしたり、受け皿を用意したりしながら、開幕に間に合うよう進めている。

(Q.開幕したものの『このパビリオンには入れない』ということにはならない?)
博覧会協会 高科淳副事務総長:そうならないよう、(各国に)お願いしている。

大阪・関西万博の開幕まであと366日―。その日、ここには一体どんな光景が広がっているのでだろうか…?

■万博の目玉は何になる?開幕半年前には明らかになるか

海外パビリオンは外観も華やかで、中身でどのようなイベントが行われるのかということは、本当に楽しみなので、開幕までに全てそろっているのかどうか注視したい。

万博の醍醐味は最新技術のお披露目の場だ。万博をきっかけに、後世につながる文化になるものもあるので目玉は何になるのだろうか。

過去の目玉展示の中には、1876年のフィラデルフィア万博の「電話」のように、今では私たちにとって当たり前になった技術がたくさんある。

1853年 ニューヨーク万博ではエレベーターが発表された。今ではなくてはならないものだ。

今回の目玉展示は何になるのだろうか。
「newsランナー」番組コメンテーターの浜田敬子さんは「iPS細胞の心臓の技術は、いま心臓の難病で苦しんでいる方にとって、非常に待ち望まれている技術。一方で、時代が変わってきていて、最先端の技術を競うというよりは、今の社会の課題を、どう解決してくれるんだろう。その方がなんかワクワクする。行き過ぎた技術による副作用みたいなものが、いまの社会にはある。だから万博が、技術とかテクノロジーとどう向き合っていけばいいのかを考えるきっかけになればいいなと個人的には思う」と話した。

目玉は、いつ明らかになるのだろうか?

関西テレビ 神崎博報道デスク:協会幹部に取材したところ、実はある程度決まっていて、早く目玉を伝えたい所ですが、企業側が情報オープンする時期、タイミングを悩んでいるそうです。あまり早すぎても、しらけるかもしれないので悩んでいるそうですが、ことしの秋ぐらいには、目玉がどんどん出てくるのではないかとみています。開幕半年前ぐらいがいいタイミングなのではと企業側はみているそうです。

どんな目玉展示になるのか、期待しながら待ちたい。

(関西テレビ「newsランナー」2024年4月12日放送)

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