台湾の新しい総統を決める選挙結果をめぐり、自民党の小野寺元防衛相が14日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)に出演。与党・民進党の頼清徳氏が勝利したことを受け、「中国が今後、軍事演習を含めて様々な行動を取ることは十分考えられる」と指摘。「日本もかなり当事者意識を持たなきゃいけない」と述べた。一方、中国と台湾の関係に詳しい柯隆氏は「台湾は今後かなりの長期政権になる可能性が高く、中国は早晩、民進党との対話を模索せざるを得なくなる」との見方を示した。また、番組コメンテーターの橋下徹氏は、中国との対話の道を探る野党・民衆党の柯文哲氏が選挙戦で健闘したことに関し、「中国にやられないように、しっかりと防衛力を強化するというのが柯文哲氏の考え。台湾の外交安全保障は、非常に安定するのではないか」と指摘した。

以下、番組での主なやり取り。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
民進党の頼清徳氏が伸び悩む、予想よりは伸び悩んだという結果になったと思う。一方で、柯文哲氏がこのように躍進した背景に何があると思うか?

柯隆氏(東京財団政策研究所・主席研究員):
(頼清徳氏は)票で伸び悩んでいるというよりも、むしろよく伸ばしたなという感じがしていて、もう少し接戦すると思っていた。投開票の直前になって、馬英九前総統の、ドイツの国営放送のインタビューの中での(習近平主席を信頼すべきだという)発言っていうのは、かなり国民党に対して大きなダメージを与えたと思うので、(馬英九氏は)「中国と戦うと必ず負ける」ともおっしゃったが、あの一言で多分、国民党は50万票を失ったと思っている。ある意味で僕は、頼清徳氏が馬英九氏に感謝状を送らなきゃいけないような事態だと思っているので、一方、その柯文哲さんが、三国志のなかでいう孫権のような役割果たすわけだが、思ったより票を伸ばしたが、この人が若者中心に引きつけた。なぜかというとSNSをものすごく駆使したわけ。今回、民進党がSNSをほとんどやらなかったって、いうのが大きなポイントで、大きな課題を残したと思う。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
今回の台湾総統選では、直接投票での総統を選ぶという選挙が始まってから初めて、3期連続で同じ政党が政権を担当するということになったが、その頼清徳氏が次の総統に決まった一方で、立法院選挙では「ねじれ現象」で、それまで過半数を取っていた民進党が少数与党に陥るという状況になったが、小野寺氏はこの影響をどういう風に見ているか。

小野寺五典氏(元防衛相/自民党・安保調査会長):
私は、民進党がもっと議席を減らすんじゃないかと思ったが、意外と接戦っていうか。51対52ということなので、むしろ、民衆党という第三党、ここがある面でキャスティングボードを握るようなことになると思う。ただ、やはり先ほどもあったが、以前、蔡英文総統の前の民進党の陳水扁総統の時に、アメリカから潜水艦を購入しようということで、実際契約に至っていたが、最終的にはやはり議会がねじれていて、国民党の反対で成立しなかったこともあるので、台湾としてはアメリカからしっかり防衛装備を買いたいと思っていると思うが、予算を最終的に決める議会がどういう方針を示すか。新しい総統は、相当丁寧にやはり運営をしていくことになるんじゃないかと思う。

松山キャスター:
頼次期総統がやる方針に議会が反対する行動、というのは今後起きうることなのか?

柯隆氏:
起きうるが、今回の「ねじれ」によってむしろ、この政権が長期政権になる可能性が非常に高くなる。なぜかというと、いい加減な政権運営ができなくなり、スキャンダルも多分少なくなるので、4年後の選挙を考えた場合、そのまま8年やる可能性も高くなってくる。また、副総統になる蕭美琴(しょう・びきん)は、ものすごく英語がうまい。トランプ氏より英語がはるかにうまいと思う。アメリカとのパイプ、特に議会とのパイプがすごく太い人で、彼女が多分、さらに次の総統になると思うが、そうするとトータルで16年間の民進党政権が誕生するような意味も持ってる。

松山キャスター:
今回の総統選の結果、総統選は民進党が与党・民進党が勝利。一方で立法院では国民党が最大政党になった。この構図はどういうふうに見ている?

