2026年秋の完成を目指す首里城の正殿では、新たな知見を活かした挑戦がはじまっている。

辰年のはじまりを告げる「初日の出」が、数多くの龍がたたずんでいた首里城に温かな光を差し込んだ。

6000人が携わった建て方工事が終了

2023年12月21日、首里城正殿の顔となる唐破風(からはふ)を支える柱、向拝柱(こうはいばしら)が据え付けられた。

長さ4.6メートル、直径40センチのイヌマキ(沖縄の方言でチャーギ)で、熊本県の業者の協力を得て長崎県で調達された。

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首里城復興課の仲村政克さんは、「県内外からの応援や思いも詰まったイヌマキ材になっていますので、大変感謝しております」と述べた。

首里城正殿に使用された柱と梁は513本に上り、その調達先は22府県に及ぶ。

2023年12月、宮大工やとび職人など延べ6000人が携わった建て方工事が無事終了。

2024年は屋根や軒廻りの工事が本格的に始まり、2026年秋の完成を目指す。

200のピースが組み合わさって、復元する龍頭棟飾

琉球王国の政治、外交、文化の中心地として威容を誇った首里城。

その至る所に王の象徴である龍の装飾が施され、なかでも唐破風の正面と瓦屋根の両端に鎮座するのが「龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)」で、2023年3月から復元が始まっている。

このような巨大な龍頭棟飾を作るためには一度、200近くのピースに分けて、土を焼き、それを組み立てる。

作業について技術者の早川信志さんは、「(陶土を)パズルのように区切って組み合わせていく感じ」だと説明する。

現在は、発泡スチロール製の原型からとられた石膏の型に陶土を叩きつけ形を整える作業が行われている。

今回の復元では、ある挑戦をしている。

屋我優人さん:
「沖縄の土」を使っているので、焼成後までどうもっていくか

焼失前までは沖縄県外の土を使用していたが、今回、沖縄伝統工芸品の壺屋焼のノウハウを活かし、沖縄の恩納村で採れる土をブレンドすることで、耐火性や粘り気のある粘土を作ることに成功した。

早川信志さん:
(沖縄の土は)乾燥しやすいのかなというイメージがあるので、粘土の硬さには気を遣っています。粘土と対話しながら作っている状態です

沖縄県産の土で成形されたパーツは年内に全て焼き上げられ、その後、正殿の屋根の上で龍のかたちに組み立てられる。

“朱色”から“黄色”へ扁額は様変わり

今回の首里城再建で大きく様変わりする物がある。
国王の玉座の後方に掲げられていた「扁額」だ。

これまで扁額の地板は、首里城と同じ「朱色」であったが、試作に塗られたのは「黄色」の漆。

琉球王国時代に書かれた扁額に関する史料から「鏡黄色塗(かがみきいろぬり)」という地板が朱色ではなく黄色だったという文言が見つかったのだ。

製作検討委員会において安里進委員は、「これまで正殿の御差床(うさすか)、国王の玉座のまわり空間は琉球の国内行政の中枢的な場所という理解だったが、扁額が皇帝扁額の黄色塗りをあえてやっているというところで、この場所は同時に国際的な関係を示す場所でもある」と述べた。

ひと言で黄色と言っても色味はさまざま。

漆塗りの責任者で首里城の塗り替えや修復事業に携わって20年近くになる諸見由則さんにとっても大きな挑戦であった。

諸見さんは、どのような黄色がよいのかを調査するため、東京国立博物館に足を運ぶなどし、
いろいろなものを観たりして色を検討した。

扁額と同年代に製作された漆器を参考に何度も試作を作り、黄土色に近い色味に決定。

題字に金箔が貼られ、黄金に輝く扁額の試作品が完成した。

漆職人 諸見由則さん:
これで僕はいいのかなと思います。もっと(地板が)黄色だったら金箔があまり目立たなくなるので。早く復元して(黄色の扁額)を観られたら喜ぶのかなと思ったりもするんだけどね

新たな知見や技術を用いて再建される首里城。
沖縄のシンボルを甦らせるため、職人たちが奮闘している。

沖縄テレビ
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