年末に出荷される正月用の養殖クルマエビ。実は2023年7月の豪雨で30万匹が全滅の危機にさらされた。書き入れ時への影響が懸念されたが、養殖池の水質は奇跡的に回復。今季も無事出荷のピークを迎えている。

広大なクルマエビ「養殖池」

佐賀・唐津市にある「浜崎クルマエビセンター」 広大な養殖池でクルマエビを育て、毎年約15万tを出荷
佐賀・唐津市にある「浜崎クルマエビセンター」 広大な養殖池でクルマエビを育て、毎年約15万tを出荷
この記事の画像(12枚)

白砂清松の景勝地、佐賀・唐津市の「虹の松原」から少し東の海沿いにあるクルマエビの養殖場「浜崎クルマエビセンター」では、約2万4,000平方メートルの広大な養殖池でクルマエビを育てていて、毎年約15万tを出荷している。

プリップリの弾力と甘味が魅力
プリップリの弾力と甘味が魅力

“活きエビ”で食すると、プリップリの弾力と甘味が広がる新鮮な「クルマエビ」。その味は別格だ。

毎年暮れになると出荷作業に追われる
毎年暮れになると出荷作業に追われる

歳暮や正月の贈答用として人気があり、この養殖場では毎年暮れが迫ってくると出荷作業に追われる。2023年も、12月下旬、活きのいいクルマエビを箱詰めする作業が行われていた。

30万匹が一時“全滅”のピンチ

一時“全滅”の危機が…
一時“全滅”の危機が…

今シーズンも順調に育ったクルマエビだが、実は夏の豪雨の影響で一時、“全滅”の危機にさらされた時期があった。

「令和5年7月豪雨」で、唐津市浜玉町では大規模な土砂崩れが発生(写真:視聴者提供)
「令和5年7月豪雨」で、唐津市浜玉町では大規模な土砂崩れが発生(写真:視聴者提供)

2023年7月に九州北部を襲った豪雨。唐津市浜玉町では、大規模な土砂崩れが起きるなど被害は甚大だった。唐津湾に注ぐ玉島川も氾濫。大量の淡水が海へ流れ込んだ。

大量の淡水が流れ込んだ唐津湾沿岸にクルマエビの「養殖池」がある
大量の淡水が流れ込んだ唐津湾沿岸にクルマエビの「養殖池」がある

大量の淡水が流れ込んだ唐津湾の沿岸にクルマエビの「養殖池」はある。養殖池は外の海水が直接入らない大きな“海水プール”のような施設だが、周りの塩分濃度が急激に低下すると、クルマエビを育てるために重要な水質維持が困難になる仕組みになっているのだ。

毎日3割ほどを外の海水と循環させているが…
毎日3割ほどを外の海水と循環させているが…

養殖池では毎日3割ほどを外の海水と循環させ、クルマエビの養殖に適した水質と水温を維持している。しかし、養殖池の周りの海の塩分濃度が急激に低下したため、1週間近く海水の循環ができない状況となった。

浜崎クルマエビセンター・福森春介場長:
当時は水温も高くなって環水できない。エビは高水温が苦手。環水ができないことによって悪化した環境でもエビは排泄などしますから、循環できないことを危惧(きぐ)していた

年末に向けての養殖に危惧
年末に向けての養殖に危惧

冷凍のクルマエビを出荷する盆の出荷には影響はなかったが、危惧したのが年末に向けての養殖だ。水質を回復させるための海水の循環が滞ってしまったため、約30万匹が全滅する恐れがあったのだ。

一日も早い海況の回復を祈る日が続く。そして…。

浜崎クルマエビセンター・福森春介場長:
なんとか無事だった。ギリギリのラインでしたけれども

幸いにも、クルマエビが生きられるギリギリのところで海の塩分濃度が元に戻り、急いで海水を養殖池に取り込み循環させた結果、水質・水温は正常に。まさに“間一髪”で全滅を免れた。

危機乗り越え…今季も無事に出荷

危機を乗り越え
危機を乗り越え

“出荷ゼロ”になるかもしれない危機を乗り越え、2023年も無事に迎えた年末の繁忙期。1匹ずつ丁寧に箱詰めしていく地道な作業からは、自慢のクルマエビを多くの人に味わってもらいたいとの思いが伝わってきた。

楽しみにしてくれている人のために…
楽しみにしてくれている人のために…

浜崎クルマエビセンター・福森春介場長:
甘くておいしいです。毎年これを楽しみに来られる方も大勢いらっしゃるので、それに応えられるように生産しています

(サガテレビ)

サガテレビ
サガテレビ

佐賀の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。