フランス・パリのルーブル美術館で、環境活動家の2人がレオナルド・ダ・ヴィンチの名画「モナリザ」にカボチャスープをかける騒ぎがあった。幸い「モナリザ」はガラスで守られており、無事だった。活動家たちは、食料の供給システムに関する気候変動の影響を訴えていた。

環境団体による“過激な抗議行動”

ルーブル美術館で28日、環境活動家2人がレオナルド・ダ・ヴィンチの名画「モナリザ」に向かって、スープをかける騒ぎがあった。

「モナリザ」にスープをかける環境活動家(Riposte Alimentaire)
「モナリザ」にスープをかける環境活動家(Riposte Alimentaire)
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「モナリザ」に駆け寄った2人の環境活動家は突然、スープをかけ、「どっちが大事?芸術か、健康で持続可能な食料か」と大声で訴えた。

「どっちが大事?芸術か、健康で持続可能な食料か」と大声で訴えた環境活動家たち(Riposte Alimentaire)
「どっちが大事?芸術か、健康で持続可能な食料か」と大声で訴えた環境活動家たち(Riposte Alimentaire)

地元メディアによると、2人はその後拘束された。「モナリザ」はガラスで守られ無事だったという。

環境活動家のグループはSNSで、気候変動などにより現在の供給システムでは、深刻な食料不足にさらされていると主張している。

多くの人々が見学するなか、環境活動家たちがモナリザにかけたオレンジ色の液体は、ルーブル美術館によると、カボチャスープだったという。なぜこのタイミングで、そしてなぜ、カボチャのスープが使われたのか。

スープをかけた女性2人は、環境団体「食品の反撃」のメンバーで、健康で持続可能な食料を手にする権利を主張した。しばらくすると職員らが黒いついたてを持って現れ、2人を見学客から隠した。

モナリザは、1950年代に見学者から酸を欠けられて以来、ガラスケースに入れられていていた。ルーブル美術館では、すぐにかぼちゃスープを拭き取り、事件から1時間後には公開が再開されたという。モナリザは、2022年にもクリームケーキを投げつけられており、スタッフも手慣れた様子で対応していたように見える。

今回の過激行為の背景には、今フランスで起きている、ある出来事が関係しているとみられる。

高速道路を封鎖する数多くのトラクター。26日、27日に行われた、フランスの農家の人たちによる、EUの環境規制の強化に対する抗議活動の様子だ。

EUは農薬の使用を減らすことや、農地の一定割合を休耕地にして環境を守る政策を打ち出している。EU側は、環境規制を強化しつつあるが、これにより農家の経営環境が厳しくなっていて、フランス政府も規制緩和に向けて対応せざるを得ない状況になっている。

環境団体側は規制の緩和には反対であり、今回はモナリザにカボチャスープを投げつけて、抗議したのではないかと見られている。

「環境テロリズム」批判高まるが…

2023年10月には、ロンドンのナショナルギャラリーでも、ゴッホの名作「ひまわり」に、若い女性の環境活動家らが缶詰のトマトスープをぶちまけた事件があった。

この時は有名な食品メーカーの缶詰を投げつけていて、食品の大量生産に対する抗議だった。こうした農業政策や食品産業への抗議活動は激しさを増している。

過激な行動が目立ち始めたのは、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが注目を集め始めた2018年頃からだ。特にヨーロッパでみられる動きで、若者の参加者が目立つ。そこには、古い世代の政治家や官僚が、真剣に環境問題を考えていないといういらだちが感じられる。

こういった行動は「環境テロリズム」とも呼ばれ、批判は高まっているが、環境問題の深刻化と共にますます増えることが考えられる。
(「イット!」 1月29日放送より)

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