約5年前、法人を統合した上で2つの大学を運営することで合意した静岡大学と浜松医科大学。しかし、静岡大学は「当初構想のまま実現することができない」として、“1大学2校案”を大学側の成案とすることを決めた。

一度は合意も静大側の内部対立で…

150年近い歴史を誇る静岡大学と静岡県内で唯一 医学科を有する浜松医科大学。

両校は2019年3月、運営法人を統合した上で、浜松市内にキャンパスを置く静岡大学の工学部・情報学部と浜松医科大学を合併させて新たな大学を作り、静岡市内にキャンパスを置く静岡大学の人文社会科学部や教育学部などは従来通り静岡大学とする、“1法人2大学”を目指して合意書を交わした。

2019年3月に合意書を締結したが…
2019年3月に合意書を締結したが…
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ところが、その後、静岡大学では“再編に待ったをかける”静岡キャンパスの教職員と“再編を悲願とする”浜松キャンパスの教職員との間で対立が激化。

さらに2021年4月、“静岡キャンパス側”の日詰一幸 氏が学長に就任したことで再編はより遠のく。

静岡大学・静岡キャンパス
静岡大学・静岡キャンパス

2022年夏には日詰学長の“私案”として、運営法人を一緒にするだけでなく、将来的には1つの大きな大学を目指す“1大学1校案”が示された。翌2023年夏には“モデルチェンジ案”として2つの大学を統合した上で静岡市と浜松市に強い権限と独立性を有する2つの学校を設置する“1大学2校案”が示されるも、当然のことながら合意内容の履行を求める浜松医科大学の理解を得られなかった。

身勝手とも言える理由をいくつも列挙

こうした状況ではありながらも、静岡大学は12月21日に役員会を開き、“1大学2校案”を大学としての成案にすることを決定。

その背景について日詰学長は会見で、第一に合意書締結後の“状況変化”により当初構想(1法人2大学)のまま実現することが出来ないことを挙げた。

具体的には学内で合意形成が図られていないことや学生・教職員・関係自治体といったステークホルダーの理解が不十分であるというものだ。

また、こうした“変化”に対応するため、まずは法人を統合し、統合後に大学再編や統合について協議するという打開策を提示するも、浜松医科大学に受け入れられなかったと主張。

その上で「静岡大学は総合大学であり、その構成員である教職員が1つになることが最も大切なこと。総合大学を2つに分けることは静岡大学を預かる学長として望むものではない」と述べた。

会見する静岡大学・日詰一幸 学長(12月21日)
会見する静岡大学・日詰一幸 学長(12月21日)

さらに、“1大学2校案”は「合意書の締結以降、状況の変化によりこう着する協議を前に進めるためのモデルチェンジ案でもあり、合意書の範疇かどうかは議論の対象ではない」と強調し、「浜松医科大学においても柔軟に協議をしてもらえるよう願っている」と呼びかけた日詰学長。

加えて、会見では「合意書は契約書ではない」「尊重と遵守は異なる」と驚くべき発言もあった。

1大学2校案の成案化に浜松医大は怒り

しかし、ここで疑問を抱く人も多いのではないだろうか?

それは日詰学長が言及した“状況変化”は、時勢の変化によるものでも浜松医科大学に起因するものでもなく、単に静岡大学の内部の問題だからだ。

浜松医科大学としては合意書を締結した時から一貫して姿勢にブレはなく、それ故に21日の静岡大学の決定を受け「2校案は検討の対象にならないと繰り返し成案化を思いとどまるようお願いしたが、これを無視し、強行されたことを大変遺憾に思う。とても内向きで、自ら本学や地域との対話の扉を閉じようとしているようにも見える」と厳しく非難したのも無理からぬことだろう。

(テレビ静岡)

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