スマートフォンやタブレット端末の普及といった、デジタル機器の使用時間の増加が一因と考えられる子どもの視力低下は、鹿児島県内でも例外ではない。
その実情や子どもの目を守るための取り組みを取材した。

裸眼視力1.0未満の小中高生 過去最多

「お子さんの視力は今、どのくらいですか?」と、鹿児島市で聞いてみた。保護者からは「0.6とかですね。ゲームと学校から持って帰ってくるタブレットやっている」、「小学校2年生の子が視力がすごく悪い。小さい頃からテレビゲームをさせたのが良くなかったと思っている」といった声が聞かれた。

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今、子どもの視力に異変が起きている。国が2023年11月に公表した、裸眼視力が1.0未満の割合は小学生が約38%、中学生が約61%、高校生が約72%といずれも統計開始以来最多となっている。

鹿児島県内でも子どもの視力の低下が進んでいる。約800点の眼鏡を扱う鹿児島市内の眼鏡店では、客全体の約3割が小中高校生だという。

光学堂 アミュウィー店・堀脇拓店長:
授業中に(黒板の文字などが)見えづらくなったとか、小中学生が相談に来る人が多い。「近視」「乱視」という人が基本的に多い

デジタル機器の長時間使用に注意

子どもの視力が低下する1つの原因として国が挙げるのが、デジタル機器の影響だ。鹿児島市の宇宿うのき眼科を取材すると、多くの子どもたちが診察に訪れていた。

目の診察をする宇宿うのき眼科・鵜木滋子院長
目の診察をする宇宿うのき眼科・鵜木滋子院長

2023年から「視力が落ちた」と診察に来る子どもが急激に増えているという。

「小学4年生の時から悪くなっていった」、「裸眼で0.06、0.05。1年くらい前に急に悪くなって近視ですね」などと話す患者。その多くが「近視」と診断されている。

宇宿うのき眼科・鵜木滋子院長:
学校の検査で「去年まで(判定が)AだったのがBになりました」というのは、普通にゆっくり下がっていると思うが、「急にCになりました」とかは今までいなかったという印象

通常、目に入ってきた光は眼球の一番奥の網膜で一点に結ばれる。そうすることで、人ははっきりと物を見ることができる。しかし、近視の場合は遠くの物を見たときに、光が網膜の手前で結ばれるため、ぼやけて見えてしまう。
遺伝的な要素や生活環境が要因と考えられる近視だが、デジタル機器の使用方法も、そのリスクを高めているようだ。

宇宿うのき眼科・鵜木滋子院長は「長い時間、近くを見る調節をずっと強くかけているという状態が目に負担をかけて、そのせいで『近視』が進むと言われている」と解説する。

スマートフォンや携帯ゲーム機はもちろん、今や学校の教育現場でもタブレット端末の使用が当たり前になった。手元にあるデジタル機器を長時間見ることで近視のリスクも高まっている。

“目の距離を意識させる”取り組み

そんな中、子どもたちの視力低下を防ぐため、独自の取り組みを行っているのが、2年前から授業にタブレット端末が導入された鹿児島市立明和小学校だ。

全校児童約380人の鹿児島市立明和小学校は、タブレットを使う授業の中で、目の距離を意識させるため、学校独自で考えられた体操「グー、チョキ、パー」の指導を行っている。
タブレット端末を使う姿勢と、目の距離を整えるために考案され、約1年前から始められた。

「グー」は、机と自分の間に「グー」を1つ作り、机との間に距離をとる。

「チョキ」は、両手のチョキで机の天板を挟む。これにより腕が直角に曲がり、タブレットを持つ姿勢ができあがる。

「パー」は、両手でパーをつくって縦に並べ、タブレット画面と目の距離を30cm離すことを児童に意識させる。

さらに、授業の終わりに先生が「3つの20をしてから問題を出したいと思います」と指示すると、児童が一斉に遠くを見つめ始めた。実はこれも視力対策の1つだ。

タブレットを「20」分以上見た後に「20」フィート(6メートル)以上先を「20」秒以上見ることにしていて、目を休ませることを狙いとしている。

児童も「家でも姿勢をよくするために取り組んでいる」、「インターネットを使った後に体操がいきている」と話していて、習慣が定着していることが感じられた。

明和小学校・井上貴文校長は「始めて1年ぐらいなので、際だった成果というところまでは至っていないが、子どもたちや保護者に意識付けという面では、効果を発揮する取り組みではないかと思う」と話す。

対策を進めている明和小学校だが、実は裸眼視力が1.0未満の児童の割合が45%と全国平均の38%を7ポイント上回っている。井上校長によると「新たな『目の健康』に効果があると言われている体操があるのでまた取り組んで実践したい」ということで、さらなる対策が検討されている。

デジタル化で急速に変化する子どもの生活環境。その影響から子どもたちの目を守るために保護者、学校など周りが気配りをすることが重要といえそうだ。

(鹿児島テレビ)

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