食卓だけでなく、あらゆる日本食にかかせないノリ。全国的にも有名なのが「有明ノリ」だが、2年連続で「色落ち」被害に見舞われている。有明ノリの歴史的不作に、生産者からは「本当にきつい」などの声が上がっている。
人気ラーメンと相性抜群な「有明ノリ」
福岡市博多区上川端町にあるラーメン店「きりん」。開店直後に、店内はほぼ満席状態になるほどの人気店だ。

48時間かけて極限までうま味を引き出した自慢の豚骨スープに、自家製の醤油だれなどを合わせることで、臭みのないクリーミーな味に仕上がる。
麺は、特注のストレートの細麺。トッピングを加え、至極の一杯が仕上がった。

あふれんばかりの濃厚なスープが麺によく絡んだ「きりん」の看板メニューだ。1日、約300杯が注文されるという。
来店客は「濃厚で、おいしい」、「インスタを見て、なみなみのスープが結構インパクトがあった」と味わっていた。連日、大勢の「きりん」ファンたちが詰めかけ、舌鼓を打つ。
そんな人気ラーメンに欠かせないのが実は「ノリ」だ。

豚骨スープが絡んだ麺との相性は抜群で、追加料200円で有明産のノリを注文できる。
店で一番人気のトッピングメニューだという。

きりん・森永勇総料理長:
有明の初摘みノリ、一番摘みとも言うけど、ノリの養殖場の中で一番最初にとれた一番摘みのノリ。磯の香りが特に強いのとノリの味も濃い
しかし、この有明ノリをめぐって、いま「ある異変」が起きているという。
きりん・森永勇総料理長:
有明ノリは、数が減ったので、「出荷制限がある」と聞いている
倉庫は“空っぽ”…深刻な「色落ち」
取材班は、福岡有明海漁連のノリを保管する倉庫を訪ねた。中を見せてもらうと何もない。

例年であれば、この時期は2万箱ほどのノリで埋まっているはずの倉庫の中は、まさかの「空っぽ」状態だった。

福岡有明海漁連・境真秋業務部長:
まだ今のところゼロです。年間で13億枚(の生産)を目標としているんですけど、1カ月遅れている関係で、3億枚は減るのではないか。こういう状態は初めて
漁連の関係者も頭を抱える異例の事態だ。

生産現場の状況はどうなっているのか?生産業者に同行して、養殖ノリの状況を見せてもらうと、その色は黄土色になっていた。
本来、この時期だと真っ黒に色づいているノリだが、色づきが浅く、全体的に茶色がかっている。例年のノリと見比べると、違いは歴然だった。

ノリ生産業者・西田剛さん:
(Q.さらに色が落ちる?)日に日に落ちている。まだ落ちてくると思う。これ以上落ちると黄色になる

2024年に入って有明海で広がっている深刻な「色落ち」被害。実は、有明海では2023年も、晴天が続いたことで植物プランクトンが最大で基準値の4倍まで増え、記録的なノリの不作に苦しんだ。
ノリ生産業者・西田剛さん:
(2年連続でこの状況は)本当にきついですね。うちも従業員がいるので、その子たちにも悪い気持ちです。色落ちの原因としては、栄養がない。植物プランクトンが全然、減らない
2023年同様に植物プランクトンが増えたことで起きた色落ち被害だが、西田さんによると、試験場などに聞いてもプランクトン増加の原因はわからないという。

大半のノリが色落ち被害にあっているという現状に、西田さんは「売り上げ的には、ちょっとまだなんとも言えない。買い付けをしてくれる人たちが黒いノリを待ってくれていると思うんですけど…、生産者としては、こういったノリなので恥ずかしいばかり」と頭を抱えている。

しかし西田さんは、ノリの病気を防ぐために色落ちした状態でも収穫をしないといけないと話す。
ノリ生産業者・西田剛さん:
食べてくれる方に申し訳ない気持ちですね。有明海は長崎・熊本・福岡・佐賀でノリをとっているので、その4県で力を合わせていきたい
歴史的不作の影響は食卓にも
2年連続の不作で「もはやこれは一時的なものではない」という声が聞かれるが、食卓への影響も避けられない。それがノリの値上げだ。
有明海の養殖ノリは国内最大の産地のため、昨シーズン、歴史的な不作となったことで2023年6月にノリの主要メーカーが一斉に小売価格を上げた。例えば「はごろもフーズ」は、きざみのりを220円から262円に値上げした。
そして、今シーズンも福岡の有明海漁連だけで3億枚ほど減る見通しで、2024年もまた、スーパーに並ぶノリが値上げとなる可能性もある。
まとまった雨が降れば、ノリの生育状況はある程度改善されるということで、今後、海の栄養分が潤うことを期待するばかりだ。
(テレビ西日本)