24時間営業の無人のスポーツジムやオンラインのヨガのレッスンなどの契約トラブルが多く起きている。

スポーツジム、フィットネスクラブ、パーソナルジム、ヨガ教室などで、例えば、「割引や特典のつくキャンペーンを契約したが、解約を申し出ると違約金を請求された」「解約手続きをしたはずが、料金の引落としが続いていた」といったものだ。

全国の消費生活センター等に寄せられた相談件数は、2023年度が3796件。国民生活センターは1月24日、契約トラブルにあわないよう注意を呼び掛けた。

なお2020年度は7317件と大幅に増加しているが、これは新型コロナウイルス流行の影響でスポーツジム等の退会や休会等に関する相談が多く寄せられた結果とのことだ。

スポーツジム等に関する相談件数の推移(画像提供:国民生活センター)
スポーツジム等に関する相談件数の推移(画像提供:国民生活センター)
この記事の画像(4枚)

相談事例の大きな特徴は4つ。

・利用開始前など早期の申し出であれば無条件で解約できると思っている消費者が多い。
・消費者が解約の希望を伝えたものの、正式に解約できていないまま料金の引落としが続く。
・体験やお試しプランの終了後に契約が自動更新されることについて消費者が認識していない。
・無人のスポーツジムやオンラインレッスンについて解約等の手続きや問い合わせをしたくても連絡が取れない。


具体的には、こんな事例があったという。

〈事例1〉ピラティスの1年間継続コースの契約をして、利用開始前に解約を申し出たが、違約金を請求された。

友人とピラティスの無料体験に行き、2か月間は無料でその後月額が1万円以上に上がる1年間継続の契約を勧められた。途中で解約する場合は違約金2万5000円がかかるとの説明も受けた。契約を迷ったが、友人も入会したので契約した。

コースは来月から始まる。帰宅後によく考えると月額1万円以上も支払えないと思い、店舗に解約を伝えると、「コース開始前でも2万5000円の違約金を請求する」と言われた。違約金を支払わずに解約したい。(2023年6月受付 20歳代女性)

〈事例2〉1年半前にスポーツジムを解約したはずが、クレジットカードから料金の引落としが続いていた。

約2年前、1か月間3000円で通い放題というフィットネスクラブの体験キャンペーンのインターネット広告を見て来店。2か月間の体験後3か月目以降月額1万8000円の通常料金となるプランをクレジットカード決済で申し込んだ。1か月後、受付の担当者に解約を申し出て、承諾されたと思った。

先月、クレジットカードの利用明細を確認すると、解約申し出の翌月から毎月1万8000円が引き落とされていた。事業者にメールで事情を伝えて返金を求めると、「解約を申し出た際に、所定の書面が提出されていなければ返金はできない」と返事があった。そもそも私はその書面を受け取っていない。利用していないので返金してほしい。(2023年8月受付 30歳代女性)

こうしたトラブルに対し、国民生活センターは以下のようにアドバイスしている。

〈1〉契約する前に以下の点に気を付けましょう
・解約時(休会時・退会時)の連絡先や精算方法、プランの期間等について確認しましょう

スポーツジム等の契約に限らず、契約は当事者間の合意や規約の内容に従うこととなります。
解約時(休会・退会時)の連絡先や精算方法等について、規約等の内容を認識していなかったことにより後々トラブルになることがないよう、契約前に必ず目を通すなど、契約内容(解約時のことを含む)をしっかり確認しましょう。

また、割引や特典がつくキャンペーンの契約など、プランによっては一定期間契約を継続することが条件となっている場合があります。所定の期間の途中で解約すると、違約金を請求される場合があるため、契約前に確認しましょう。特に申し込みがインターネットに限られている場合などは、スタッフから直接説明を受けることができないため、より一層の注意が必要です。

・体験やお試しプランの場合、自動更新の有無等について確認しましょう
体験やお試しプランに申し込む場合は、通常プランへの自動更新の有無や契約変更の申し出期間等を確認し、望まぬ契約につながることがないようにしましょう。

〈2〉解約するときは解約の手続き方法や申し出期間を十分に確認しましょう
消費者が解約したつもりでも、正式な解約手続きが済んでおらず、スポーツジム等を利用していないのに料金の引落としが続いていたケースがみられます。解約する際は、規約等で解約に関する規定をよく確認したうえで行いましょう。

解約手続きについて、いつ、どのように行ったか、事業者とのやりとりなどの記録を残しておくと安心です。また、料金の引落としが止まっているか、銀行口座やクレジットカードの利用明細を確認しましょう。

