年末(23年12月)、長野県の阿部知事は県の人口が近く200万人を割り込むとの見方を示した。一因として挙げたのが若い女性の東京圏流出。男女比の不均衡によって少子化が進んでいるという。もう信州には住まないのか、新成人に本音を聞いた。

再会を喜ぶ新成人。7日、長野市芸術館で行われた合同成人式には700人余りが参加した。いつも通りの光景だが、「人口減少」がさらに進めば、これも様変わりしてしまうかもしれない。

9地区合同の成人式(7日・長野市)
9地区合同の成人式(7日・長野市)
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長野県の人口「200万人割れ」目前

阿部守一知事:
「1月1日、あるいは2月1日現在、いずれかの段階で、長野県人口200万人を下回るという形に。問題を県民の皆さまと共有し、人口減少・少子化に立ち向かっていかなければいけない」

阿部知事は年末の会見で、近く県の人口が「200万人割れ」するとの見方を示した。

阿部守一・長野県知事(12月28日)
阿部守一・長野県知事(12月28日)

移住者は多いが、人口減少の歯止めかからず

12月1日現在の人口は200万1512人。2001年をピークにこの20年余り減少を続け2050年には158万人台になると推計されている。

長野県は移住先として人気の県。2022年はリモートワークの普及などで、転入が転出を3000人余り上回った。しかし、少子化はそれを上回るペースで進み人口減少に歯止めはかかっていない。

長野県の人口の推移と推計
長野県の人口の推移と推計

原因は… 婚姻数、出生数が減少

背景として挙げられるのが婚姻数・出生数の減少。婚姻数はピークの2000年は1万3405件だったが、2022年は45%減の7288件。

2022年の出生数は過去最も少ない1万2274人で、こちらも20年で4割減っている。

長野県内の婚姻数
長野県内の婚姻数

これらの一因として知事は…。

長野県・阿部守一知事(12月28日):
「東京圏へ地方から女性が流出し続けていると言われています」

長野県内の出生数
長野県内の出生数

若い女性「流出」多く、男女比が不均衡に

県の人口異動調査によると、若者、特に女性の東京圏流出が多くなっている。
2022年の転出超過は18歳~29歳で見ると、男性1852人に対し女性は300人多い2152人。

「対東京圏」の転入・転出
「対東京圏」の転入・転出

長野県「女性1人:男性1.27人」 福岡県は「女性1人:男性1.01人」

こうした傾向もあって、未婚の男女比に不均衡が生じていて、20~34歳では、女性1人に対し男性は「1.27人」。差は全国で13番目に大きくなっている。30~34歳では女性1人に対し、男性は「1.52人」とさらに不均衡に(2020年のデータ 内閣府『地域の経済2023』より)。

不均衡が小さいのは福岡県で女性1人に対し「男性1.01人」。同様に大阪府「男性1.02人」、奈良県「男性1.03人」。大きいのは福島県「男性1.35人」、茨城県「男性1.33人」、富山県「男性1.32人」となっている。

阿部守一知事:
「われわれも、いろんな形で結婚支援、出会いの場づくりを行ってきていますけれど、男女の数が大きく異なっているというのは、こうした政策を進めていく上での課題でもあると思っています」

資料
資料

新成人の女性たちは…

婚姻数の減少、ひいては人口減少の一因ともなっている若い女性の東京圏流出。新成人は、どう考えているのだろうか。

都内の大学に進学:
「現時点では、首都圏で就職したいなと。就きたい仕事とか、企業とかも首都圏の方がたくさんありますし、交通の便とかもいろいろ発達しているので」

埼玉の短大に進学:
「やっぱり向こうの方が便利なので。買い物の面とか、電車とかも本数が多かったり」

横浜の大学に進学:
「まだそんなに決めてはいないんですけど、向こうのほうがいろいろあるのかなと。よりいろいろ、遊べるところとかもちょっと多いかな」

千葉の大学に進学(首都圏で就職希望):
「(長野に戻ってこない理由としてはどんなところ?)田舎(笑)。旅行が好きなので、空港とか電車とか、ひょいひょい行けるのが(便利)」

都内で既に就職:
「(長野県内での就職は…)考えてなかったです。東京に慣れちゃった」

新成人の本音は…(7日・長野市)
新成人の本音は…(7日・長野市)

県内に進学した人も…。

県内の看護学校に進学:
「(長野にそのまま残る?)まだちょっと迷ってます。やっぱ都会に憧れるところはありますね。遊ぶ場所がいっぱいあって。(長野だと?)ちょっとないかな(笑)」

男性にも聞いてみた…。

茨城の大学に進学:
「まだあんまり考えてないですけど、(長野に)戻ってくる可能性も全然ある」「(Q.県内の女性が転出して少なくなっている…)女性が社会進出しやすくなるという面では、いいと思うんですけど、未婚(男女の割合)とかを考えると、外に出た人たちが戻ってくる体制づくりがあればいいのでは」

9地区合同の成人式(7日・長野市)
9地区合同の成人式(7日・長野市)

東京圏「干渉少ない」「多様な価値受け入れられる」 女性の回答が多い

地方から東京圏へ移動した人に行ったアンケートでは、移動した理由は「進学や就職したい先があった・選択肢が多かった」が、男女共通して最も多くなった。

一方で、女性は「他人の干渉が少ない」「多様な価値観が受け入れられる」との回答が男性より多くあった(2020年のデータ 内閣府『地域の経済2023』より)。

また性別・役割の経験では「地元の集まりではお茶入れや準備を女性がしていた」「地元で就職した女性は結婚・出産で仕事を辞めることが多かった」の項目で女性の回答割合が高くなっていた。

内閣府は「地域コミュニティーのつながりの強さや性別による無意識の思い込みを避ける」傾向にあるとまとめている。

阿部守一知事:
「男女の固定的な役割分担意識を変えないと、女性の流出に歯止めは掛けづらい」

アンケートからわかることは…
アンケートからわかることは…

女性に選ばれる県に 2024年度は予算重点配分

県は今年度、出産・育児で仕事を諦めることのないよう、企業のトップらと検討する場を設け、子育て世代や高校生と「長野県の変えたいところ」をテーマに意見交換会を開くなど、「女性・若者に選ばれる県づくり」を進めていて、新年度は予算を重点配分し、取り組む方針だ。

長野県・阿部守一知事:
「(人口減少は)社会全体の活力が低下してしまう要因にもなりますし、深刻化している人材不足の問題にも直結している課題でありますので、全ての県民の皆さまと共に、この問題、2024年はより踏み込んで取り組む年にしていきたい」

「女性から選ばれる県に」 検討スタート
「女性から選ばれる県に」 検討スタート

(長野放送)

長野放送
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