若者に人気のストリートスポーツ、BMX。その世界大会が12月、甲子園球場で開催された。この大会に出ていた大阪府箕面市出身の志賀勇也さん、通称“YUYA”。5年前に交通事故に遭い一度は生死の境をさまよう危機に…。大けがを乗り越え世界に挑むBMXライダーに密着した。
■BMXパフォーマー・YUYAの挑戦
大阪府箕面市出身の志賀勇也さん、通称“YUYA”は、スピンスタイルが得意なパフォーマーだ。
BMXには、スピードを競い合う「レース」、空中でアクロバテックな技を繰り出す「パーク」、自転車のフィギュアスケートとも呼ばれる「フラットランド」がある。
【YUYAさん】「BMXがなかったら僕がいないくらい、めちゃくちゃ大事な存在」「BMXには、まだまだ誰もやっていない技がいっぱいある。その技ができた時の達成感や快感が忘れられない。ハマってずっとやっているような感じです」

この日は世界大会に出場するため、新しい技の練習をしていた。
YUYAさんが取り組む「フラットランド」は、BMXに乗りながら制限時間内にさまざまな技を繰り出し、その難しさを競うものだ。
いつも練習が終わると、すぐにSNSを更新。BMXを少しでも盛り上げたいと、動画などを配信。しかし…。
【YUYAさん】「明日…あれこうやったけ?えっ?」

YUYAさんは、幼いころから「ディスレクシア」という学習障害を抱えていて、文字を読んだり、書いたりすることが苦手だ。
【YUYAさん】「結構使うんですけど、えっ、分からへん。この漢字合ってるかな?これ」
いつも漢字のチェックは、マネージャーでもあるお母さんが行っている。
自転車が大好きだったYUYAさんは12歳の時、母に勧められBMXに出会った。その後メキメキと実力をつけ、これまで数々の大会で優勝。日本ランキング9位に。

さらに、高校生の時にはBMXでストリートパフォーマンスも始めました。
【YUYAさん】「ストリートパフォーマンスっていうのが誰もやっていなくて、何か最初、パフォーマンスして投げ銭をしてっていうのを毎日繰り返して、だんだんイベントや舞台とか、いろいろお仕事がもらえるようになってきて。その時に、もうこっち(パフォーマンス)の道だけでがんばりたいな、いけるなって確信しました」
週末は全国各地のイベントに呼ばれる。YUYAさんは、いつもお客さんが会場を埋め尽くすほど大人気だ。

2019年には地元・箕面市の特命大使に任命され、市のイベントやPRなどの活動を行っている。さらにBMXのすそ野を広げようと、YUYAさん自ら講師を務め、未来のパフォーマーを育てる活動も。
地元のショッピングモールの駐車場をBMXスクールの場として無償で提供してもらうなど、地域の応援も受けている。
■事故で選手生命の危機に…しかし
しかし5年前、ある出来事がYUYAさんからBMXを奪いました。車に乗っていたYUYAさんは交通事故に遭い、一週間も意識が戻らず、生死の境をさまよったのだ。
【大阪大学医学部付属病院 高度救命救急センター 入澤太郎医師】「太ももの写真ですね、バーンとここで折れています。腕も2本ともしっかり折れていますね。普通に考えたら(BMXが)できなくなる可能性は極めて高かったと思いますね」
全身を10数カ所骨折、アスリートとしての復帰は難しいと言われました。そんな絶望的な状況でも…。

【母 美由紀さん】「目が覚めた日に『大丈夫?今からがんばろうな』みたいな話をした時に天井を見ながら『俺、なんかすごい奴になる気がする』というのを言っていて」
【YUYAさん】「生きていただけでも奇跡とか良かったとか言われていたんですけど、めっちゃすごい奴になれる気しかしなくて。まずBMXは絶対に乗れると思っていました、その時。もし片手とか片足が動かなくなっていたとしてもBMXに多分乗っていたと思います」
事故から1カ月半が経過した頃、リハビリを開始した。
【YUYAさん】「(しんどい?の問いに)いや、しんどくないです」

そして事故から4カ月経ち、BMXに再挑戦した。
「もう一度BMXに乗る」「すごい奴になる」その想いでリハビリに耐え抜き、ついにお客さんのもとに帰ってきました。BMXパフォーマー、YUYAの復活だ。
大勢のお客さんを前に、事故から復活するまでのことを話した。
【YUYAさん】「交通事故で全身10カ所の骨折で、くも膜下出血で目と手足の神経まひで生死をさまよう大けがをしました。信じてあきらめずにずっとがむしゃらにがんばり続けていたら、願った事とかかなうのかなってすごく感じました。この経験をもっといろんな人に伝えていきたいと思って、これからもBMXのかっこよさ、楽しさを伝えたい」
大けがを克服して、BMXパフォーマーとして戻ってきた彼だからこそ、伝えられることがある。

■復活を遂げ、世界へ挑戦
12月、甲子園球場で開かれたBMXの世界大会。そこにはYUYAさんの姿があった。制限時間内にBMXを使ってさまざまな技を繰り出す。
しかし、地面に両足がついてしまうミス。惜しくも決勝進出とはなりませんでしたが、今持てる力を出し切った。
【YUYAさん】「いや、悔しい。来年は(技を)決めます」

早くも来年の世界大会への意気込みを語った。
【YUYAさん】「BMXはまだまだ認知度が低いので、いずれは大会とかそういう運営側、シーンを引っ張れるような存在になりたいなと思います」
大きなけがを乗り越えたYUYAさん。BMXの競技者としても、パフォーマーとしても、さらなる高みを目指す。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月10日放送)