路線バスの運転手不足が、全国で深刻な状況になっている。ことし4月には、法改正でさらに状況が悪化するとも予想されるが、路線バスの未来は一体どうなるのか。

■大阪市内では1月から多くの路線が運休

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大阪市内各地で路線バスを運行する「大阪シティバス(=かつての大阪市営バス)」。多くの人が利用するバスで、いま問題が…

記者リポート:時刻表によると11:31にバスが来る予定ですが、時間になってもバスは来ません

よく見ると時刻表の隣にバスの減便を知らせる張り紙があり、大阪シティバスは1月から、大阪駅~十三や、難波~住之江区などを結ぶ13路線59便を運休している。

バス利用者:12時23分のバスに乗りたかったんですけど、運休になってて、あと20分くらい待たないと…。ご飯食べてこようかなって思ってます

バス利用者:バスの中で知らない人としゃべってる。『少ないですよね』って

バス利用者:大阪市内は地下鉄もあるから利用できるけど、僕ら歳とったら階段がえらい(つらい)んですよ

大阪シティバスによると、約30人の運転手がインフルエンザなどにかかったことが理由だという。ただ、バスの運行を維持するための人材確保は、今後さらに困難になっていくことが予想されている。

大阪市 横山英幸市長:利用者にご不便はお掛けするが、できるだけ早く便が戻るようにしていくと、バスの方からも報告を受けている。 バスの運転手不足は長らく課題。戦略の中で人材確保は進めていく

■長野では観光バス需要にこたえるため路線バスを運休する事態に

去年12月、大阪府南部で運行する「金剛バス」が、人手不足などを理由にバス事業から撤退。阪急バスでも廃線や減便が行われた。

さらに、バス業界が抱えている「2024年問題」。ことし4月から法改正により運転手の労働時間などの規制が強化されるため、運行維持のためにはさらに人手が必要な状況になり、運転手不足はより深刻化すると予想されている。

長野市内を中心に運行している長電バスでは、1月から路線バス182便を日曜日に運休すると決めました。 志賀高原方面行きの観光バスの利用客は、コロナ前に比べ3割以上増加。運転手不足の中で、日曜日の観光バスの需要にこたえるため、路線バスを運休させる決断をした。

引退のかかったディベート大会へ向かうはずだった高校生。運休が始まった日のバス停で…
地元の高校生:やっちゃいました、日曜日ですよね。ヤバイ、完全に忘れてた。タクシーで行くしかないです

バス会社は、苦渋の決断を迫られている。
長電バス乗合バス担当 小林修課長:やっぱり多少でも会社の利益になるような仕事を中心にしていかなければいけないこともありますんで。(路線バス日曜運休は)苦渋の選択って感じになります

■運転手不足の救世主?「19歳の運転手」誕生

一方、京都市バスの一部の路線で運行を担うMKグループには、未来への希望があった。

ういういしい青年。去年11月に入社した新人ドライバー・中出丈さん。京都市バス最年少となる19歳だ。2月8日から路線バスでハンドルを握っている。 これまで大型第二種自動車免許には普通免許を「3年以上」保有することが必要だったが、おととし「1年以上」に緩和された。その結果、19歳の中出さんもバスの運転免許を取得できたのだ。

京都市バス運転手 中出丈さん(19):学生のころに京都から長野県まで行ったときに、観光バスの運転手さんがかっこいいな、すごいなと思って目指しました。ハンドルさばきとか、普通のことやと思うけど普通のことが一番かっこいいです

憧れだったバスの運転手。大先輩たちに教わりながら、日々成長している。
中出丈さん:定刻でも走れるようになってきました
先輩運転手:おー、やるやん、やるやん
先輩運転手:気持ちの余裕や。焦ったら負け

深刻な運転手不足で苦境にたたされるバス業界。路線の存続のためには、中出さんのような、若い力が必要不可欠だ。

MK株式会社 横大路営業所 加藤勝久所長:懸念されております2024年問題におきまして、ち密な管理をしながら、いま何とか回せている現状です。実際、19歳の彼と一緒に仕事させていただいて思ったのは、まだまだいけるよ、諦めたら終わりだと思います

たくさんの人を、安全に目的地に届ける大事な仕事。中出さんは、この仕事に誇りをもって、運転技術を磨いている。

中出丈さん:乗り心地を良くして、観光バスのように乗っていただいて、お客さまにはありがとうございますをちゃんと伝えようかなと思ます

■バス運転手確保のためいろんな取り組みが行われている

10代のバス運転手が誕生したのは、バス業界にとってうれしいニュースだ。人材確保のためにいろんな取り組みが行われている。

「若者」
大型第二種自動車運転免許の取得に関する規制が緩和され、中出さんのような19歳のバス運転手も可能になった。

「宣伝」
姫路市の神姫バスは、運転手募集の一環として、現役のバスの運転手を前面に出したラッピングバスを走らせている。SNSやTikTokなども積極活用し、運転手が外国人の乗客とやり取りしたりするおもしろ動画を配信している。

「女性」
女性をターゲットとした運転体験会が各地で開かれ、子育て中の女性を積極的に募集しているところもある。

女性のバス運転手が、もっと広がりを見せる可能性はあるのだろうか?
関西テレビ 加藤報道デスク:全国のバスドライバーで女性は2%しかいないそうです。だけどワークライフバランスの点で女性にメリットがあるんです。女性に限らず、男性でも同様ですけど、バスは基本定時で動くので、時短勤務など『何時から何時まで働きます』としやすいんです。例えばお子さんを育てながら少し余裕がある方が働くこともできます。
  課題はやはり男性ドライバーが圧倒的に多くて、男性社会なんです。女性のための更衣室や休憩室が行き届いていないところもあるので、これからそういったところが改善されるといいですね。
 バス業界だけじゃなく、どの業界も人手不足で、女性の力をどんどん使えるように、環境を整えていくことが大事なんじゃないかと思います

バス会社が努力している中で、人手不足に拍車をかけるかもしれないのが「2024年問題」。ことし4月1日から適用される法律によって、残業が制限され、さらなる人手不足になる可能性がある。日本バス協会によると、この影響で、いまの路線を維持するには2万1000人のドライバーが不足するという試算もあり、すでに全国で路線の減便が相次いでいる。さらに4月から減便などを行うと発表しているバス会社が多くある。

バス業界はどうなってしまうのか。流通経済大学の板谷和也教授によると、数年でいまの形の路線バスはなくなる可能性があるという。 板谷和也教授は、「残念ですが、利用者はそう心構えをしておくべき。待遇・働き方・高齢化など課題解決は難しく、小型バスや乗用車などを使い、限定的な移動になっていくのでは」と言う。

「路線バス」がどんなところでも走っているのは当たり前ではなくなり、皆さんが生活に合わせた新しい交通手段を考えていく必要があるのかもしれない。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年2月14日放送)

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