トルコで消費量が多いオリーブ。オリーブオイルに加工する際の搾りかすや種は本来、廃棄されているが、女性研究者がプラスチックに加工する技術を開発した。冷蔵庫にも使われ、今後は日系企業との業務提携も視野に入れている。
トルコの朝食に必須のオリーブの実
パンやフルーツ、新鮮な野菜などヘルシーなトルコの朝食と並ぶ、山盛りのオリーブの実。
この記事の画像(9枚)トルコ人にとって、朝食にオリーブは欠かせないという。味はもちろん、健康にもいいということで好まれるようだ。
本来、捨てられてしまうはずのオリーブの「種」。
トルコで行われているキッチン用品のフェアで注目されていたのは、その種などから作られているタンブラーなどの製品だった。
トルコは世界第2位のオリーブ生産国
一面に広がるオリーブ畑が美しい国、トルコ。
世界第2のオリーブ生産国で生まれ、エコ素材として今注目を集めているのが「オリーブプラスチック」だ。
原材料はオリーブの種や、オリーブオイルを作り際の搾りかすなど廃棄される部分で、その量は、トルコだけで年間50万トン、世界では600万トンにも及ぶ。
そこに目をつけたのがトルコのスタートアップ「Biolive(バイオリーブ)」だ。
BioliveのユルマズCEOは「トルコでは、こうした廃棄物は通常、焼却処分されている。この製品最大の特徴は、完全な廃棄物から作られていることだ」と説明する。
オリーブプラの生産で二酸化炭素を削減
オリーブの種などの廃棄物は、焼却すれば石炭の6~7倍ものCO2を排出するという。
しかし植物性の特殊な液体を加えれば、約8時間で、価値ある「バイオプラスチック」に変化。
くしや歯ブラシといった生活必需品はもちろん、革の風合いのバッグにも加工が可能だ。
実際、記者がくしを持ってみると、通常のプラスチックよりも少し軽く感じ、匂いなどは全くなく、使い心地は変わらなかった。
生産コストは、サトウキビなどほかの植物由来のプラスチックに比べて3分の1程度。スーパーに並ぶ歯ブラシを見比べても他の製品と大差なく、経済的といえる。
洗濯機など大型家電にもオリーブプラを使用
2024年9月、新たに発表されたのが、「オリーブプラ」を活用した冷蔵庫や洗濯機などの大型家電。
耐久性を持たせるために、6割ほどを通常のプラスチック素材と合成しているが、オリーブプラを加えることで、二酸化炭素の排出量を約20%削減できたとしている。
汎用性も高く、使用後の再資源化も可能と、今後の普及が期待される「オリーブプラ」。現在の主な流通先は欧州だが、今後は日本への拡大も視野に入れているという。
BioliveのユルマズCEOは、「日本はSDGsや欧州のグリーンディールにも配慮していて、わが社にとって非常に大きな市場。日本はテクノロジー先進国なので家電分野など、多くの日系企業と業務提携したいと考えている」と展望を語る。
生産国トルコから世界へ。オリーブが結ぶ循環型社会の輪が広がりそうだ。
(イスタンブール支局長 加藤崇)