歴代の琉球国王の死後に描かれた肖像画「御後絵(おごえ)」。これまで所在不明だったものが、このほど沖縄県に返還された。

関係者が「令和の大発見」と話す文化財の返還に尽力したのは、アメリカ連邦捜査局・FBI。なぜFBIがかかわることになったのか、およそ80年の時を経たドラマがあった。

箱を開けるまでものすごく緊張した

沖縄戦の混乱の中で国外に持ち出されたとされる琉球国王の「御後絵」。

返還されたのは第十三代尚敬王(しょうけいおう)と第十八代尚育王(しょういくおう)の肖像画とみられている。

およそ80年の時を経て、沖縄県立美術館に運び込まれた。

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その瞬間に立ち会った沖縄県教育庁文化財課の濵地龍磨さんは、良い状態で戻ってきてほしいと願っていた一人だ。箱を開けるまではものすごく緊張し、細部まで丁寧に描かれている実物の絵に圧倒されたという。

沖縄県教育庁文化財課 主任 濵地龍磨さん:
これが王国時代の最高峰の技術で製作されたものだったのかというのは衝撃を受けて、実際のところ言葉を失ったというのが的確かなと思います

しかし、この御後絵がいつ描かれたものかまだ断定はできないという。

沖縄県教育庁文化財課 主任 濵地龍磨さん:
色彩ははっきりしているんですが、これが当時の、いわゆる戦前の状態だったのかというのははっきりとはわかりません。今後予定されている化学分析の結果を待つしかないのかなと考えています

FBIの盗難美術品リストに

この貴重な文化財の返還の実現に大きな役割を担ったのが、アメリカ連邦捜査局・FBIだ。

県は2001年に沖縄戦で国外に持ち去られた可能性が高い、琉球王国時代の文化財などの捜索を要請し、FBIは盗難美術品リストを作成した。

事態が動いたのは2023年、マサチューセッツ州で退役軍人の遺族から遺品の中に、FBIのリストに含まれる文化財を見つけたとの通報が入った。調べたところ、御後絵のほか、地図や陶磁器など合わせて22点の美術品が見つかった。

遺品に添えられた手紙は、これらが第2次世界大戦末期に沖縄で持ち去られた裏付ける記述があった。

FBIは「これらの宝物を日本の人々に返すという正しい行動をとった、マサチューセッツ州の家族に感謝したい」と意義を語った。

令和の大発見になった

およそ25年にわたり文化財の研究を続ける沖縄美ら島財団の上江洲安亨(やすゆき)さんは、「新しい発見が生きている間に見つかり、そのこと自体は本当に歓迎したいし、残していた人に感謝したい」と歴史的な一報に心が躍ったと話す。

御後絵を巡っては、戦前、沖縄の文化を研究していた鎌倉芳太郎が撮影したモノクロ写真でしかその存在を確認できていなかった。

上江洲さんは、実際の色調が分かったことで、琉球絵画の研究が大きく進展するため、令和の大発見になったと思う一方で、御後絵がかなり傷んでおり、公開は慎重な判断が必要と指摘する。

沖縄美ら島財団 上江洲安亨博士(芸術学):
まずは修理。大事に方針を決めてほしいです。本当に焦らずに、50年先の県民、100年先の県民に御後絵を伝えるためにも、調査がすごく大事になってくると思います

修復作業については可能な限り琉球王国時代のやり方を踏襲し、技術継承の観点から若い人たちに託したいと上江洲さんは話す。想定されていた復元とは全く異なる色も確認されているという御後絵。

県は今後、どのような顔料が使われていたか、絵の具の剥落(はくらく)などの破損部分がどの段階で発生したかなどの分析を進め、修復の技術的な助言を行う専門委員会の設置など具体的な対応を検討していく方針だ。

(沖縄テレビ)

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