救急車による搬送をめぐって、三重・松阪市は入院に至らなかった場合に7700円を徴収することを決めた。背景には不要不急の通報増加があった。

「実際にあった非常識な通報」尼崎市消防局の動画が話題

全国的に増加傾向が止まらない“救急車の出動件数”。

全国 救急出動件数の推移(総務相HPより)
全国 救急出動件数の推移(総務相HPより)
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総務省がまとめた最新のデータでは、全国の救急車出動件数が2022年の段階で、過去最多の723万件を記録。

各自治体がこの問題の対応に頭を悩ませる中、兵庫・尼崎市の消防局が作った動画が話題となっている。

尼崎市消防局の動画「実際にあった救急シリーズ」
尼崎市消防局の動画「実際にあった救急シリーズ」

動画 尼崎市の消防員:
「実際にあった救急シリーズ」。今回は救急車適正利用を皆様にお伝えしたくて、2択チャレンジをしたいと思います。

2択での出題 1問目
2択での出題 1問目

【1問目】
A:家の中に蜂が入ったので退治して
B:蜂に刺されてアレルギー症状

両方とも正解
両方とも正解

1問目の2択チャレンジは、両方とも正解(実際にあった通報内容)。

2択での出題 2問目
2択での出題 2問目

【2問目】
A:子供にクリスマスプレゼントを渡したら機嫌が悪くなった
B:子供が頭を打って反応が悪い

こちらも両方正解
こちらも両方正解

そして、2問目も両方正解(実際にあった通報内容)という結果。

この動画に出てきた一方の選択肢は、救急車が対応するような要件ではないにもかかわらず、実際にかかってきた通報だという。

そういった非常識な119番通報を減らすべく、東京消防庁などは、救急車を呼ぶべきか迷った場合「#7119」に電話して、相談してほしいとしている。

しかし、この「#7119」を導入するには、対応する人員が必要で負担が大きいことから、これを見送り、独自の電話番号で対応している自治体があるのも実情だ。

入院なしだと7700円 三重・松阪市の対応

そんな中、この問題の解決に向けて、一歩踏み込んだのが三重・松阪市。

2024年6月1日から救急車で病院に搬送後、入院とならなかった場合、1人当たり7700円の支払いを求めることを決定した。

7700円という金額は、医療機関の機能分担を推進することを目的に作られた「選定療養費」という制度で、国が定めたもの。松阪市は、この「選定療養費」の適用範囲を広げて対応しようという。

この決定で支払いの対象となるのは、「松阪市民病院」「松阪中央総合病院」「済生会松阪総合病院」の、入院や手術が必要な重症患者などを24時間体制で受け入れている合計3つの病院。

ただし、紹介状を持っている場合や入院しなくても救急搬送が必要だったと医師が認めた場合は、支払いの対象外になるという。

三重・松阪市では2022年、救急搬送後に入院に至らないと判断された軽症のケースが56.6%と、半数以上だったことが判明。この状態が続けば助かる命が助からなくなる事態が発生するため、今回の決断となったという。

40代女性:
有料だと呼びにくくなる。我慢してしまうよ。

60代女性:
それで助かる命も助からなくなったら困るなって思う。

10代男性:
正しく求めている人が使える環境だったりとか、整備できればいいと思うけど。僕は反対ですかね。

各自治体が頭を悩ませる“救急車の出動件数増加”。
今回の決定について松阪市は、「救急車を呼ぶのを止めるものではない」とし、「急病の際には迷わず119番してください」としている。

“呼ぶ時には呼ぶ”判断は忘れずに

宮司愛海キャスター:
「7700円」と値段を聞くとびっくりするところもあるんですけれども、値段だけが1人歩きしないといいですよね。呼ぶべき人が呼べるようになるといいですよね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
これまでも救急車をタクシー代わりに呼んでいるんじゃないかということで、問題になったことがありました。それを考えると、今回の松阪市の対応というのは一石を投じる、考えるきっかけになっていることは間違いないと思います。ただ、病気というのはよくわからない部分がある。高熱で本当に入院が必要かどうか判断つかないとき、そして、一刻を争うような時に呼ばなかったことで、重大なことにならないようにしてほしいと思う。その辺はもう迷わず、救急車呼ぶ時には呼ぶという判断はキープしておきたいですね。

榎並大二郎アナウンサー:
うまく抑止力が働いて運用できるようになれば、それが理想ですね。
(「イット!」1月25日放送分より)