島根県内唯一のデパートとして「街のシンボル」でもあった「一畑百貨店」が、2024年1月14日、その歴史に幕を下ろした。
1958年(昭和33年)の創業から65年の歴史、そして、閉店までの経緯を振り返る。

松江の風景を形づくってきた「シンボル」の軌跡

1958年10月に創業した「一畑百貨店」。
当初は、島根県庁近くの松江市の中心街・殿町に店舗を構え、1982年には隣接地に新館がオープン。「ツインタウン」の愛称で市民に親しまれた。

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その後、1998年に現在のJR松江駅前に移転。「街のシンボル」として、駅前の風景を形づくった。

歳暮・中元商戦では、社員が1軒1軒訪ねて売り込む「ドアコール作戦」を展開。出発式は季節の恒例行事にもなった。

ピーク時の2002年3月期の売り上げは108億円に達し、「一畑」は、山陰のほかのデパートからも一目置かれる存在だった。

丸由百貨店(鳥取市) 田中秀明店長:
一畑百貨店は物産展を大規模にしていて、我々としても参考にしていた

しかしその後、大型ショッピングセンターの進出やネット通販の台頭により、売り上げは年々減少。直近では、ピーク時の約4割、43億円まで落ち込んだ。

苦境を打開するため、2022年に大規模なリニューアル計画が持ち上がったが、新型コロナウイルスの影響もあり頓挫。打つ手を失った。

閉店方針を明らかにした当時の川内孝治前社長は、「地方の、20万人しかいない都市の単一の百貨店では、テナントに出店いただけなかった」と、経緯を説明した。

厳しい経営環境…生き残りをかけ奮闘

島根県から姿を消した百貨店。
百貨店「ゼロ」の都道府県は、山形、徳島に続き、全国では3例目だ。

隣の鳥取県には、2024年1月現在も3つの百貨店があるが、このうち、鳥取市の「丸由百貨店」は2022年、大手百貨店との資本提携解消に伴い、地元企業が資本を投入。
店名を変えて再スタートし、生き残りを図っている。

丸由百貨店(鳥取市) 田中秀明店長:
(閉店は)決して一畑百貨店だけの話ではなくて、お客さま一人一人の言葉に耳を傾けて、地方百貨店としての生き残りをかけて、新しい取り組みをどんどんしていきたい

全国でもピーク時の6割、180店舗まで減少するなど、厳しい経営環境に置かれている百貨店。
そうした競争の波にのまれ、山陰の中心都市のひとつ・松江でもデパートが役割を終え、姿を消すことになった。

(TSKさんいん中央テレビ)

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