宮城県白石市で、地域を盛り上げようと、いわゆる“痛車”のタクシーが運行している。一人の運転手が、自分の趣味を基に作りあげた車両は、運行から今年で10年。この度、新デザインに改装され、認知度も高まってきている。
10年前から “推し”を乗せて走る街

ボンネットに描かれた緑色の髪の少女。宮城の名物「ずんだ餅」をモチーフにした女子高校生のキャラクター「東北ずん子」ちゃん。
そして、サイドドアに描かれているのは、青森のイタコをモチーフにした、ずん子ちゃんの姉「東北イタコ」と、秋田のきりたんぽをモチーフにした、ずん子ちゃんの妹「東北きりたん」。


この一際目を引く、”痛車”。実は客を乗せて街を走る「タクシー」だ。
このタクシーを運転するのは、宮城県白石市の菊地タクシーに所属する、田中健一さん(54)。

田中さんは、自分の好きなキャラクターで街を華やかにしたい、地域を盛り上げたいと、自身が乗る車両に、東北ずん子ちゃんを描いてきた。
東北ずん子ちゃんとは、東日本大震災からの復興を支援しようと、仙台市に本社を置く制作会社が作ったキャラクター。東北6県に本社がある企業は、無料でキャラクター素材を使うことができるという。

街の人からは、「普通のタクシーに乗るなら、ずんこちゃんタクシーに乗りたい」「これを見て白石に来る人もいると思う」などと好意的な声が聞かれた。
20万円の負担 それにも勝る“推し”の愛
元々田中さんは、「ずんこちゃん①号」を2014年から10年間運行していたが、老朽化のため廃止。

今回新たに完成した2号に、田中さんは、「白石と一緒にPRすると考えると、キャラクターと白石の風景をうまく融合すれば、もっと可能性があるのでは」と考え、これまで東北ずん子ちゃんしか描かれていなかった車両に、白石市の観光名所である白石城や武家屋敷を取り込んだ。

かかった費用およそ20万円は田中さんの自己負担。だが、田中さんは「お金を出したかいがあった。お金には代えられないものがあるので、宝物と思って大事にしていきたい。ずん子ちゃんに乗っている自己満足感が大きくて、すごく幸せになる」と、溢れる“推し”への愛を口にした。
「市のPRの一翼に」寄せる期待

会社の車両にラッピングすることを許可した菊地タクシー専務の菊地法文さんは、「ずん子タクシー=菊地タクシーみたいな感じ、『見に来たり乗ってみたりしたい』という方もいてプラスになっていると思う」と、田中さんの背中を押す。
白石市の山田市長も「市のPRの一翼を担っている」と話すほど期待をかける、ずん子ちゃんタクシー。

田中さんは、「東北三姉妹は自分の家族みたいなものなので、一緒に仕事をしている、そんな思いになる。これで終わりじゃなくてもっと工夫をして、皆さんに喜んでもらえるような車を作っていけたらと思う」と、笑顔で話した。
白石愛、そして東北ずん子愛あふれる田中さんの新車両。これからも街を盛り上げ続ける。
(仙台放送)