政治とカネの問題をめぐり、岸田自民党には失望したが野党も頼りないという世論の思いが世論調査に表れている。「BSフジLIVEプライムニュース」では野田佳彦元首相と田﨑史郎氏を迎えて、政治倫理審査会での下村博文氏の発言や自民党の党大会を分析し、今後の政局について議論した。
保身ばかりの安倍派幹部に野田氏「安倍さんは泣くぞ」
新美有加キャスター:
政倫審(政治倫理審査会)における下村博文氏の弁明、印象は。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
期待値は高かったが「自分は知らなかった」という保身。安倍晋三元総理が率いたチームの幹部の人たちは政治家として、保守政治家として矜持を示すのかと思ったが、保身ばかりが目立ち非常に残念。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
出席したこと自体は評価する。だが、国民への説明よりも保身に走っている。自民党内の人間関係において波風を立てようとしなかった。またこの後に検察審査会を控えているため、これまでに検察に述べた以上のことは言えなかった。
新美有加キャスター:
政倫審での発言に食い違いが指摘されている2022年8月の安倍派のキックバック再開に関し、下村氏はここで「還付」を継続すると決めたことは全くないと述べた。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
これで納得するわけがない。(政倫審が開かれた)委員会室には安倍晋三元総理の肖像画がある。よくあんなことを言うな、と思う。安倍さんが(キックバックを)辞めろと言ったにもかかわらず、亡くなった後に誰かが継続させた。皆が自分は関係ないと言っている。解明に対する責任感が全くないことは極めて残念。安倍さんは泣くぞと思う。
反町理キャスター:
国会における一連の弁明・証言はこれで打ち止めになるか。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
いや、政倫審は野党を中心に、他の安倍派の中堅・若手が出てくれるよう働きかけを強めていく。ポイントは森喜朗さんに踏み込むか。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
これで終わりではない。自民党の幹部たちの発言に怒っている中堅は多く、新事実が出てくる可能性がある。舞台を予算委員会に移し厳しく事実を追及するということも。また長きに渡る慣行という話も出ており、法的な解決に繋げるため、森元総理に話していただくことが必要になってきた。
新美有加キャスター:
岸田総理は3月15日の参議院予算委員会で「森元首相をはじめ関係者の中でどなたに、どういった形で聴取するか判断する」と述べた。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
3月中には岸田さんが森さんに会い、話を聞くのだろう。100%ではないが8~9割。2人だけの会談でオープンにはならないと思う。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
そこまで大きな決断をしているなら、結果を正確に伝えなければ。国会に招いてもいい。緻密に議論して国民に報告できるようにすべき。曖昧さが残れば逆効果。
岸田首相ら自民執行部に「処分」を行う資格はあるか
新美有加キャスター:
衆参の政倫審を受けてのFNNの世論調査では、岸田内閣を「支持する」が前回から0.8ポイント増の23.2%、「支持しない」が0.7ポイント減の71.8%。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
1月に派閥の解散を宣言、2月に政倫審への出席を決めたのはいずれも岸田さんの決断だが、支持率にほとんど影響を与えていない。岸田さんが何を言っても言葉が有権者の胸に届いていない。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
株価や春闘という明るい話題がある分、内閣支持率は横ばいで済んでいるが、自民党の支持率は下がってきた。岸田さんの「政治改革の先頭に立つ」「火の玉となる」などの言葉はほとんど虚しく響いている。何を言っても国民から信頼を得られていない状況で、愛想が尽きた感が極まっている。私だったら耐え切れない状況だが、そこは異次元の鈍感力というか、岸田さんは割と平気。ちょっと今までお会いしたことのないタイプの政治家。
新美有加キャスター:
3月17日に開催された自民党の党大会で、岸田総理は裏金問題をめぐる議員の処分について初めて言及。「不記載の金額や程度、これまでの役職などの議員歴や説明責任の果たし方など状況を総合的に勘案し、厳しく対応していく」と述べた。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
総理総裁が突っ走れる問題ではなく、党執行部と十二分に話して責任を共有しながら進め、処分を決める権限のある党紀委員会に渡す。時期は4月の衆院補欠選挙の前で、さらに総理の公式訪米より前の4月第1週。中身はかなり厳しくなると見ている。都道府県連や安倍派の中堅・若手など、党内からの厳しくやれという声が非常に強い。幹部の中に離党勧告を受ける方もいるのでは。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
