島根県の「石見神楽」など、各地に伝わる「神楽」の面を集めた展覧会が東京で開かれた。
石見神楽の「面師」、面づくり専門の職人が声をかけ、合わせて4カ所の神楽どころの若手職人が、神楽の道具「面」のアートとしての魅力を発信した。

“神話”の世界にいざなう「神楽面」

表情豊かな約50枚の神楽面。

この記事の画像(11枚)

福々しい表情の「えびす」に「おかめ」、「ひょっとこ」。取り巻きには「おきな」や「鍾馗(しょうき)」、「般若」など鬼のようなこわもてたち。

「福は内、鬼は外」節分にちなんだ演出だ。

東京・銀座のギャラリーで開かれた展覧会「面の界-神楽面が表現するかたち-」。

島根・江津市の神楽面職人の惠木(えぎ)勇也さんが、これまでに知り合った各地の若手の職人に声をかけ、作品を持ち寄った。

100点を超える「神楽面」を展示
100点を超える「神楽面」を展示

会場には100点を超える神楽面が並んだ。

展覧会を企画した神楽面職人の惠木勇也さんは、「面一枚を境に自分と違うものになったり、新たな世界へ時空を超えたりできる。面を見たお客さんは神話の世界にいざなわれる」と、展覧会のコンセプトについて話した。

20代で“面職人”へ 若手集め企画

江津市で生まれ育ち、幼い頃から地元の社中で神楽を舞った惠木さんは、20代で会社勤めを辞め、面職人に転身した。

今回の展覧会は、自身の工房を立ち上げて10年になるのに合わせ、初めて企画した。

出品したのは、石見神楽のほか、宮崎の「高千穂神楽」、宮城の「南部神楽」、そして関東一円に伝わる「里神楽」の職人たち。いずれも30代から40代の若手だ。

道具ではなく“アート”としての魅力も

一口に「神楽面」と言っても、地域によって形や表現はさまざまだという。

石見では和紙を貼り合わせて面の形をつくるのに対し、宮崎・宮城・関東では木を彫り、削って形をつくり、仕上げていく。

こうした素材の違い、そして、神楽を育む各地の風土の違いも面の表情に個性を加えるという。

東京では珍しい「神楽面」に絞った展覧会。

惠木さんら職人たちにとって、初めての挑戦だったが、「全国にこういう神楽面があることを初めて知ったという人もいたのがうれしかった。素材の違いでこんなに表情が違うと驚いた人、新しい発見をした人が多かった」と、職人の思いが届いたことを喜んだ。

ほかにも、会場には、音と光で演出するデジタルアートや、青森の伝統芸能「ねぶた」と融合したアート作品も展示され、「道具」として作られた神楽面の新たな魅力を引き出した。

惠木さんは、「神楽面をひとつの工芸品、アートとして興味を持ってきてもらった人もたくさんいたので、神楽から離れたところで面の魅力が伝わったのでは」と手応えを感じていた。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

鳥取・島根の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。