瀬戸内海で「海のゆりかご」と言われる海草の「アマモ」が水温上昇などの影響で減っている。魚の産卵や隠れ場所となり、豊かな漁場を育む「アマモ」をふやすため、人の手で浅瀬に苗を植えたり、種をまく取り組みが、広島の大崎上島町で地元の小学生が参加して行われている。

「アマモ」の群生は魚の産卵や隠れ場所

広島の大崎上島町は、みかんと造船、そして豊かな漁場として知られる瀬戸内海の離島だ。

大崎内浦漁協・中村修司 組合長:
漁業者が漁場として頻繁に利用する海域です。魚が入れ替わり立ち代わり、季節によって種類が変わる

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多くの魚が集まる理由は浅瀬に群生する海草「アマモ」にある。別名は「海のゆりかご」。うっそうと生い茂るため、魚たちの隠れ場や産卵場所になってきたが、近年、減少が著しいという。

大崎内浦漁協・中村修司 組合長:
最近は、びっしり群生していない。間が空いているんですね

10年ほど前から次第に少なくなり、海底の砂があらわに…。水中に含まれる栄養分の減少と海水温の上昇が影響したとみられている。

大崎内浦漁協・中村修司 組合長:
海そのものが持つ力が弱くなっているのが、なかなか人間の目には見えないじゃないですか。アマモがなくなると、漁の場が極端に少なくなる

アマモの種を浅瀬にまき、増やす

大崎上島町の豊かな海を守るため中村さんは3年前、「海辺を守る会」を発足。米粒のような形のアマモの種を浅瀬にまき発芽と定着を促そうとしている。その活動は、海上に流れる種のついたアマモをとり、その種をまた海にまくという地道なもの。

大崎内浦漁協・中村修司 組合長:
魚がたくさんとれるようになったわけではないが、アマモがまた、生えるようになって、マダイがすごくよく集まる時期があったり、今まで多くあがらなかったイカがたくさんあがる時期がでるようになった。1年2年じゃなくて、5年10年のスパンで、ずっと継続していくことが絶対に必要だと思っています

島の海岸に地元の小学生が学習のために、やってきた。波打ち際に、イネのように見える草が「アマモ」だ。

小学4年生:
アマモは最初ワカメかと思っていたので、こんなに生えていたのがすごいと思いました

広島商船高専・薮上敦弘さん:
海の状況はどうなの?環境はどうなの?魚が減っているよね、という話から、「アマモが大切だよね」と結びつけるような、小学生への実地教育を漁協と一緒にやっています

小学生がアマモの苗を植える

小学生たちは、今あるアマモの群生地をさらに広げようと、種の状態から自分たちで3カ月間育てた苗を浅瀬に植えた。

大崎内浦漁協・中村修司 組合長:
アマモ場という地域が大切なんだということを、学んでくれたらうれしいですね

小学3年生:
人間は人間で住むところがあって、魚は海が家だから、海は大切に使うところ。魚を増やしていきたいです

専門家も、瀬戸内海でのアマモの重要性を訴える。

アマモに詳しい流域圏環境再生センター・山本民次所長:
温暖化で、海草や藻の二酸化炭素吸収の役割がまず、注目されてしまうが、アマモによって生態系が豊かになることがもっと大きいと思いますね

瀬戸内海の豊かな漁場と生態系は、こうした地道な取り組みによって守られている。

(テレビ新広島)

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