3日、伊豆諸島にある神津島の北側でマグロ漁船が座礁。
25人の乗組員のうち、24人は救助されましたが、一等機関士の佐々木正一さん(67)が、荷物を移動させようとして流され死亡が確認されました。
座礁してから救出に至るまでの約7時間に、一体何があったのか。元海上保安庁の職員で、日本水難救済会の遠山純司理事長と共に、残された映像を解析しました。
海からは“不可能” 厳しい条件下の救助
マグロ漁に向かう途中だった漁船「第8福栄丸」。
3日午後5時頃にエンジンが故障。その後、漂流を続け3日午後11時ごろ島の北側で座礁したといいます。
海上保安庁が撮影した映像を見た日本水難救済会の遠山理事長は、“映像で見る以上に現場は危険な状況”にあったのではないかと指摘します。
日本水難救済会 遠山純司理事長:
気象状況が非常に厳しいと言えます。私の海上勤務の経験から言うと、18m/s以上の風が吹いていると思われますし、波も大体4mぐらいはあるのかなと。
映像には、下田海上保安部に所属しているとみられる巡視船の姿もありますが、巡視船が直接救助に向かうことはできなかったのでしょうか?
日本水難救済会 遠山純司理事長:
巡視船から直接行って救助できないのかと思うかもしれませんが、(座礁した場所のような)浅いところには船は直接入ることはできません。行けば巡視船も座礁する可能性があると。それから波が“磯波”で非常に高くなっているので、(巡視船が)転覆する可能性もある。海からの救助は不可能だったといえるかと思います。
船での救助は不可能な状況だったため、座礁から約7時間後、ヘリコプターでの救助活動が開始されました。
日本水難救済会 遠山純司理事長:
(座礁した船の)後ろの方はこれ断崖絶壁になっていますよね、ということは、ヘリによる救助をやる際も機体が安定しない、吹き上げの気流とかがあって。救助作業をする上で難しい状況であったといえます。
救助ヘリは数十mの高さでホバリング。今にも転覆しそうな船の上で、船員たちが待機できる場所も限られていました。
日本水難救済会 遠山純司理事長:
ヘリコプターのピックアップできる場所というのが、漁船のブリッジ(船橋)のすぐ横の非常に限られた狭いスペース。ここからしかピックアップできないことが見られます。つり上げ技術の作業性も困難だったということが言えます。つり上げ作業をする特殊救難隊が、これは本当に「神業」と言っていいと思いますね。
困難な状況の中で行われた救助活動。専門家も「神業」と称する“つり上げ”で、ヘリに向かって乗組員がひとり、またひとりとワイヤーで救助されていきます。しかし、25人の船員のうち救助されたのは24人でした。
仲間の命を守るためか?船外に出て流され…
海に流され亡くなった一等機関士の佐々木正一さん。救助活動が始まる約1時間前の午前4時45分頃、船外で荷物を移動させようとした際、船から海に投げ出されたといいます。
その後、付近の海岸で発見され、病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。
佐々木さんが担当する一等機関士とは、船を動かす機械を管理し、常に良好な運転を維持する役割。そんな佐々木さんが、危険な状況の中でも荷物を移動させようとしていたのは、「転覆を防ぐためだった可能性がある」と専門家は指摘します。
日本水難救済会 遠山純司理事長:
一般的に船のエンジンがストップして、横揺れが激しくなると、船を転覆させないように安定性を保つ必要があります。
そういった場合に甲板上に積んでいる重い荷物が、船体の片方に移動してしまうと、転覆を助長するようなことになると。ですから、巡視船が荒天下で出動するときは、船内の重い物は固縛して移動しないようにしていくのですが、今回想像されるのは、転覆が想定される状況下で重い荷物が片方に移動しないよう、措置しようとしたのではないかなと。
(めざまし8 3月5日放送)