今年5月、50年以上にわたり地域の子供たちの憩いの場となっていた駄菓子屋が閉店する。途中、店を閉じることも考えたという店主の79歳の女性。地域に愛され、そして支えられてきたと振り返る。

79歳一人店主 一番人気はサッカースクラッチ

ハトヤ
ハトヤ
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 仙台市太白区の駅近くの、商店街に面する駄菓子屋「ハトヤ」。この店を一人で切り盛りするのは、斉藤ノブ子さん(79)だ。

斉藤ノブ子さん
斉藤ノブ子さん

 一番好きな駄菓子は「うまい棒」。特に「たこ焼き味」が好きだという。

 どこか懐かしさを感じる店内には、なじみの駄菓子がたくさんあるが、一番の人気はサッカースクラッチ。スクラッチを削り日本が世界の強豪に勝っていれば、その額に応じた駄菓子がもらえるというものだ。

 取材した記者もひとつ買い、スクラッチにチャレンジしたが日本は3失点。イタリアに敗れ、駄菓子をもらうことはできなかった。

夫が亡くなり揺れた胸中 子供たちの存在で...

 1968年「ハトヤ」は玩具店として開業した。当時、仙台市内に玩具店があまり無かったという。しかしその後、テレビゲームの台頭などで玩具の売れ行きが悪化。2004年に駄菓子屋にリニューアルした。

 玩具店から駄菓子屋へ…そんな歴史を歩んできた中で店を続けるか悩んだこともあったという。

 それは1990年、ともに店を続けてきた夫の文雄さんが70歳で亡くなった時だ。ショックで2週間ほど店を閉めることに。それでも再開するに至った原動力になったのは、「地域の子供たちの存在」だったという。

 斉藤さんは当時のことを、「用があってお店に来た時に、子どもが表に2、3人いて、『おばちゃんいつ開けるの?』と言った。子どもの気持ちを考えて、これはまだやらなきゃない使命感みたいなものがあって」と振り返る。

「みんな良い子になって戻ってきてくれる」

 長い間、子供たちの成長を見守ってきた斉藤さん。取材をした2月23日は、祝日ということもあり、親子連れや、2歳から来ていて10年以上通っているお得意さんともいえる高校生の姿などがあった。この日、訪れた男子高校生は、「中学1年生の時から友達と来ていたので悲しい。元気で自分のおばあちゃん的な存在でした」と、「ハトヤ」との思い出を話してくれた。

 斉藤さんは「みんなここから育っていった。いい子になって帰ってきてくれる。またおばちゃんと言って来てくれる。それが一番うれしいですよ」と嬉しそうに話した。

「あっという間」の56年 変わらぬ笑顔で...

 今年で開業56年。体力的な限界も感じ、今年5月に店を閉じることを決めた。

 斉藤さんは「56年だらだらとやってしまったけれど、本当に無駄ではなかった。これなら、いつやめてもいいなと、そういう気持ちで。まだ元気は元気ですけど、やめるにも元気が必要」と、決断に至った理由を話した。

 56年を「あっという間だった」と振り返る斉藤さん。残り2カ月も変わらぬ笑顔で、子どもたちを待っている。

(仙台放送)

仙台放送
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