5類移行後も感染の広がりが続く、新型コロナウイルス。5類に移行して約8カ月、福島県内の定点医療機関あたりの患者は、最新の報告で12.10人と、2023年11月から増加している。(2024年第2週・1月8日~14日)ウイルスと闘い続けるために、新たなワクチンの製造拠点が動き始めている。

第10波? 5類移行後も感染の広がり続く
第10波? 5類移行後も感染の広がり続く
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流行を繰り返す感染症に

福島県相馬市で、新型コロナウイルスのワクチン接種事業に携わる公衆衛生の専門家・渋谷健司さん。「パンデミックの2020年・2021年の時と、今のコロナの状況は異なる。ワクチンや感染で免疫がついている人もかなりいるし、コロナ自体も以前のように爆発的な感染を急激に起こしたり重症化する症例は減っている。ただしコロナがいなくなったわけではなく、インフルエンザと同じように流行を繰り返す感染症という形で、今もずっといる状況」と、重症化や爆発的な感染の広がりをもたらすいわゆる「懸念される変異株」は今のところ発生していないとしながらも、対策を続けることの重要性を訴える。

ウイルスの状況も変化 しかし消滅したわけではない
ウイルスの状況も変化 しかし消滅したわけではない

常に変異 対策は継続を

渋谷さんは「新型コロナウイルスというのは、大体10日から2週間程度に一回変異していると言われ、常に新しい変異株が生まれている。高齢者や免疫が低下している方、あるいは基礎疾患がある方は、他の感染症と同様に気を付けてワクチンを打ったり感染対策は継続して行うべき」だと話す。

新しい変異株が生まれている 引き続きの対策は必要
新しい変異株が生まれている 引き続きの対策は必要

次世代型のワクチン

福島県南相馬市に進出した「ARCALIS(アルカリス)」。親会社が開発したワクチン「次世代型メッセンジャーRNAワクチン・レプリコン」が、2023年11月に日本で世界初となる製造承認を受けた。

福島県南相馬市に進出した「ARCALIS(アルカリス)」
福島県南相馬市に進出した「ARCALIS(アルカリス)」

メッセンジャーRNAとは、人やウイルスのタンパク質の設計図。従来型のワクチンは、新型コロナウイルスを構成する複数のタンパク質のうち、一種類のタンパク質の設計図を体内に取り込むことで新型コロナウイルスに対する免疫を獲得する。

従来型 一種類の設計図を体内に取り込むことで免疫を獲得
従来型 一種類の設計図を体内に取り込むことで免疫を獲得

アルカリスが製造する次世代型のワクチンは、体の中でメッセンジャーRNAが複製されるように設計されていて、投与量が少ないことから副作用の低減が期待され、免疫の活性が長く続くとされている。

次世代型 体の中でメッセンジャーRNAが複製されるように設計
次世代型 体の中でメッセンジャーRNAが複製されるように設計

福島県にワクチン製造拠点

原薬製造の試験運転が進められる工場では、安定した供給体制の構築と品質の分析などが進められている。工場では年間で最大5キロ・10億回分のワクチン供給を支える原薬を製造することができ、2024年に流行している新型コロナに対応したワクチンの原薬製造を秋ごろに計画している。

画像提供:Meiji Seikaファルマ
画像提供:Meiji Seikaファルマ

ALCARIS南相馬事業所長の野田一生さんは「新型コロナウイルスが毎年姿を変えても、我々はその遺伝情報をしっかりととらえて、それをワクチンと言う形で世界中にお薬として提供することを心がけて、これからも対応していかなければならない」と話す。

ALCARIS南相馬事業所長の野田一生さん
ALCARIS南相馬事業所長の野田一生さん

一貫して製造ができるように

現在工場で働く従業員は、原薬の製造・分析チームなど約30人。2026年には製剤工場が完成する予定で、ワクチンの製造を一貫して行う体制が整う。

2026年には一貫した製造が可能に
2026年には一貫した製造が可能に

ALCARISの高松聡CEOは「福島・南相馬から新しい薬品を世界に向けて出荷することで、これまで世界の方々・日本の方々から受けた復興に対する恩をお返しすることがようやくできるのではないかと期待している」と話す。
メイドイン福島のワクチンが、新型コロナウイルスの感染拡大を抑える日は遠くなさそうだ。

ALCARISの高松聡CEO
ALCARISの高松聡CEO

国の担当者も視察 期待を寄せる

南相馬市にできた国産ワクチンの製造拠点には国の担当者なども視察に訪れ、期待を寄せている。1月23日には、経済産業省や厚生労働省など感染症対策やワクチンの開発支援の担当者が工場を視察。建設中の製剤工場を含めて、次世代の新型コロナワクチンをどのように製造していくか、今後の計画などについて説明を受けた。

1月23日 国の担当者などが視察
1月23日 国の担当者などが視察

経済産業省・生物化学産業課の下田裕和課長は「非常に期待が高まる素晴らしい施設になっている。世界の製薬企業が、ここを頼ってアジア展開するというようなことも繋いでいければいい」と話した。国も、新型コロナに対応したワクチンの国内での研究開発や生産体制の強化を進めていく戦略を掲げている。

経済産業省の担当者も期待を寄せる
経済産業省の担当者も期待を寄せる

新型コロナワクチンは、世界の医薬品メーカーなどが鎬を削り、開発・製造を進めている。福島発のワクチンが、多くの人の感染予防につながることを期待する。
またアルカリスでは福島県立医大と連係し、新型コロナだけでなくインフルエンザワクチンの研究も進めているという。

(福島テレビ)

福島テレビ
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