11月24日から始まった休戦期間だったが、ガザ地区内の人道状況を改善する合意が守られていないことが明らかになった。休戦期間中には、多くの支援物資がエジプトとの国境にあるラファ検問所を通り、ガザ地区に輸送されることが合意されたが、実際には燃料と食料が不足し、ガザ地区のほとんどの住民は支援を受けることができていなかったのだ。

休戦期間を終え、イスラエル軍は再び地上作戦を行っている。ハマスとイスラエルの戦いは終わりが見えず、一般市民の苦しみは続いている。

「ガザ地区内の人道状況の改善」合意守られず

戦闘休止の期間中は、多くの支援物資がエジプトとの境にあるラファ検問所を通り、ガザ地区に搬入されることが双方の合意で決められていた。実際にガザ地区はどうなっているのか、内部にいるコーディネーターを通して取材を行うと、実態は違っていた。

ガザ地区南部・ラファで燃料を求める市民の列(2023年11月)
ガザ地区南部・ラファで燃料を求める市民の列(2023年11月)
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ラファでは、料理などをするために必要な燃料を求める人の列が何百メートルもできていた。しかし、燃料缶の上に座っているなど、列が進んでいる状況には見えない。

並んでいる人に話を聞くと、「戦闘休止から5日間待ち続けているが、燃料が手に入っていない」という。さらに「生きるため燃料にできる物は使い切った。炭や木材、段ボール、古い服、全部だ!我々も他の国の人々同様、人間らしい暮らしをする権利がある!」と休戦ではなく停戦が必要だと話していた。

ラファのスーパー。陳列棚には食料品はほとんどない状態だった。(2023年11月)
ラファのスーパー。陳列棚には食料品はほとんどない状態だった。(2023年11月)

街のスーパーを見ても、棚には食べ物などの商品はほとんどなく、掃除用品のみが並ぶだけだ。イスラエル軍による激しい攻撃が一定期間止まったことは事実だが、ガザ地区の住民に人道支援の物資が十分に行き渡ることはなく、休止期間は終わりを迎えてしまうのである。

「命をなんだと思っているのか」

7日間の休戦期間を終え、イスラエル軍はガザ地区での地上作戦を再開した。休戦期間を延長するためには1日あたり10人の人質を解放することが必要としていたが、ハマスの提案は7人の人質と3人の人質の遺体ということだった。それをイスラエル政府は拒否した形だ。

イスラエルとハマスの戦闘が始まって約2カ月となる12月6日、ガザ地区南部から1.5キロほどしか離れていないニルオズという集落を訪れた。ガザ地区との境には網しかなく、ハマスに真っ先に襲われ、住民約100人が殺害もしくは人質として拘束されたという。

ニルオズにいた父親が人質として拘束されている女性(2023年12月)
ニルオズにいた父親が人質として拘束されている女性(2023年12月)

ニルオズに自宅があり、今も83歳の父親が拘束されているという女性は取材に対し「人質を戻して欲しいだけだ。なぜ60日も待たされるのか。なぜ戦闘を再開するのか。ハマスが7人を解放するとしたときになぜ応じなかったのか。命をなんだと思っているのか」と政府への不満を涙ながらに訴えた。

終わりの見えない戦闘…苦しむ一般市民

イスラエルとハマスとの戦闘は終わりが見えていない。またそれ以上に、ハマスをせん滅できたとしても、その後のガザ地区の在り方も見えていない。イスラエル、アメリカ、またパレスチナ自治政府の中では考え方に大きな隔たりがあるほか、ヨルダン川西岸にいるパレスチナ人はむしろハマスを支持しているとの調査結果もある。

空爆によって破壊されたガザ地区南部・ラファの建物(2023年12月)
空爆によって破壊されたガザ地区南部・ラファの建物(2023年12月)

また、ガザ地区の住民が生活を再建していくためには国際社会の支援なくしては考えられない。しかし、今回の一連の流れの中で、日本の支援物資の袋がハマスの手元にあったという事実もあり、その支援が武装勢力に渡ることなく行うことが確実にできるのかという課題もある。

イスラエルとハマスの戦いの先には未だ、一筋の光すら見えていない。
(FNNイスタンブール支局長 加藤崇)

加藤崇
加藤崇