広島駅のビルは2025年春の開業に向け大工事が進んでいるが、駅ビル2階に路面電車が乗り入れるための工事も周辺で行われている。現場で溶けた鉄を鋳型に流し込みレールを溶接する、ちょっと特殊な工事を取材した。
工事現場で溶かした鉄でレールをつなぐ
鈴木崇義記者:
広島駅へと、広島電鉄の電車が通るまっすぐの直線ですが、こちら多くの工事関係者が集まっています
施工業者:
溶けた鉄を鋳型の中に入れて、レールの形に生成する枠です
この溶接方法は、広島電鉄のレール工事では通常使わない“ゴールドサミット溶接”と呼ばれるもの。JRの線路などでは使われている工法で、レールにはめた鋳型の上に「るつぼ」と呼ばれる耐熱容器がセットされた。
鈴木記者:
あ!すごい炎が出ています
流し込まれたのは、2000℃にもなる酸化鉄とアルミニウムを化学反応させたもの。
脱線しにくいドイツ製の溝形レールを溶接
レールとレールを繋ぐ溶接に、なぜ今回、これまで広島電鉄では”使われてこなかった工法”が採用されたのか…。それは全国で初めて、駅ビルの2階に路面電車が高架を通って乗り入れる構造の工事に起因するという。
広島電鉄 駅前プロジェクト推進部・八木秀彰課長:
高架に入る手前の地点は、何らかの要因で広島駅に路面電車が入れないときに、全ての電車が折り返す場所になる。この場所は少し緩やかなカーブになっているので、分岐も緩やかなカーブになっている。日本には緩やかなカーブに対応する分岐がないので、今回ドイツ製のレールの分岐(ポイント)を持ってきてここに設置している
通常の路面電車の線路はNレールと呼ばれるものだが、今回、折り返し地点に設置されるのは広島電鉄で初めてとなるドイツ製の「溝形レール」。
八木課長:
ここが溝のようになっているから溝形レール。車輪が外れにくい特徴がある
このドイツ製のレールを溶接するには、これまでとは違う溶接方法が必要というわけだ。
鈴木記者:
これまで広島電鉄では使われていなかった工法での工事、かなり慎重に行われています
この折り返し地点のほかに、駅ビルに向かう高架部分でも振動や騒音に強いこのドイツ製の溝形レールが敷かれる。
Q:駅前大橋ルートの工事はどれくらい進んでいる?
八木課長:
現時点で約4割の進捗。今年1年は至る所で線路工事が進み、5、6月あたりからは橋脚の上に橋をかけていくので、6月以降は構造物がどんどんできあがっていくのが見える
Q:かなり楽しみ?
八木課長:
そうですね、ワクワクしますね
広島の街の風景に溶け込んでいる路面電車だが、駅ビルの中まで乗り入れるという前例のない工事がこれからヤマ場を迎える。
(テレビ新広島)