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
もう直接選挙のこの総統選で、もう本当に抜群のバランス感覚を台湾の人々が発揮したな、というふうに思う。もちろん民主主義が進展するにあたって、既存の政党に対する批判票が増えて第三局が躍進するというのは、日本でもそうだと思うが、今回もやっぱり中国との距離感について、蔡英文総統の時の距離感よりも、もうちょっと中国に近めに行かなきゃいけないんじゃないかと。まあ、現状維持っていうものを主張しなきゃいけないんじゃないかという票がかなり出たんだと思う。ただ、僕は柯文哲氏と数年前に直接話をさせてもらって、そのあと、民衆党の方々とも話をさせてもらっている中では、防衛力の強化については、彼は蔡英文総統とほぼ考え方が同じなので、アメリカからの武器提供に関して、民衆党の柯文哲氏が、それに反対するってことは、僕はないと思っている。ただ、その主張として高らかに独立ということを前面に出すということではなく、とにかく主張としては「現状維持」。だけれども、中国にやられないように、しっかりと防衛力を強化するというのが柯文哲氏の考えだと思うので、僕は台湾の外交安全保障は、非常に安定するんじゃないのかと思っている。

松山キャスター:
今回の総統選では、民進党の頼氏が勝利。そして議会では国民党が第一党になったということで、この結果に中国が反応している。中国政府は「民進党が台湾の主流の民意を代表していないことを示している」という公式コメントを出している。民進党の頼氏が当選した場合、中国がさらに圧力を強めるんじゃないかという見方があったが、小野寺氏は、中国は今後どういうふうに動くと見ているか。

小野寺氏:
中国政府のコメントを見ると、負け惜しみという感じがする。ただ、中国としては今まで、実は、総統選があるので、あまり過激な軍事的な行動は取らずに、気球を上げたり、あるいは、人工衛星みたいなものを打ち上げたりという形でやっていたが、おそらく、こうして民進党の政権になったということが確定したので、今後は軍事演習を含めて様々な軍事的な行動を取るということは十分考えられるし、その際心配なのは、例えば、アメリカは、すでに中東とウクライナで、相当の分担・負担を負っているので、これでさらにアジア周辺で起きるということに関しては、アメリカも相当警戒あるいは、もうこれ以上はちょっと辛いなという状況なので、中国が行動を起こすことに対しては、私たち日本もかなり当事者意識を持たなきゃいけないことになるかもしれない。

松山キャスター:
アメリカのペロシ前下院議長が台湾を訪問した際には、中国は日本のEEZ内にもミサイルを飛ばしたが、そういった過激な行動を台湾への牽制として中国がやることは?

小野寺氏:
十分あり得ると思うし、実は去年の夏ぐらいは、かなり中国は色んな演習をしていた。日本やアメリカが台湾に近づけないようなやり方。それをやっていたが、おそらくそれをさらにもっと目に見える形でやってくることは十分考えられると思う。

柯隆氏:
今後のキーポイントはアメリカだと思う。アメリカのどれほどの大物の政治家、あるいは、あの議員たちが台湾に訪問するか。それは当然、北京として阻止しなきゃいけないので、それに対して演習をやったりするのはあり得るが、ただ、中国が現状を変えることは出来ないし、台湾はかなり長期の政権になる可能性が高いので、僕は早晩、中国は民進党との対話を模索せざるを得ないと思う。

日曜報道THE PRIME
日曜報道THE PRIME

今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論!「当事者の考え」が分かる!数々のコトバが「議論」を生み出す!特に「医療」「経済」「外交・安全保障」を番組「主要3テーマ」に据え、当事者との「議論」を通じて、日本の今を変えていく。
フジテレビ報道局が制作する日曜朝のニュース番組。毎週・日曜日あさ7時30分より放送中。今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論。