2024年2月24日、首里城の世誇殿(よほこりでん)と、琉球新報ホールで開かれた「帰納する音楽会」

演出を手掛けたのは、メディアアーティストとして活躍する落合陽一さん。

日本フィルハーモニー交響楽団による演奏に琉球古典音楽。そして人工知能・AI。落合さんが作り出す新たな音楽と、その魅力について探った。

現代の魔法使いの音楽とは?

「沖縄は年に一回遊びに来ており、高校生の頃から三線が弾けます。工工四(くんくんしー・三線の楽譜)は、僕の中では身近なものです」と沖縄との関りを語る落合陽一さん。

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メディアアーティスト、大学准教授、経営者とさまざまな顔を持ち、最先端のテクノロジーを操る事から“現代の魔法使い”と呼ばれている。

Q.「帰納する音楽会」とは、どんな音楽会ですか?

落合陽一さん:
琉球の音楽と西洋・ヨーロッパから来た音楽が合わさった時に出てくる、微妙に不協和音があり、微妙に不協和音が無い変な感じ。琉球の音楽の自由さがオーケストラの中に組み替えられると、味わい深い展開になるのがいいと思っています

オーケストラによる演奏と琉球古典音楽。

交わる事のなかった2つを融合させる事で生まれるハーモニーに注目した落合さん。

発想の原点には、“文化”に対しての独自の考え方があった。

落合陽一さん:
カルチャー(文化)は、場所によって全然違う。私のラボ(研究所)だったら、ろう者に字幕ディスプレイを作りますが、字幕にしたら手話文化は失われてしまうかもしれない。手話は手話でカルチャーであり、オーケストラはオーケストラでカルチャーです。カルチャーとカルチャーの間に何があるのだろうというのは当事者になってみないとわからないので、足を踏み入れて楽しんでみないとわからない事が沢山あります

演奏者の音の強弱をAIが映像化

異なる文化の融合はもう一つ。

音色に合わせて、リアルタイムで生成AIによって作り出される映像だ。

人工知能・AIが演奏者の音の強弱やメロディーを映像で表現し、視覚でも音を楽しめるというもの。

Q.AIは計算スピードが速いなどという印象があって、想像性・クリエイティブな部分とは離れた印象を持っていましたが…

落合陽一さん:
AIは音楽がだいぶ得意な方だと思いますよ。例えば、ジャズのミュージシャンがいたら、こっちでペラペラと言ったら、プルプルと返ってくる。ツタツタと叩いたら、こっちでチャンチャンと返ってきます。ジャズミュージシャンがやっているのは、(音楽での)会話。ChatGPTと会話できるのに、なんでジャズミュージシャン同士の会話はAIに理解できないのかと思う理由が僕には逆にわからないです

落合さんの技術者としての信条

音楽は耳で楽しむものという常識にとらわれない…
そのキッカケとなったのは、2018年・聴覚障害者のための音楽会であった。

落合陽一さん:
振動で音を感じたり、色で感じたり、楽譜を映像に変換したり、ありとあらゆる事をやってみました

あらゆる課題をテクノロジーを用いて克服する。
落合さんの技術者としての信条があった。

落合陽一さん:
耳が聞こえない人に音楽を届けようと思ってもなかなか届かないので、そのアプローチは上手くない。音楽の楽しみ方の中に、耳が聞えるも聞えないも変わらず入ったほうがアプローチとしては正しいのではないかと思い始めたあたりが重要な転換点です。“耳”で聞かないが“耳だけ”で聞かないになって、“耳だけ”で聞かないが“五感を織り交ぜる”ようになっていった。映像や音、あらゆるものを変換し続けるというプロセスの中でモノを作っていくことをしました

求めたのは文化と文化、デジタル技術の融合の先にある“新しい音楽体験”。

帰納する音楽会の観客:
昔の楽器とヴァイオリンが混ざっていて、こういうのもあるんだと感じて面白かったです

帰納する音楽会の観客:
AIの背景は(映像)初めて見たので、普通のクリエイターの方が作るのとは全然違う、新しいモノに触れたような面白さが新鮮で良かったです

これまでにない演奏会を成功させた落合さん。
終演後に語ったのは、感想よりも次なる挑戦についてであった。

Q.今の心境はどうですか?

落合陽一さん:
「ギリギリうまく動いて良かったな」とだいたいいつも思っています。今年は太鼓がやりたいなと思っていて、太鼓の事をずっと考えています

次はどんな体験を生み出すのか?
現代の魔法使いの挑戦から目が離せない。

(沖縄テレビ)

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