この基準で一番重たいペナルティになるのは、金額が圧倒的に多く、これまでの役職も重く、政倫審にも出てこない二階元幹事長では。その次は萩生田前政調会長。参議院では山谷えり子さん。そして、今の安倍派の事務総長クラスで、塩谷立さんや下村さんよりも権勢を振るっていた人たちこそ責任を背負うべきと中堅・若手は見るのでは。また、果たして総理や茂木幹事長に処分をする資格があるのか。総理は大臣規範や政治改革大綱などのルールを破り続けてきた。幹事長の資金移動も使い道を不透明にしており、ある種の裏金化。脱法執行部が脱税議員を厳しく処罰できるのか。
それでも野党支持率は上がらず…共闘の構図を自ら崩す立憲
新美有加キャスター:
FNNの世論調査では、政党支持率は自民党が前回から0.7ポイント下がって24.1%、立憲民主党は前回と変わらず6.6%。「支持政党なし」の回答が3.2ポイント上がり50.4%。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
政治状況としては非常に深刻。自民党の支持率が下がっても野党の支持率が上がらない状況を如実に表している。
反町理キャスター:
追及に次ぐ追及をしていながら、なぜ立憲の支持率は上がらないのか。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
政党支持率では、政府をよく追い詰めたというだけでなく、政権を取ったときにどういう暮らしを保障してくれるのか、安全保障は大丈夫なのかといった安心感も同時に問われている。まずは政治改革の具体的な制度改正でも、自民党に飲めと言う気迫を持ったチームを野党全体で作れるかどうか。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
そこは正しいと思うが、予算委で3月1日の午後に山井議員が、夜には奧野議員が長時間の演説(フィリバスター=議事妨害)を行った。結果、国民民主は財務大臣に対する不信任案について本来賛成するはずなのに反対した。維新も参加せず。立憲が野党共闘の構図を崩してしまったのでは。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
手法については国対同士のすり合わせがやはり必要だった。他の野党の声も聞きながら対応することが、これからますます大事になる。
日本初の女性宰相「上川陽子首相」は生まれるのか
反町理キャスター:
衆議院の3選挙区で4月に補欠選挙が行われる。自民は東京15区に候補者を立てる方向だが、まだわからない。立憲は擁立する方向なのか。また島根では、自民と立憲の対決で共産が出るか出ないかといった状況。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
まず島根はガチンコで戦う。保守王国で弔い合戦という大変厳しい状況だが勝たねばならない。長崎3区は自民党の不戦敗で、野党同士だが維新に負けないように。まずこの2勝をしたい。問題は東京15区で、自民が候補を出さずに、都民ファーストの会を前面に出して後押しする形で来る可能性がある。流動的で何とも言えないが、ここの戦い方は首都圏に全体に影響するのでいい候補で戦ってほしい。野党が多く並び票が分散して、2023年4月の千葉5区の補選のように負けるのは最悪。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
東京15区では小池百合子さんが立候補する可能性がゼロではない。
反町理キャスター:
現職の東京都知事だが。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
東京都知事選挙は7月。空白期間は非常に短くなる。小池さんが推す候補を立てれば自民党東京都連や公明が推薦する話はできており、都連が「小池さんでもいい」と言ったところ、小池さんは「自分は出ない」と。だが真に受ける人は少ない。無所属として出て自民党に復党すれば9月の総裁選には十二分に間に合う。
反町理キャスター:
女性初の総理総裁。自民党では上川陽子外相を念頭にそういう話が流れているが。
新美有加キャスター:
立憲民主党の枝野前代表は、講演で「次の解散総選挙の時の自民党総裁は岸田文雄ではない」「相手は日本初の女性首相だ」と発言。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
自民党内の多くが想定する女性総理は上川陽子さん。支持率も上がり、注目が集まっている。また所属していた宏池会が解散したことも上川さんにはよかった。派閥にとらわれず、他の派閥も推しやすい。
新美有加キャスター:
総裁選があり、勢いそのままに解散総選挙というのは自民党の必勝パターンだが。
野田佳彦 元首相 立憲民主党最高顧問:
これから検察審査会の動きが出て、もっと思い切った捜査がなされた後の自民党の総裁は、どなたもやりにくいのでは。ただ、新しい総裁が出た時に解散されるパターンは嫌。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
だから自民党議員が一番恐れているのは、“岸田さんが”解散すること。僕はやらずに終わっていくだろう、できないだろうと思うが。総裁選はいつの時代も自民党を再活性化する装置。いい悪いは別にして、自民党というのは権力維持政党。そういう知恵は使うだろう。
(「BSフジLIVEプライムニュース」3月18日放送)