日本維新の会は今、試練の時を迎えている。春の統一地方選での勢いは消え、12月の東京・江東区長選では大惨敗。政党支持率も低下した。原因が「万博」なのは明白だが、起死回生の一手は見えていない。

得票は最下位 供託金は没収

2023年12月に行われた東京・江東区長選は衝撃の大惨敗だった。維新は単独の推薦候補を擁立したが、5人中最下位で落選。得票率は10%に満たず、供託金すら没収された。藤田幹事長は「一義的にどこが責任を負うかと言うと、東京維新の会。でも役職者の首を飛ばすというものではないと思う」とする一方、「非常に不甲斐ない戦いだったことは認めないといけない」と総括した。

思い起こせば、4月の統一地方選では774人が当選し、まさに「破竹の勢い」だった。党の「中期経営計画」では、短期目標に「地方議員600名以上」を掲げていて、大きくクリアした。次の中期目標は、「次期衆院選で野党第一党」である。馬場代表はテレビ番組などで、野党内のライバル・立憲民主党について「いても日本は良くならない」とこき下ろし、対抗心をむき出しにしてきた。

膨らむ万博費用 支持は萎む

空気が変わったのは、大阪・関西万博の会場建設費の2350億円への増額だ。当初、維新は「万博は国の事業」だとして距離を取る戦略を取った。だが複数の維新議員が「あの戦略は失敗だ。逃げたように映っただけだ」と語っている。その後、維新は「積極PR路線」へと転換。万博開催の意義を国会質問で担当大臣に語らせたり、党幹部が様々なメディアに出演したりと、万博PRに精力的に取り組んだ。

この間、維新の政党支持率は低下。FNN世論調査では、9月時点で9.2%だったが、増額が発表された直後の11月には、6.6%に急降下した。12月にはやや戻して7.9%としたが、春夏の勢いが戻る気配は感じられない。

毒舌封印 「今は耐える時」

馬場代表に、2024年に党勢を拡大させるには何が必要か聞いてみた。馬場代表は「コツコツとやっていくのが一番。ドカンと爆発させると、その後に鎮火してしまう」と述べた。確かに最近、「毒舌」はなくなり、軽い「皮肉」程度になっている。「毒舌」という飛び道具に頼らず、着実に支持を訴えることが大事、ということだろう。

ただ、万博の「支持率」が低いままでは、維新には厳しそうだ。今は会場のハード面の話が中心だが、人々をワクワクさせたいなら「会場で何が見られるのか」という、ソフト面の話が不可欠だ。ただ、馬場代表は「何を展示するかは、国家機密・企業秘密だから、まだ出すわけにはいかないだろう。(大阪府の)吉村知事とも言っているのは、『今は耐える時だ』と…」と語った。

今、政治資金の問題で、岸田政権や自民党の支持率は大きく低下している。野党が躍進するチャンスの時期が「耐える時」となるのは、さぞ歯がゆいだろう。これから、万博の中身が明らかになるにつれ、上昇気流が生まれると期待しているようだが、果たしてどうなるだろうか。

政治部 鈴木祐輔(関西テレビ)

鈴木祐輔
鈴木祐輔

2001年関西テレビ入社。制作局、経理局を経て報道局へ。
2012年には行政キャップとして大阪市長だった橋下徹氏や日本維新の会の結党を取材。
大阪府警キャップ、編集長などを経験し、現在は東京駐在記者として、フジテレビ政治部で野党担当。