〈3〉事業者と連絡が取れない場合は複数の連絡手段で問い合わせましょう
無人のスポーツジムや店舗がないオンラインレッスンの場合で、事業者と連絡が取れないときは、電話・メール・サイト上のフォーム等、複数の手段で問い合わせましょう。また、事業者のホームページ等に消費者対応の状況についてお知らせが出ていることもあるため、適宜確認しましょう。

スポーツジム等の契約トラブルにあわないために(画像提供:国民生活センター)
スポーツジム等の契約トラブルにあわないために(画像提供:国民生活センター)

ちなみに、スポーツジム等に契約している人の割合は2022年度のデータでは、全体の約7割が女性で、年代別では40歳代が最も多かった。

契約当事者の年代・性別件数(画像提供:国民生活センター)
契約当事者の年代・性別件数(画像提供:国民生活センター)

これからジムなどに通うという人は特に気を付けていただきたい。では、他にどんな事例があるのか? また、こうした被害に遭った場合、全額返金はしてもらえるのか?

国民生活センターの担当者に詳しく話を聞いてみた。

通いやすいジム等が増えている

――スポーツジム等の契約トラブルが増えた理由はどんなことが考えられる?

従来の大型クラブと違い、月額制の安い料金の24時間制のスポーツジムやオンラインヨガなど通いやすいものが増えていることが考えられます。


――他にどんな事例がある?

〈事例3〉オンラインヨガ教室の無料お試しキャンペーンに申し込んだら、通常プランに自動更
新され、月会費が引き落とされていた。無料登録のみのつもりだったので、返金してほしい。


オンラインヨガ教室のインターネット広告を見て、無料お試しキャンペーンに申し込んだ。サイト上の規約等は確認していない。新規会員登録をした際にクレジットカード番号を入力したが、料金が発生するという認識はなかった。

ところが、先日カード利用明細に先月分の月会費として1万円の請求があった。遡ると先々月も半月分として5000円が決済されている。お試しの期間も含めて、1回もレッスンを受けていない。「無料登録のみのつもりだったので、返金してほしい」と事業者にメールを送ったが、「キャンペーン期間終了後は自動的に通常プランに移行するとサイトに記載している。返金はできない」と返信がきた。納得できない。(2023年6月受付 30歳代女性)

〈事例4〉スマートフォン上で手続きを行うスポーツジムの契約をしたが解約できない。事業者
に電話しても繋がらず、店舗で聞くこともできないため困っている。

インターネット広告をみて、格安のスポーツジムを申し込んだ。全ての手続きをインターネット上で済ませるシステムで、店舗にスタッフは誰もいない。入会から3か月目に入り、都合によりやめたくなった。

事業者の公式ホームページには、解約する場合はスマートフォンで手続きするよう案内が出ている。指示のとおりに操作し、必要記載事項も全て入力したが、途中で画面の操作ができなくなり、先に進めなくなってしまう。事業者の電話番号へ電話しているが繋がらず、無人店舗なのでスタッフに直接聞くこともできない。このままでは支払いが続いてしまうので、解約手続きをしたい。(2023年8月受付 60歳代男性)


――特に多いトラブルはどんなもの?

多いのは、解約の際のトラブルです。事例1のように、無条件でいつでもやめられると思っていたところ、実際は解約金・違約金が発生する、もしくは解約金・違約金が思っていたよりも高額だったというケースです。また、事例2のように、解約を担当者に伝えたけど、解約できていなかったものも一定数見られます。

ほとんどのケースがクーリングオフできない

――女性が7割と男性より多い理由は?

スポーツジム等に通う目的は、ダイエットなど痩せるためという方が多いです。そういったことが関係しているのかもしれません。


――契約前に解約の手続き方法も確認しておくべき?

生活が変わるタイミングなどで通えなくなってしまうことも考えられますので、事前に確認しておいたほうがトラブルは未然に防げると思います。


――説明を読まずに同意ボタンを押してしまう消費者も良くない?

対面の契約であれば、書面を見る場合もありますが、インターネットなどの契約では自分で確認して申し込んだかどうかがポイントになります。それを承諾した上で契約したことになってしまうので、トラブルになった時、自分の主張を伝えるのが難しくなります。


――紹介されている事例の場合、全額返金は難しい?

一部を除き、ほとんどの場合が、クーリングオフの適用ができません。事例1の場合、契約をしているのでそこで費用はかかってくるかと思われます。事例2のような場合、通っている分はかかってしまうため、できて減額交渉かと思われます。



こうしたトラブルが起きた際、全額返金はほとんどの場合が難しいようだ。トラブルを避けるためにも、国民生活センターのアドバイスなどを参考にしてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。