テンポの速い囃子(はやし)に合わせて、絢爛(けんらん)豪華な衣装をまとって舞う「石見神楽」。古くから地元の人に親しまれ、観光客をも魅了してやまない島根県西部の伝統芸能だ。その楽器や面、舞を収録したDVDなどを扱う専門店が、島根・松江市にオープンした。

島根県は東西に長く、松江市など県東部の出雲地方と県西部の石見地方では、風土や文化も大きく異なる。「石見神楽」になじみの薄い出雲地方にあえて構えた専門店を取材した。

自称「神楽の変態」が開いた専門店

10月29日、松江市の中心街・殿町に「憩処 神楽道(いこいどころ かぐらどう)」がオープンした。

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オーナー・松山司さんの本業は塗装業だ。自称「神楽の変態」というほどの神楽好きで、この店も「ただ単純に石見神楽が大好きすぎて作った」そうだ。

店内には、様々な「石見神楽グッズ」が所狭しと並ぶ。お囃子に欠かせない笛や、職人が手作りした面などを取りそろえるほか、中国地方各地で行われた神楽公演の模様を収録したDVDも並んでいる。神楽が「好きすぎて」オープンした店にふさわしいマニアックなラインアップだ。

さらに、豪華な神楽衣装の生地の端切れで作ったトートバッグやキーケースなども。普段使いできるアイテムで、神楽を身近に感じることができる。

石見神楽との出会いは小学生の頃

憩処 神楽道オーナー・松山さん:
小学校の時、初めて石見神楽を見て、何かグサッとくるものがあった

松山さんは島根県東部の出雲市出身だが、小学生の頃、江津市の「都治社中」の迫力ある舞に魅了され、石見神楽のとりこになった。今でも、秋祭りの時期には、毎週欠かさず県西部に通い、石見神楽を鑑賞している。

商売は“度外視” 松江から神楽の感動を

松山さんは、この神楽専門店の開業資金として約150万を投じたが、商売は度外視のようで、「勝算はほぼない」と話す。
出雲地方で石見神楽グッズの需要は見込んでおらず、あくまで趣味の延長線上だという。

憩処 神楽道オーナー・松山さん:
石見神楽に触れていただき、本物を見ていただきたい。神楽談義を楽しみにお店に寄ってもらえるような、何回来てもワクワクするお店を目指している

「石見神楽」の感動を出雲地方の人にも…。
この店が神楽の本場・石見地方に足を運ぶきっかけになればと、“伝道師”として、松山さんは遠く松江からその魅力を発信していく。

(TSKさんいん中央テレビ)

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TSKさんいん中央テレビ
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